「資本主義の終焉」をむかえた世界で私たちは何を立ち上げるのか?

たまたま参加したセミナーで意外な発言に接した。表題の通り「資本主義の終焉」と演者は断言した。

榊原英資×水野和夫『資本主義の終焉、その先の世界』(2015年12月詩想社)

この言葉が、たとえば反体制側の運動家の口から発せられたのであれば、何も驚きに価しない。けれども、本発言は旧大蔵官僚で「ミスター円」の異名を取った榊原英資氏によるものだから驚いた。常々「末期資本主義」や「帝国主義」といった言葉を乱発している素人の私ではなく、体制のど真ん中で金融政策に関わっていた榊原氏の発言には、腰を抜かしそうになった。

役人時代も異色なキャラクターや発言で話題になることが少なくなかった榊原氏ではあるが、その日の発言は「資本主義の終焉」との言葉だけでなく、その根拠や論旨が私の持論と酷似(否、同じとすら言える)していたのだから、極端に表現すれば「驚愕」ですらあった。

◆500年位の歴史スパンで捉えると「一つの時代」は終わった

榊原氏曰く「先進国が高い成長率を目指すのは現実的ではないし、そんな時代は終わった。安倍さんは『成長戦略』なんてまだ言ってますけど無理です。歴史を500年位のスパンで捉えると一つの時代は終わったと考えられる。産業革命以降の経済成長時代は、少なくとも先進国の中では終わった。それが解っている欧州の国々はもう高成長を前提に考えてはいない。低成長の中でどのように豊かさを維持してゆくかを考えるべき時代です」

その通りだ。もっともこの発言の前には「憲法を改正して現存する自衛隊は軍隊なんだから、ちゃんと認めるべきだ」や「最終的には法人税を下げ、消費税を20%に上げるべきだ」といった、予想を外さない発言もあるにはあった。だが、そんなものは「資本主義の終焉」宣言の衝撃に比べれば聞き飽きた常套句であり、「ああ、またか」程度にしか耳に残っていない。

驚きは体制側の人間から、禁句とも言うべき「資本主義の終焉」が発語されたことだ。昨年にわかにピケティが流行ったが、表現に多少の差異はあれ、榊原氏もピケティも私も共有している概念があった。それが「資本主義の終焉」だ。

◆「資本主義終焉後の世界」を構想し、議論すべき時代

それではその後の世界はどうなるのか、どうなるのが望ましいのか、についての議論は非常に貧弱だ。榊原氏の指摘に的確な部分も見当たったが、新しい世界を規定する概念までには程遠い。無理もない。今日一部の左翼を除き、正面切って「資本主義の終焉」などと発言する人間はいないし、そのような命題の存在すらほとんど無視若しくは否定されているのだから。

目前の具体的諸課題への個別の議論も軽視は出来ないけれども「資本主義終焉後の世界」、つまり全く新しい枠組みの世界を構想し議論すべき時代なのではないだろうか。

マルクスは指針を描いたが、その限界が現実により示された。

片方で急速に戦争化する世界に「宿命的破滅」を感じる。未来などあるものか、とやけっぱちになりながらも「資本主義終焉後の世界」を考察することの価値は高い。日頃構想したこともない高い視点から未来を考える営為は刺激に満ちた知的行為だ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7
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日本共産党の学費値上げデマチラシが検察に刑事告発寸前!

この2月に大騒ぎとなった「学費の値上げデマ」について市民団体が検察に告発しそうな動きをキャッチした。東京地検特捜部にこの告発が届くにはまだ先のようだが、「参議院選挙」を睨んで告発合戦の火ぶたが切られたといってもいいだろう。この動きについては後日、詳細に伝える。

共産党の学費値上げ糾弾チラシについては、新聞でも大きく報じられた(産経新聞)が、参議院選挙を前にして、手練手管の勢力が暗躍しているようだ。

「そもそも、この日本共産党のデマのチラシは、『安倍政権が国立大学の学費を毎年値上げし、16年後に現在の年間53万円から93万円に値上げする』というもので、共産党としては、財務省の審議会が提示した、国立大学への運営費交付金の削減案に注目したものです。『仮に交付金を減らして、自己収入を増やす際、その増えた部分の全額を学費でまかなったらどうなるか』という試算を政府に出させて悪用しただけの話です。現実は、財務省審議会の提案には自民も公明も反対し、昨年11月の建議からは、学費値上げの数字は消えて、安倍政権としては例年とおり、交付金を削らないことを決議しています」(週刊誌記者)

つまり、学費の値上げ話などは、露程もないのだ。さすが、かつての石原都知事に「ハイエナ政党」と断罪された姑息な手腕やアジテーション癖はまだこの党には残っているようだ。

2月3日の衆議院予算委員会では、安倍首相がチラシを見て「まったくのデマ」「ただちに公党としては責任をもって訂正してほしい」と答弁。すると、チラシの「安倍政権が値上げ」が「安倍政権のもとで狙われる」と修正された。
修正前修正後

まさに、「ビフォーアフター」の世界だとあきれるばかり。国民が政治に不信感を持つ訳だ。国民の不安を煽って選挙へ誘導する共産党のやり口と、こんなものに振り回される馬鹿で無能な与党との競り合いは「目くそ鼻くそを嗤う」という程度のものだが、共産党は、参議院選挙では1人区はあきらめ、民主党+維新の党と連携して、与党に対抗しようという作戦のようだ。民主党と維新の党は合流して「民進党」となったが看板のすげ替えにすぎない。中身はふぬけそのものなのは時間がたつとともにわかるだろう。

『志位委員長は頭がやわらかい男です。自民を倒すためなら、柔軟に味方を作っていくのではないかな。まあ例のシールズを取り込んで票にしてしまっている時点で、彼らの手練手管は老獪だといえます』(同)

こうした動きを見ていると、共産党にはデマを平気でまく蠕動組織としての一面と、老獪な戦略家としての一面が同居している摩訶不思議な政党だ。まあ、若者が減少し、弱体化している共産党は、もはやなりふりかわっていないとも見れるが。
「そうじゃない。志位としては、忸怩たるものがあっても、民主党や維新の党と連帯しないと共産党の支持者があきれて離れていかざるを得ないと考えているのですよ」

さて、18歳と年齢が下がった魑魅魍魎、そして国民が「無関心」な争点なき参議院選挙がひたひたと近づいてくる。

(伊東北斗)

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「ナベツネ」を辞任に追い込んだ野球賭博〈闇〉のからくり《3》

「ナベツネ」こと渡辺恒雄=読売巨人球団最高顧問をも辞任に追い込んだ野球賭博──。その闇を探るべく作家・影野臣直氏が、かつて胴元をしていた男性のインタビューに成功した。タレントや有名人はなぜかくも野球賭博にはまるのか? その理由の一部始終を3回に分けて公開する。今回がその最終回。

── では、野球賭博へのヤクザの関与は?

堂本 野球賭博も博打ですから、必ずどこかの博徒が絡んでいることは確かでしょうね。まぁ、あくまでも想像ですが、関西は山口組で関東は住吉か稲川かな、という推測はできますがね。

── 噂では弘道会の名前があがっていて、巨人選手の事件が表に出たのは山口組の分裂の影響という説がでていますが、なぜなんでしょう?

堂本 ボクは、まったく関係ないと思います。だいたい、賭けたカネが払えなくて球場まで来たってことですが、行った方もバカだし、来られた方もバカですね。これは、客が野球賭博に関与していることに対して胴元のコンプライアンスが疑われる。

警察関係では名前が挙がったのは、巨人の1軍選手にコーチ、中日の有名選手やフロントの職員の関与。
中日=(イコール)名古屋=(イコール)弘道会、の式ができあがったのではないだろうか。そこから尾ひれがついて分裂の余波との話が推測される。
少々のカネを集金にキャンプにいくってのは、世間を騒がせるのを分かってやったのか。いまだ今回の事件は謎が多い。

── なぜ、巨人にいるようなスター選手がハマるんでしょうか。どうやって、巻き込んでいくんでしょう?

堂本 たぶん、他の博打が関係してると思いますよ。ボクなら麻雀とか、もっと一般的な博打から進展していったんじゃないかな、と予想します。ただ、巨人の選手だっていえば、知らなくても張らせますよ。

日本一の人気球団である、巨人の現役選手。その利用価値は莫大だという。
先発選手の近況や、監督やコーチの不仲説。
それを得れば、博打を優位に進めることができる、さまざまな情報まで入手できるのである。

堂本 野球賭博にハマるヤツって、間口の広い博打から間口の狭い賭博に入ってきますよね。たとえば、雀荘ではテレビで野球中継や競馬中継やってるじゃないですか。そんなところからはじまるんですよ。もしかしたら、ハメられている可能性も感じますよね。博打が好きなんですね、アイツらは……。

最近では、野球賭博に関与する客の年齢層が下がっているという。
客の中には学生もいるし、オレオレ詐欺で稼いだ若手の実業家モドキなども野球賭博の太い客なのだそうだ。

2020年、東京オリンピックで正式種目となる野球競技。
メジャーリーグの日本選手の流出や、WBCやプレミア12などの国際大会などの増加。
これからの野球賭博は、国際化していくのかも知れない。(了)

[文]影野臣直+[プロデュース]小林俊之

◎元胴元が語る──野球賭博〈闇〉のからくり《1》
◎元胴元が語る──野球賭博〈闇〉のからくり《2》
◎元胴元が語る──野球賭博〈闇〉のからくり《3》

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化。
《1》「ぼったくり店。はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ。復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

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「ナベツネ」を辞任に追い込んだ野球賭博〈闇〉のからくり《2》

「ナベツネ」こと渡辺恒雄=読売巨人球団最高顧問をも辞任に追い込んだ野球賭博──。その闇を探るべく作家・影野臣直氏が、かつて胴元をしていた男性のインタビューに成功した。タレントや有名人はなぜかくも野球賭博にはまるのか? その理由の一部始終を3回に分けて公開する。今回は第2回。

── ハンデは、いつ連絡してくるんですか?

堂本 試合当日の16時~17時くらいに、直接ハンデ師から電話がきて、ハンディを知らされます。だいたい、試合がはじまる2時間くらい前かな。それから顧客に連絡し、プレーボールの受けつけの締め切りまで待つわけですよ。

ハンデ師からの連絡がくると、胴元から顧客全員に連絡がいく。客はすぐスポーツ新聞等で情報を集め、試合開始直前ギリギリに勝ちチームを決める。野球賭博にハマっている連中は、このときが最高の楽しみなのだという。

── カネの流れは、どうなっているのですか?

堂本 野球賭博は、シーズン144試合あります。その全試合、開帳されています。だいたいの1週間の流れは、金土日の3連戦の分を翌週の月曜に集金する。火水木の3連戦では、金曜に集金です。勝った客に配当を渡すのは、当日ですね。もちろん、テラを1割引いてね。

── 集金方法は? また、そのとき、払わない人はいないのですか?

堂本 もちろん、自宅や会社までいって対面で手渡しです。口座はアシがつくから使えない。もし、現金がないっていったら、『つくらせるか、貸しつけるか』ですね。 

ここで、賭博の収入だけでなく、金融としてシノギも生じる。だから家も商売も、身柄のしっかりしている人にだけしか張らせないのだ。

── この稼業に入ったきっかけは?

堂本 もともと、16歳でヤクザの部屋住みになったのですが、賭場の見習いの一つとして野球賭博を始めたのは25歳から……おいしいシノギだと思ったから、1年くらいで独立しました。それから、3、4年はやってましたね。

もともと、才覚があったのだろう。堂本氏にはタニマチ(=スポンサー)衆がいたうえに、当時は暴排条例もなく景気も良かったうえに、ヤクザがメシを食うのが楽だった時代だった。堂本氏は巨万の富を築いた。

── そんなに儲かっていたのに、なぜやめてしまったのですか。

堂本 そりゃ、摘発されたからです。最後は、なんと高校野球でパクられてしまいました(笑)。

逮捕され、堂本氏は野球賭博から足を洗った。
堂本氏は実刑にいくことなく、執行猶予を科せられ社会復帰した。

── では、同じように逮捕された、ダルビッシュの弟も胴元だったのですか?

堂本 いや、胴元は人脈がないとできないですね。彼は『中継(ちゅうけい)』と呼ばれる、客をまとめて手数料を抜く業者だったと思いますよ。胴元と違い、簡単に開業できるのが特徴です。

中継も、やってることは胴元と同じである。ただ抜ける額が、胴元には遠く及ばない。

堂本 それでも、逮捕されたときは賭けさせた金額が問題になる。いくら儲かったかは、罪状に関係ないから、ダルビッシュの弟も胴元として賭博開帳図利で起訴されるでしょうね。ま、初犯だったら、執行猶予で出てきますね。

よく人数を集めまとめて買うグループがいるが、もし捕まったら胴元でなくてもグループの代表者が逮捕される。それが、今回のダルビッシュの弟の事件ではないかという。

── ただ、ダルビッシュの弟の場合、ハンデメールが出てましたが……

堂本 ハンディは関西と関東では違うんです。だからといって、ハンデ師がメールでハンディを報せるわけがない。証拠が残るから。

ハンデ師は口頭でしか、ハンディを知らせない。そこには博徒ならではの徹底した守秘義務が守られている。

── それでは、そんなハンデ師への報酬はどのくらいなのでしょう?

堂本 胴元の仲間内でも、ハンデ師がどこの誰か知っている人は少ない。ヤクザでも大きな組織の親分か、それに準ずるクラスの幹部連だけでしょう。それくらいトップシークレットですから、ハンデ師への報酬は胴元クラスではわからないでしょうね。

ハンデ師によって、売り上げが大幅に変動するという野球賭博業界。ハンデ師は、野球賭博をシノギとする組織の命運さえ握っているといっても過言ではない。(つづく)

[文]影野臣直+[プロデュース]小林俊之

◎元胴元が語る──野球賭博〈闇〉のからくり《1》
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抗うことなしに「花」など咲きはしない──5年目の福島と高浜「仮処分決定」

3・11から5年。正直あの災禍に見舞われながら、一体この島国の為政者は何を学んだのだろう、と無力感に打ちひしがれた5年間であった。なにが「花は咲く」だ。あんな空疎な歌詞とメロディーで被災者や原発事故の被害者の心が癒されるとでも皆さんは本気で思っているだろうか。私はあの歌は権力者による「震災」被害隠し以外の何物でもないように感じる。抗うことなしに「花」など咲きはしない。

高台への移住を前提とした東北の復興は予想を超える困難の前に、移住を諦め、他の地域への人口流出が進んでいる。津波被害地各地、とりわけ女川町ではその傾向が顕著である。

◆動かないはずのものが動き出した──高浜原発「仮処分決定」の福音

ああ、何もできずに、何も前に進まずに5年を迎えるのか、と明るい気分になれずに悶々としていたら、福音が飛び込んできた。3月9日大津地裁(山本善彦裁判長)は高浜原発3、4号機の運転停止を言い渡す仮処分の決定を言い渡した。稼働中原発の運転停止命令は史上初であるし、仮処分の中では「原子力規制委員会」が設けた「新規制基準」が合理的なものではないとする趣旨の言及もある。

福井地裁で同様の運転差し止め仮処分の判断を下した樋口裁判長の書いた差し止め理由は、我々を良い意味で大いに驚愕させてくれたが、大津地裁山本裁判長が指摘した、「新規制基準」への疑義、稼働中原発停止の判断、はこれまでの司法判断を大きく凌駕するものであり、極めて高い評価に値する。動かないはずのものが動き出した。

◆「諦めない」活動が地殻変動を起こす

私自身、現地に数回通い、目の前で(その時は知らされなかったけれども)事故が発生していた高浜原発(4号機)をこのまま運転し続ければ、高い確率で「破局的事故」が起こっていただろう。関西電力は懲りもせず、さらに古い1、2号機の40年超えの再稼働まで目論んでいるが、頼む。頼むから日本を終わらせないでくれ!

司法は所詮、国家の一機関だ。マスコミは所詮スポンサーの言いなりだ。でも意志を持った個人や集団は違う。「若狭の原発を考える会」(木原莊林会長)はこの2年間で70回以上高浜町へ関西から通って、地道なチラシ配りを中心とする様々な取り組みを行なってきた。京都から片道2時間弱を自らハンドルを握り(多くは70歳前後の方々)は、最初誰にも相手にされない中で、罵声を浴びせられながらも「アメーバデモ」と称した数人によるチラシ配布や、地元住民との対話を続けてきた。

開始から2年、高浜町では住民の反応は全く変わっている木原代表も「楽しくないとこういう運動は続きませんから」と笑顔で手ごたえを語る。

9日大津地裁の仮処分決定は、司法判断である。しかしそれを導く筋道を作ってきたのは、このような地道な活動を諦めずに続ける人たちの活動があったからではないだろうか。一見関係なさそうでその両者はどこかで確実に結びついているように感じられてならない。全国各地で様々な運動や原発立地で闘う人たち執念の賜物だ。

相次ぐ再稼働申請、原発輸出など愕然とするような事実の前にも、全く別な地殻変動は確実に起きている。私たちはまだ負けていない。

福島および周辺の被害者のみなさんに寄り添いながら、私たちは原発全機廃炉を勝ち取るまで、絶対に諦めない。ほらここに光明があるよと示してくれた大津地裁の判断とそれを導いた多くの方々の地道な活動に深い敬意の念を示したい。追悼と哀悼をささげるべき日に、私たちは同時に「脱原発闘争」を最後まで戦い抜く決意を新たにする。

私たちは負けはしない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

「ナベツネ」を辞任に追い込んだ野球賭博〈闇〉のからくり《1》

プロ野球界のみならず守旧メディアの要に長年にわたり居続けた「ナベツネ」こと渡辺恒雄=読売巨人球団最高顧問をも辞任に追い込んだ野球賭博──。その闇を探るべく作家・影野臣直氏が、かつて胴元をしていた男性のインタビューに成功した。タレントや有名人はなぜかくも野球賭博にはまるのか? その理由の一部始終を3回に分けて公開する。

プロ野球史上最大の汚点と揶揄される、昭和の『黒い霧』事件から46年。ペナントレースも終わり、CSファーストステージで賑わうプロ野球界に、突然の野球賭博問題が発覚し球界を震撼させた。しかも、その渦中の人物が、名門巨人軍の現役投手だったという。それに加え、メジャーリーガーのダルビッシュ有の弟までが野球賭博に関与した疑いで逮捕された。平成の『黒い霧』事件の勃発である。
だが、一般に競馬競輪は熟知していても、野球賭博をしる人は意外に少ない。いったい、野球賭博とはどのようなものなのか。
過去に胴元を務めていたという、元業界関係者に訊いてみた。

堂本勝和(どうもとかつとも)(仮名)52歳

16歳から関西の組織に稼業入りし、主に賭博を中心にシノギを行う。39歳で野球賭博で逮捕。出所後は堅気になり、現在は建築関係の会社を経営。

堂本 まぁ、野球賭博って、簡単にいえばプロ野球の対戦カードを、どちらのチームが勝つかを当てる博打ですね。丁半博打と同じで、引き分けはありません。

── だって、野球だったら引き分けもあるじゃないですか?

堂本  試合に引き分けはあっても、野球賭博に引き分けはありません。その時のチーム状況で、強い方から弱い方にハンディキャップを与えるんです。たとえば、巨人阪神戦に張るとしますよね。われわれの上にはハンデ師というのがいて、そこからハンディを報せてもらって始めて野球賭博が開帳されます。

ハンデ師はチーム事情を徹底的に調べ上げ、適切なハンディキャップを算出する。
チーム防御率や、チーム打率に打点。また先発選手の調子の好不調から、先発ピッチャーと相手打線の相性。選手の体調の良し悪しから、球場との相性までも加味するという。

堂本 現在のチーム事情で、ハンデ師が巨人から1、5を阪神に……とでたら、試合で巨人が2対1で勝ったとしても、賭博上では2対2・5で阪神の勝ちとなるわけです。逆に3対1で巨人が勝つと3対2・5で巨人の勝ちとなるわけです。

ハンデ師は、元プロ野球選手か野球関係者など、野球に精通した人だろうと噂されている。
また、ハンディキャップは多くても少なくてもいけない。野球賭博をおもしろくするのもツマらなくするのも、ハンデ師がつけるハンディのさじ加減一つで決まるのである。

── それで、試合にかける金額はどのぐらいになるのですか?

堂本 人によって違いますね。最低は1万円から、青天井(=上限なし)まで……でも、そこは賭けるお客さんの器量次第ですよ。

── 堂本さんの賭博で、一番大きく張られた試合はどのくらいですか。

堂本 1試合に200万円賭けた豪傑がいましたね。それに、ソープの経営者や自営業者などは1試合100万とか平気で張ってきますし、そういうダンべ(=旦那衆)が多いときは1試合合計で4500万円ぐらい張ってきたかな。

しかし、4500万円すべてが利益というわけではない。
野球賭博では、張ってきた金額をIN(イン)といい、支払うべき金額とOUT(アウト)と呼ぶ。野球賭博では、勝ったOUT側から10%のテラ銭(=場代)をとる。100万円勝って受けとるカネは90万円、負けて支払うカネは100万円。差額が胴元の利益である。
だから、この日の堂本氏は勝ち側に2250万円から1割の225万円を引いた金額2025万円を支払い、負け側から2250万円を集金し、225万円もの金額が残ったことになる。

── じゃあ、胴元は絶対に損をしないじゃないですか。

堂本 いや、そうでもないですよ。たとえば、負けてる人が取り返そうと思って賭け金が上がっていくと、ちょっとこれを張らせてやろうかな、とか慈悲の心を持つでしょ。でも、負け分の金額以上のカネを1試合だけ張られて、勝ったらやめてしまう。それじゃ、困るんですよ。最低、3試合は張ってもらわないと、こっちが一方的に負けてしまう。ウチも張らせてあげたんだから……。

勝ち負け2つの選択肢しかない野球賭博。負けた金額の倍の金額を張り続け、勝った時点でやめれば絶対に負けることはない。負けているだけに熱くなり、野球賭博の盲点を突いて張ってくる客もいる。

── タチの悪い客もいるわけですね。

堂本 だから野球賭博を開帳している人は、信頼関係がある人しか張らせませんよ。それに知らない人間に張らせると、負けがこむとチンコロ(=密告)するヤツもいますからね。だから、地元の社長や自営の人などの地位のある方が多い。あるいは、サラリーマンでも家などの資産を持ってる方。ヤクザ同士なら、代紋を保証にヤクザも客になるケースもあります。

賭博は、開帳した者も客となった者も罰せられる。

地元の社長や自営業者、資産家のサラリーマンにヤクザ。彼らにとって博打は、手慰(てなぐさ)みであり、密かな楽しみでもある。 賭場が摘発されると、一番困るのは客自身なのだ。

それだけに常連は、警察などにチンコロすることはない。

── そんな顧客を、一番多いときでどれくらい抱えていたのでしょう。

堂本 だいたい20人くらいかな。質の悪い客を多く持っていても仕方がない。どれくらい質のいい客を持っているかですよ。良質の客ばかりだと3日間の3連戦で、INが3000万ぐらいあったかな。

── すべて口頭でのやり取りですよね? 負けてても、オレは勝った方に張ったなどと居直られませんか。

堂本 だから、ミスがないように全部録音してありますよ。1日最高6試合開催される、野球賭博の事務所はあわただしい。だって、試合開始直前にハンデ師から、当日行われる全試合のハンディキャップが知らされるのですから。

聞き間違えたでは、すまされない博徒の世界。たった1つのミスが、信用を著しく傷つけることになる。信用がなくなれば、顧客は去っていく。賭博の世界は厳しい世界なのだ。(つづく)

[文]影野臣直+[プロデュース]小林俊之

◎元胴元が語る──野球賭博〈闇〉のからくり《1》
◎元胴元が語る──野球賭博〈闇〉のからくり《2》
◎元胴元が語る──野球賭博〈闇〉のからくり《3》

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長崎平戸「御部屋坂」で増え続けるネコたちと隠れキリシタン弾圧の歴史

長崎県平戸市大久保町の、崎方公園。この公園の中に、平戸港が見渡せる小高い山の中腹にあるフランシスコ・ザビエル記念碑がたたずむ。近くには「平戸最初の教会堂跡」と記された碑や、ザビエルが滞在した木村氏の居跡とされる碑がある。このフランシスコ・ザビエル記念碑へと登る途中にある通称「御部屋坂」の周辺に、昨年の夏ごろからネコがやたらと集まってくるようになった。

「日中というか夕方までは、100匹以上のネコがゴロゴロ寝ていたり、ネコどうしが遊んでいたりしているのですが。夜になると数十匹も集団になって、フランシスコ・ザビエル記念碑の方面に登っていく。いったい、なんのために集まって『行進』を始めるのかわかりません」(地元の飲食店スタッフ)

そう、このあたりは隠れキリシタンが弾圧された傷痕がそこかしこに残る。ザビエルがネコ好きだったという記録は発見されていない。いったい、このエリアとネコがどう因縁づけられるのか。これには、1614年に、徳川家康が発布した「キリスト教禁止令」による迫害が関連している。

1550年8月、宣教師のフランシスコ・ザビエル一行は肥前平戸に入り、宣教活動を行った。これによりキリシタンが平戸に広まった。

しかし、1614年の1月、徳川家康はキリシタンの禁令を発布、長さ行きからも宣教師がすべて追放された。平戸においてキリシタンを敵視していた松浦藩の平戸藩主、松浦鎮信(法印)は5月に亡くなるものの、跡継ぎの藩主、松浦隆信は幕命によって長崎の教会堂を焼却し、キリシタン信者を捕らえています。

「このとき、地元の人が言うには、このザビエル祈念碑がある付近の家屋には「信者の隠れ廃墟」がたくさん立っていた。隠れキリシタンは、ごく小さな集落単位で秘密組織を作ってひそかに祈祷文「オラショ」を唱えて祈りを続け、慈母観音像を聖母マリアに見立てたりしていたとされる。

「1635年2月、幕府のキリシタン弾圧が進む中、通称『平戸の大殉教』で27名が殉教するのですが、隠れキリシタンを弾圧から守った、平戸の強信者の家のひとつに、未亡人が捨てネコを数十匹も飼っている通称『ネコ屋敷』がありました。記録はもうないそうですが、言い伝えによるとこの未亡人は弾圧を受けて御部屋坂を登って崎方公園に向かう道を走って逃げる途中で、殴る蹴るの拷問を受けて、ついでにネコも焼き払われたそうです。そのときの因縁でネコが集まっているのかもしれません」(同)

1587年7月24日(天正15年6月19日)に発令された「バテレン追放令」では、神父たちは平戸に集まり、対策を練ったという。隠れキリシタンとネコの異常な増殖と、深夜にザビエル祈念碑に向かう「ネコの行進」には、キリシタン弾圧の歴史が凝縮されている。

平戸観光協会のスタッフは言う。
「確かにネコはあのあたり、増えすぎて問題になっています。地元の人には『ネコを捨てないでください』と呼びかけているので、平戸市の人が捨てているとは考えにくい。夜の行進について、私は見たことはありません」

さて、この「ネコが行進する御部屋坂」が伝える教訓とはなんだろうか。

(伊東北斗)

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日本「餌場」市場で始まったユダヤマネーとチャイナマネーの覇権戦争

昨年11月、日本から「シティバンク銀行」が撤退した。日本では数少ない外資系都市銀行で、総資産2兆2000億ドル、アメリカ、ニューヨークに本店を置く世界最大の一般銀行である。銀行として初めて当座預金口座を開設し、複利預金、無担保ローンを商品化、クレジットカード「マスターカード」を提供し、いまではダイナースクラブもシティグループの傘下にある。ATMの24時間開放、支店数を絞って人件費を削り、穴埋めとしてATMを他行と供用するなど、現在では普通に行われている銀行の運営をはじめた先進的な銀行である。

シティバンクの日本上陸は1902(明治35)年、横浜に外貨取引銀行として支店を開設したのが最初で、実に百年の歴史がある。それが消えた。業務縮小や、旧顧客向けの窓口を残すこともない。顧客は日本の既存銀行、SMBCに託す形で跡形もない。

撤退の理由として「日本の市場には将来性がない」といささか腹立たしいと共に、捨て台詞とも取れる言葉を残している。

撤退に至るまで、確かにシティバンクはいくつもの「事件」を起こしている。2004年には、マネーロンダリングの幇助を指摘され、虎ノ門支店の認可が取り消されている。2009年、には大口顧客に対する利益誘導等があったとして続けて業務停止命令を受け、2011年に受けた「多数の法令違反」があるとして、業務停止命令が出された。何度も縮小や、関連グループとの合併、子会社化を行ったが、ついに2015年撤退ときた。

きわめて不自然な消え方だといえる。日本の証券会社や銀行でも一部顧客への利益誘導やマネーロンダリングによる不正はあったとしても、それが理由で廃業に追い込まれはしない。

ここで巷間、多くささやかれるのが「ユダヤ・イルミナティー」の策謀である。
ユダヤ・イルミナティ説の多くは眉に唾をするようなものから、真実味に富んだものまで挙げられているが、ここで注目したいのが「日本という地域性」だ。

古来、キリスト教が優勢になって以来ユダヤ人は被差別民であった。国土もなく、居住地、職業選択の自由もない。「ゲットー」と呼ばれる壁の中に暮らし、賤業に就いていた。この時代、アメリカはまだ存在せず、アラブ地域はオスマントルコ帝国の支配地である。ユダヤ人には、まだ、力もなく、影響力はヨーロッパに限られていた。ユダヤ人同士の繋がりがあるとしてもまだ細々としていた。

一方、貨幣経済が発達してくると卑しい職業とされていた「金貸し」が次第に力を得てくる。つまり銀行である。一部の富裕なユダヤ人が貴族に協力し「宮廷ユダヤ人」として力を得るようになる。

ユダヤ金融が一挙に勢力を拡大するのは1812年、ドイツ、フランクフルトのマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドがワーテルローの戦いでイギリスの国債が高騰したのを得てからである。その後、マイヤーの息子たちはパリ、ロンドン、ナポリ、ウィーンへと散らばり、金融業を展開する。ユダヤ系資本は国籍にとらわれない特性から瞬く間にヨーロッパを席巻する。

とはいうものの、やはり歴史の古いヨーロッパはユダヤ人に対する弾圧は強い。対して、移民を受け入れてきたアメリカでは比較的、差別は少ない。ユダヤ・イルミナティーはヨーロッパを拠点に次第にアメリカでも広がってくる。もちろん、アメリカでもユダヤ差別は皆無ではない。アメリカの大統領はほとんどがプロテスタントであり、カソリックは少数に留まる。ユダヤ教徒に関しては皆無である。この状況の中で拡大するシティが経営陣からユダヤを排除する可能性は高い。

他方、今回取り上げた「シティバンク」は「シティバンク・オブ・ニューヨーク」として1812年、はからずもロスチャイルド銀行が設立したのと同年開業し、1895年、アメリカ最大の規模に発展する。この段階でユダヤ・イルミナティーが介入する余地はない。

ロスチャイルドの発展からアメリカでも後発のユダヤ資本が食い込んで、企業体を資金面から浸蝕していく。企業体、ロックフェラーなどはそれ自体がユダヤ系であるとされる。

もちろん、アメリカが食い荒らされている間も、入ってこられない地域がある。アラブ、中国、日本である。日本は徳川時代「鎖国」を行っていた。中国(清国)も、1717年から1842年まで「海禁」と呼んで事実上の鎖国状態にあった。

しかし、日本は太平洋戦争の敗戦で「染まりきったアメリカの資金」が大量に導入されてくる。

10年ほど前、ある大手出版社の雑誌が廃刊になった。昨今、雑誌の廃刊など珍しくないが、退職した当時の編集者、A氏とのコンタクトに成功した。
「突如上の方から『その本は出すな』号令がかかった。記事の差し替えや、書き換えは珍しくないのでその類だろうと高をくくっていた。内容はユダヤ資本に関する批判でどこにでもあるような内容です。『あれよあれよ』と言う間に雑誌は休刊。編集部は解体。異動されるか、退職した者もいます。しばらくしてわかったのが、銀行から圧力がかかっていたんですよ。日本の銀行ですが、ユダヤ資本が入っていて、記事のうちどれかが本筋をついていたのでしょう」

日本の金融市場を狙うのはユダヤ資本ばかりではない。近年になって膨大な資金源が登場した。いわゆる「チャイナ・マネー」だ。

2010年「日本の総生産が中国に抜かれた」と報道された。その後も中国は毎年10%近い成長を続け、昨年度でGDPは日本の二倍を突破した。決済通貨としても「USドル」「ユーロ」「イギリスポンド」「中国元」「日本円」の並びになり、昨年「元」の流通量が「円」を越えた。

中国にとって日本は豊かな「餌場」なのだ。資金のやり取りも為替を使用するより、銀行を介した方が早い。となると、日本に居座る外資系銀行「シティ」は邪魔物となった。

日本ではあまり普及していないが、マスターカードが運営するCirrus(シーラス)という銀行決済システムがある。世界93ヶ国、100万か所のATMで利用できる。クレジットカードの多くは海外でも利用できように、クレジット払いのシステムを銀行決済に適用したのがCirrus。日本国内で預金した「円」を、海外に出向いて同じ銀行カードを使って外貨を引き出すことができる。ビジネスには圧倒的に有利な海外決済、送金方法だろう。

Cirrusを真っ先に日本に導入したのが、シティバンクであり、実に30年前である。他に日本では、シティと最初に提携した「ゆうちょ」、2007年から提携を開始した「セブン銀行」、シティから業務委託をうけた「SMBC」しかない。

一方、日本にも次々と中国系の資本が入ってきている。中国国営銀行である「中国銀行」、中国系クレジットカード「ユニオンペイ(中国銀聯)」などである。中国銀行は日本での支店数は少なく、「ユニオンペイ」こそ、日本とアメリカで提携を増やしているが、世界的に優勢なマスター系列のCirrusとも、ビザ系列のPLUSとも連携していない。一方、中国は銀聯に続いて、Alipay、Chinapay、快銭の導入を開始している。

Cirrusの大元であるシティを日本から追い出すのは、中国にとって欠かせない戦略だ。

中国の動きはシティの不祥事にも影を落としている。

「実はシティ撤退のきっかけとなったマネーロンダリング事件、これは日本の暴力団が覚せい剤で得た利益をシティバンク経由で香港で現金化したという内容です。マネーロンダリングには色々な方法があるが、多く使われる方法が投資を装うやり方だろうね」(経済ジャーナリスト)

不正に得た現金を損益が出ると判っていても第三者に貸し付ける。数年経って減額した資金をひきだす。引き出したカネは株なり、国債なりの売却資金として「洗われたカネ」になる。ところがシティの場合は虎ノ門の支店で預金した資金を単純に香港で下ろしただけだ。資金洗浄だとしたらあまりに稚拙に過ぎる。

状況証拠でしかないが、中国当局にはめられた、という見方もできる。

シティはユダヤ・イルミナティーに疎まれ、中国との交流もない。旧勢力と、新勢力の戦いによって日本という戦場からたたき出されたのである。

確かに日本の一般銀行にはイルミナティーの息がかかっているだろう。だが、例外も多い。農家の資金運用を一手に引き受けるJA。民営化された「ゆうちょ」。日本にはまだまだ手つかずの膨大な資金が眠っている。

これらを虎視眈々と狙っているのが、ユダヤと中国。

いま、日本という豊穣な市場をめぐって、新旧の大勢力が火花を散らしている。

(伊東北斗)

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反原連はなぜ原発避難や被曝問題を争点にせずに「再稼働反対」だけ唱えるのか?

「安倍政権NO!0214大行進in渋谷、無事終了しました。約一万人の参加者でした。皆さまお疲れ様でした!安倍政権妥当の為に引き続き、力を合わせて頑張りましょう!」

これは2月14日に反原連Twitterに記されたメッセージだ。誤字脱字が日ごろから多い私は、このメッセージの中の「安倍政権妥当」の揚げ足とりなどするつもりはない。とんでもない変換ミスや打ち間違えを頻繁に繰り返す自分への反省から、「この部分は訂正されてはいかがですか」とご指摘申し上げておくだけだ。

◆原発避難や被曝問題を排除して再稼働反対だけを唱える違和感

しかしながら以下のインタビューで語られた反原連の「女帝」氏のコメントとの整合性はどのように理解すればよいのであろうか。

「参加者のなかには福島からの避難者のこととか、子供たちの被曝のこととか、自分たちのイシューをかぶせようとする人もいます。私も被曝の問題は重大だと思ってますけど、まず大飯の再稼働を止めることで、大きな風穴を開けたい。『野田政権打倒』を掲げる人たちもいるけど、私たちはそれが目的ではない。代替案として誰々を首相にしろと、そこまでいえるのなら具体性が出てくるけど、具体的なイシューがないと焦点がぼやけてきて、運動に酔うだけの人が増える気がする。だって内閣を打倒して運動が収束して、いざ他の内閣になったら、もっと原発が悪いことになる可能性だってあるじゃないですか」

このコメントは週刊ポスト2012年8月31日号に掲載されている上杉隆氏による女帝氏へのインタビューにおける発言である。社会問題を自分なりに考察した経験のある人間ではない、との吐露のようなこのコメントは前述の「安倍政権妥当(正しくは打倒)」とどのように整合性を保つのであろうか。女帝氏はここで「野田政権打倒」を掲げることが「私たちはそれが目的ではない」と断言し、その後は詳述するのも憚られるような理屈にもならない思い込みだけを語っている。「野田政権打倒」は「目的ではなく」、「安倍政権妥当(打倒)」なら整合性があるのか。

ここに私は痛烈な違和感を禁じ得なかった。「シングルイシュー」を看板に活動し始めたこの団体は女帝氏が述べている通り「福島からの避難者のこととか、子供たちの被曝のこととか、自分たちのイシューをかぶせようとする人もいます」と切り捨てていた。

私自身、2007年頃から反原発運動を始めたばかりの新参者だし、いまデモを主催する反原発連合に入っている13のグループのうち、11団体は3・11以降にデモを始めた人たちです。みな一般の感覚に近いので、とにかく普通の人たちが来やすい雰囲気を心がけました」(赤文字は田所)。

この時点で既に私は一見反対運動を纏った、「翼賛運動」あるいは「ガス抜き」が堂々と登場したことに大変不快だった。「一般の感覚」や「普通の人たち」の定義は何だ。自分を「新参者」と認識しておきながら、何十年も脱原発運動をして来た先輩の運動は「一般の感覚」や「普通の人たち」に受け入れられないとでも言わんばかりである。傲慢とはこのような態度を示す言葉だろう。

◆自由な公道で警察と協力して他者を排除する「市民運動」の矛盾

さらに「排除の論理」を確信していることは以下の発言から明らかである。

「(略)3・11以前も反原発の集会などをすると、革マルや中核っていうのが来るわけですよ。私はその頃からとにかくアンチセクトでやっているんですが、(参加しないでくれという)クレームをつけると面倒くさいので、来られても放置みたいな状況でした。
いま、私たちの反原発連合では、組織や反原発以外ののぼり旗を立てない、勧誘のビラを配らないといった(自主的な)ルールを設けています。それは反セクト的な意味だけじゃなくて、一般の人が入りやすいという理由もあるんですけど、それで裾野が広がった。だんだんシングルイシュー的な部分が理解されて、運動が成熟してきたわけですが、やはり最後はこの問題なんですよ。
 結局、デモが巨大化してから、(セクト系が)またドーッと来るようになった。でも、これに始末をつけなければ、本当の意味での市民運動にならないっていう思いが私の中で強い(略)」(赤文字は田所)。

これは完全な勘違いと思い上がりである。女帝氏たちは当初日の丸を掲げて抗議運動を行っていた。私は中継越しにその姿を見て「なんなんだ、こいつら」と強烈に不快感を覚えた。片方で「組織や反原発以外ののぼり旗を立てない」ように要請しておきながら、主催者の横には「日の丸」がある大矛盾。その方が「一般の人」が入りやすいと決めつける傲慢。そして極めつけは「(セクト系が)またドーッと来るようになった。でも、これに始末をつけなければ、本当の意味での市民運動にならないっていう思いが私の中で強い」という公安警察顔負けの弾圧思想である(赤文字は田所)。

誤解なきように付言しておくが、私はどのような政党や政治団体であれ集会に参加するのは自由であると考える。個人的に政党や党派への感度の差はもちろんある。自民党や創価学会の旗を持った参加者が居れば議論をしたいと感じるだろうし、嫌いな党派には近づくこともないだろう。しかし場所は路上集会である。誰が来ようと拒む筋合いはない(公安警察が市民を装い侵入していた場合は別だが)。

そして極めつけは、
「野田首相と面会するときもこの運動を一緒に作ってきた警備の警察官に同行してもらいたいってコアメンバーと話しているほどなんです。彼らが人事異動するのが一番怖いですね(笑い)」

(笑い)じゃないだろう。ここまで警察権力との合作、癒着を誇示している市民運動は世界にも例を見ない恥ずべき現象だ。社会を構成する力学や政治、国家や暴力に対するごく基本的な知識すら欠いていることに唖然としたものだ。

「皇室の存在を日本が世界に誇るものと」語る上杉隆氏を私は信用していない。自由報道協会は一定の成果を収めているが上杉信の「タヌキ」振りには要注意だとまだ気が付かない読者には警告しておく。その上杉氏が女帝氏に問う。

「これまでのデモは、『権力側は敵だ』という前提から入っていたけど、今回は政治とも話し合いの場を持とうとしている」と。女帝氏が答える。

「デモとか抗議って、それ自体は国策を変えるわけではない。やっぱりエネルギー政策の転換は国会で政策を練らないといけないことだと考えています。数で押すことによってようやく議員さんが反応を示すところまで来たな、と」

私の感想はもう述べない。述べる気にもならない。「安倍政権妥当(打倒)」に異議はないが。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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気鋭の憲法学者、木村草太氏の白熱講義!──第5回「前田日明ゼミin西宮」

2月28日(日)、前田日明ゼミ in 西宮(第5回)がゲストに木村草太首都大学東京准教授を迎え、「憲法と日米安全保障の重大問題~メディアが伝えない重大問題」をテーマにノボテル甲子園で約100名参加の中、行われた。

木村草太=首都大学東京准教授を迎えての第5回前田日明ゼミin西宮(2016年2月28日開催)

春めいた晴天の中、定刻通りに14:00松岡社長の挨拶から会は始まった。事前に配布されていたタイムスケジュールでは木村氏、前田氏それぞれ30分ずつ講演の後休憩をはさんで両氏の対談、と告知されていたが木村氏が聴衆へ配布する極めて詳細なレジュメをご用意頂いたなどの事情から冒頭1時間程度木村氏が講演を行った後に、前田氏との討論に入るという形式で会は進行した。

◆一体あの「安保法案」は何であったのか?

安保法制参議院特別委員会の参考人として同法案に「反対」の意見表明をおこなった木村氏は明快ながら実に多くの要素が盛り込まれた6頁にわたるレジュメにそって、一体あの「安保法案」は何であったのか、また国会内で交わされた議論の中で注意を払うべき個所はどこにあるか、さらにはほとんど報道されることがない(したがって国民にほとんど知られていない)「付帯決議」の存在などを明らかにした。

憲法学専門の木村氏にとっては極めて初歩的な講義だったのであろうが、大学の講義のような雰囲気で進行される立て板に水のお話についていくのには、かなり頭が錆びついている私にとっては結構な集中力を必要とした。

「安保法制」の全体像を理解するため「武力行使と治安活動」の定義から始まり、国際法(国連憲章)は原則として「武力不行使原則」(2条4項)を定めていること。その例外として「集団安全保障措置」(憲章42条)が国連安保理決議を根拠に認められてはいるものの、国連安保理決議には内容が不明確な場合が多いという問題を孕むこと。「個別的自衛権」、「集団的自衛権の行使」要件などが詳述された。

この辺りの知識を昨年の議論以前に広く国民が知っていれば国会や特別委員会で首相や、防衛大臣、外務大臣から答弁された内容の多くに基礎的な誤りが多く含まれていたことに、もっと敏感な反応があったのではないかと考えさせられる内容だった。

◆安保法制は「違憲」もしくは「不要」

写真右から前田日明氏、木村草太氏、松岡利康鹿砦社代表

続いて日本国憲法が「武力行使」をどのように定めているか、そしてそれにはどのような議論があるかが紹介された。「武力行使」といえば「9条」がすぐ頭に浮かぶが国民の幸福追求権を定めた「13条」にも「武力行使」(とりわけ個別的自由権の議論)は深くかかわりがあると紹介された。

さらにそもそも憲法の原則は「組織法的な権限規定」であることが説明され、政府に負託された権限は「行政権」(国内統治作用のうち立法・司法を控除したものと「外交権」(外国の主権を尊重して関係を取り結ぶ権限)に限られることが明らかにされた。

その後、憲法から見た安保法制への数点の指摘の後、結論として「安保法制」はそもそもそれ以前イラク戦争に日本が派遣した行為に対する「反省」、「検証」が全くなされていないとの言及があった。

イラク戦争への自衛隊派遣については名古屋高裁が2009年4月17日に「航空自衛隊の活動の一部は違憲である」との判決がある。外務省は「イラクの大量破壊兵器が確認できなかったとの事実については、我が国としても厳粛に受け止める必要がある」とこっそりHPには掲載しているもののそれは4頁に過ぎない短い文章であることが木村氏により批判された。
「普通虐めで子供が自殺したら4頁の報告書で済ませるという事はないと思いますが、戦争に加担しておいて僅か4頁の検証は軽すぎるのではないか」。
まさにその通りだと首肯した。

そして安保法制の「法的」課題や、現実に「集団的自衛権」が違憲ではないかどうかを木村氏は解析し「違憲」もしくは「不要」と結論付けた。

次いで安保法制は成立してしまったものの国会答弁では横畑法制局長官や中谷防衛大臣、そして安倍首相本人から、かなり「武力行使」を困難にする言質が取れていること、及び元気・改革・次世代の三党が付帯決議と閣議決定を求めるよう与党に要請し、それが実現している(このことが殆ど報道されていないが大きな意味を持つ)ことが語られ講演は終了した。

前田日明氏と木村草太氏の白熱討論

◆前田日明氏と木村草太氏の白熱討論

休憩をはさんで前田氏との議論に移った。前田氏は終戦時以来のサンフランシスコ講和条約の不可思議さ、国連における旧枢軸国に対する「敵国条項」が未だに完全に撤廃されていない状況などから「改憲」などは無理であり、隠された問題の本質は他にあるとの説を展開し、それに関連して日本と同様敗戦国であったドイツでは憲法がどのようになっているのか、国際社会でドイツはどのように扱われているのかを木村氏に問うた。

木村氏は日・独の憲法(ドイツでは「基本法」と呼ばれた)の成り立ちの違いや政治制度の違いのポイントを挙げて解説し、日本とは相当な歴史的違いがあることが明らかにした。

対談の最後には司会松岡社長の指名で、この日聴衆として参加していた西宮ゼミ第一回のゲストでもあった鈴木邦男さんが感想を述べた。
「昔右翼をやっていた時は押し付けられた憲法を変えてしまえばそれですべてが解決すると思っていたが、最近の動きを見ると押し付けられたものであれ何であれ、戦争をしない憲法で闘うという木村さんの姿勢が大変印象的だった。憲法を変える必要はないでしょう」と語った。

本来は会場から集められた質問に木村氏、前田氏が回答する予定だったが、熱のこもった討論に予定時刻はあっという間に過ぎてしまい前田日明ゼミ第5回は終了した。

◆最終的には国民投票で可決されるのは難しい

第1回前田ゼミのゲストだった鈴木邦男氏も参加。「戦争をしない憲法で闘うという木村さんの姿勢が大変印象的だった」と語る

引き続き講師のお二人を含め希望者が懇親会に移った。どうでもよいことだが、木村草太氏は健啖家だった。多数の人から語りかけられ、それに答えながらも絶妙なタイミングで料理の並ぶカウンターへ何度も足を運びたくさん召し上がっていた。

歓談に忙しい合間を縫って私は1点だけ質問した。
「ここ数年の流れを見ると『改憲』が現実味を帯びてきたように思う。マスコミの加担は益々露骨で安倍政権の支持率が現在も5割近い。かつては考えられない現象が起こっている(森政権退陣前の支持率は3%を割っていた)。自民党も選挙で『改憲』を明言するようだが『改憲』の現実的可能性についいてはどうお考えになるか」。

これに対しての答えは「最終的には国民投票で可決されるのは難しいと考えるので『改憲』はないのではないかと考える」というお答えだった。

これまで様々なホストとゲストの組み合わせで5年に渡り行われて来た「西宮ゼミ」の中でもアカデミックな色合いがことさら強く、多くを学ぶことが出来た1日となった。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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