3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す

4年が過ぎた。2011年3月11日東北を中心に東日本を襲った大震災から。腰を抜かしそうな大津波、首都圏でも長時間にわたる激しい揺れ、交通・通信の途絶と寸断。そして人類史上初めての原発4基爆発。

今私たちがああだのこうだの、まだこの島国に住みながら、くだらない発語が出来ているのは、奇跡かもしれない。いや奇跡だと言い切っていいだろう。

◆「放射能という名の化け物」との格闘は半永久的に続くという現実

昨年12月に福島第一原発4号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しが終了した。

これを「技術の勝利」と呼んだ人がいた。

傲慢に過ぎる。

勿論、技術者や現場での作業に関わった方の「命がけ」の賜物には違いない。彼らの勇気と優秀さには尊敬の念を払う。

だが、それは燃料棒撤去作業を断念させる4号機の建屋崩壊に繋がる、余震が「偶然」起こらなかったことの僥倖に起因することを忘れてはいけない。人間の技術依存への慢心は常に不幸の誘引剤だ。これからまだ3号機、2号機、1号機の燃料取り出しと「廃炉」作業が待ち受ける。政府が言うには「30年程」で片が付くらしい。

馬鹿を言うな。人類的な時間尺で言えばこの「放射能という名の化け物」との格闘は半永久的に避けられない。

◆「復興」は全く進まず、「絆」という言葉の意味が剥奪された

復興?

全く進んではいない。「全く」だ。阪神大震災と比較すればその違いはことさらに際立つ。

勘違いしないで欲しい。私は被災された方々の不幸をことさら取り上げ、それを材料に騒ぎ立てようとしているのではない。被災された方々が納得のいく形で生活再建をなされることだけが「復興」の名に値すると考える。

「絆」という言葉が意味を剥奪された。

「不条理に耐え忍ぶため事実に目をつぶり、ひたすら思考せず支配者へ従うこと」へと意味の蹂躙・変換が行われた。J・オーウェルが『1984』や『動物農場』で予見した「意味の収奪」(Newspeak=新語法) とはこのように2011年以降の日本で現実化している。

屍。累々とした屍。200いや300を超える屍。数時間前まで昨日と変わらぬ日常を過ごしていた人々が津波に飲み込まれ、海の上をたゆたう姿となっとなったその姿を見て、事実のみを本社に伝えた記者が直後号泣し、座り込み立ち上がることが出来ずその後の取材活動が出来なかったことを私は知っている。

勘違いが過ぎたのだ。思い上がりが過ぎたのだ。自然の力に人間はかくも無力だ。

悲しみも、無力感も、後悔も、怒りも、そして疲労の余りに至る諦念。全て「自然に対抗できうる」などとの身の丈を過ぎた傲慢が導いた結果なのだ。

◆人災を「風評被害」と言い換える人々が、原発を輸出し、戦争に邁進する

寒い。しびれるほど寒い。春近いと言ったって東北の冬は地面の底から寒さが突き上げてくる。

どうかマスメディアよ、これ以上無意味な言葉で必死に生きる人間を軽んずる「侮辱」を止めてはくれまいか。

どうかマスメディアよ、自然に対して人間は無力ではあるけども、人間の行為は人間が制御できることを想起してはくれまいか。

どうかマスメディアよ、避けられぬ自然災害にあれこれ意味づけををするのではなく、避けようがいくらでもある「人間によって引き起こされる災害」の意味こそを問うてはくれまいか。

津波、地震によって亡くなった方々の鎮魂は、亡き人を思い忍び前を向く遺族の方々の日常で十分だ。薄っぺらい言葉やイベントなど一時凌ぎの慰めにしかなりはしない。

これ以上苦しめるな!

これ以上蹂躙するな!

被災地の人々、とりわけ子供を放射能で病ませるな、殺すな!

私はあなたに「ねぇ、だから一緒に行動しませんか」などと言うつもりは全くない。

私一人で怒る。

自然災害と人災は違う。

人災を「風評被害」と言い換えて原発の再稼働・輸出、あろうことか「戦争」に邁進する人間どもを満身の怒りで指弾する。殺意に近い感情は消えない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎「福島の叫び」を要とした百家争鳴を!『NO NUKES Voice』第3号本日発売!
◎恣意的に「危機」を煽る日本政府のご都合主義は在特会とよく似ている
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恣意的に「危機」を煽る日本政府のご都合主義は在特会とよく似ている

「テロの脅威」だそうだ。とにかく「テロとの戦い」だそうだ。そして「イスラム国」だそうだ。「何が何でもイスラム国を潰す」のだそうだ。なぜならイスラム国は残虐で過激主義だから。

私には訳が分からない。イスラム国の前は「アルカイダ」だった。その前は「タリバン」だった。小さいところでは「イスラム同胞団」や他にも数知れずイスラム系の組織はある。それらは全て健在だ。アフガニスタンの実効支配面積はタリバンが優勢を保っている。でもそのことは全然問題にされない。何故だ。

◆忘れさせるために、その場その場で政府は「脅威の対象」を変えてくる

それにもまして、直ぐにでも攻めてくるような朝鮮民主主義人民共和国(以下朝鮮)の脅威が全く語られなくなったが、どうしたことだろう。中国との間だって尖閣諸島あたりで毎日緊張が高まっていたはずじゃなか。全くと言っていいほど政治の場の論戦や報道には登場しなくなっているけど、状況が変わったのだろうか。古いことろでは北方領土問題はどうなったのだろう。ソ連時代はあれほどキャーキャー叫びまくっていた北方領土問題は解決したのか。していないじゃないか。ロシアのチェチェンはどうした? インドネシアのアチェは? ビルマのカレンやカチンは?

どれ一つ大きな変化はないはずなのに何故かこの国の政府やマスコミの関心は「イスラム国」に偏りっぱなしだ。おかしくないか? ああそういうことだったのか。たぶん今日も朝鮮中央放送は例によって金正恩を讃える放送をしているだろう。ロシアではモスクワ中央放送がチェチェンでのタタール人を不安視する放送を流しているだろう。ウクライナ情勢について米国批判が語られているだろう。

◆危機の在りようは変わらず、政府の思惑次第で「危機」が変わる

かように世界のあり様は何一つ変わってはいないのだ。変わっていっているのはこの島国を支配する政府連中の思惑だけだ。「危機」は専ら政府の恣意と目的によって創造される。それをマスコミが下支えする。疑いを知らぬ市民は「そんなに世界は動揺しているのか」と不安になるが、そうではない。不安は創り出されたものなのだ。例えば「朝鮮の新たな軍事計画が明らかになりました」とアナウンサーは冒頭紹介した後に朝鮮中央放送の日常的な放送を流せば、それだけで「また北朝鮮はけしからんことをやっている」と世論形成のお手伝いが出来る。でもそれは日常的な放送内容に過ぎないのだ。

出来もしない「邦人人質救出」のための法整備に的外れな時間を割いてみたり、周辺事態法を「恒久法」に作り替える根拠をあれこれ並べているけれども、そんなものが必要な根拠はもとより何処にもないということだ。軍事国家を目指す安倍を筆頭とした連中は旬の野菜を選ぶように、その時一番国民に不安を煽るような材料を提示する。手下のマスコミも進んで材料探しに日々奔走するのだ。こいつら一体何が目的なんだろう。「陰謀論者」ならば「アメリカが背後で操っていて日本が軍事化を進めて自滅するのを待っている」と言うかもしれない。

私は「イスラム国」なんかどーってことはないと思う。関係ない。日本国内でテロが起きる可能性がある? それはあるだろう。「イスラム国」だけでなく他の勢力からも日本は恨みを買っているから仕方がない。因果応報と言うやつだ。こちらが何もしていないのに一方的に殺されちゃあたまらないけど、戦後の歴史の中だけだって日本はえげつない経済侵略を山ほど行ってきている。このことを日本人は決定的に忘却している。

米国に至っては防御の方法は無いだろう。侵略の歴史を歩み続けてきたこの国は「世襲的罪」ともいうべき逃れることのできない宿命を自ら重ねてきたのだから。個人的に防衛策を考えるのであれば、NYやワシントンD.Cなど大都市に住んだり近寄ったりしないことくらいだろうか。国の背負った罪を個人で贖わされるのは確かに割には合わないのだから。

◆在特会と日本政府に共通する「行動する保守」のご都合主義

それよりも「在特会」元気がないじゃないか? 「行動する保守」(在特会の正式名称は「在日特権を許さない市民の会」である)としては「イスラム国」問題をどう考えるのか、見解を明かすべきじゃないのか? 保守にとっては深刻な問題じゃないのか? それともおたくらは半径1000キロ範囲の世界の事にしか手や思考が回らないのかい。

まあ、仕方なかろう。日本政府のご都合主義だって在特会と大して変りはしない。

ありもしない危機を煽るために、ある時は朝鮮を利用し、ある時は中国、中東で火が付けば嬉々として飛びつく。軽薄な10代の若者がアイドルタレントのケツを追っかけているのと変わらないじゃないか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎橋下の手下=中原徹大阪府教育長のパワハラ騒動から関西ファシズムを撃て!
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炸裂!『紙の爆弾』最新号!

機動戦士ガンダム──人はなぜ「シャア」という生き方に惹かれるのか?

機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅰ 青い瞳のキャスバル」を映画館で見た。ガンダムシリーズを語るのに欠かせない重要なキャラクターである「シャア・アズナブル」(本名はキャスバル・レム・ダイクン)の生い立ちを描いた同作品について、語り部が少ない。とりわけ、ふだんはしたり顔でいわゆる「ガンダム」について語る芸人、つまり「ガンダム芸人たち」もしくは「にわかガンダム文化人」も圧倒的に少ない。

それもそのはずで、シャアを語るには、シャアについて描かれた小説、アニメ、そして「ガンダム」の生みの親である富野由悠季 (原案は矢立肇)の世界観を深いところまで掘り下げて理解しなくてはいけない。くわえて、シャアが背負っている、あるいは主張している「人類の革新について、人類の価値について、あるいは未来図について」深く考察しなくては、やけどをするようなキャラクターなのだ。かろうじて語っている芸人たちも、誰とは言わないがシャアの世界観についてわかっていない。シャアを論じるということは、しつこいようだが、己の哲学が問われるのだ。

人は、「ガンダム」について語りたがる。戦争について、人類の未来について、あるいは愛について、平和について語る。これは、「宇宙戦艦ヤマト」や「ドラえもん」にもなかったアニメの現象だ。したがって、この映画にも見た人は100通り解釈があると思う。

◆人間は人間を粛正できるか? ──シャア VS アムロの命題

「機動戦士ガンダム」の骨格をなしている世界観はこうだ。

地球の人口が増えすぎて、なおかつ汚染された。だから一部の人たちは、宇宙へと移民せざると得なくなった。スペースコロニーで暮らすこの移民を「スペースノイド」と呼ぶ。この、地球から追い出されたはずの「スペースノイド」たちは、しだいに地球圏からの支配を嫌い、自治区になる道を選択し、地球圏と戦争に突入する。

「腐った地球圏の人類を根絶やしにする」との目的に立つシャアは、人類の革新ともいうべき「ニュータイプ」(認識力と知覚力に優れたもの)であると自身を自覚した。同じく「ニュータイプ」である地球連邦軍のアムロ・レイは、「人間が人間を粛正できない」として、ことごとくシャアに敵対する。これが「機動戦士ガンダム」ファーストの物語の骨格だ。

「スペースノイド」の独立を訴える為政者、シャアの父が、ザビ家の陰謀によって暗殺されて、ジオン公国ができあがる。父の復讐に燃えるシャアは仮面をかぶり、本名を隠してザビ家に復讐していくのだ。「機動戦士ガンダム」を見た者は、なぜシャアがあれほどまでに、ストイックに自分しか信じぬ乾いた男になっていったのかわからなかっただろう。だが、ようやくこの映画を観て、シャアが幼少期に陰謀により翻弄されて、人のやさしさに対して懐疑的になっていったのかが納得できるだろう。

シャアを理解するのには、膨大な資料の読み込みが必要だが、やはり漫画を読むのが早い。ビギナーには『ガンダムエース』に連載された北爪宏幸の漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』をオススメする。だがアニメ作品ではないためサンライズにおける公式設定ではない。

さて、この映画は1時間を少しオーバーするほどの短い尺だが、冒頭の戦闘シーンは迫力満点だ。監督が、人物を描いた安彦良和(漫画も描いている)なので、当然、人物描写は細かい。幼いシャアが気高い復讐心を保つことができのはなぜかファンならずとも興味があるだろう。若いドズル・ザビやランバ・ラルなどもファンを喜ばせるだろう。

◆「ガンダム」を見た時からアニメを卒業できなくなった

この映画はガンダムの35周年企画だそうだが、僕自身は、この作品(機動戦士ガンダムのファースト)を見たときからアニメを卒業できなくなった。

なにしろ、美しいメカニックデザイン(デザイナーは大河原邦男)だけでなく、そこかしこに哲学や人類の欲求が業深く描かれているのだから。

僕自身は、シャアの声を演じている池田秀一にインタビューしたことがある。
「シャアのように男らしく生きてみたい」という点で僕と池田さんの意見は一致した。そして、シャアには独特の言い回しがあり、有名な台詞として「若さゆえの過ちか。認めたくないものだな」というのがあるが、「認めなくないもんだな」ではなくやはりかたくなに「認めたくないものだな」と語尾で言い切る気高さがあるという。

もともと、手塚治虫の弟子であった富野監督は、その世界観はものすごく奥深い。細かい台詞も後々、伏線となってくるから見逃せない。ガンダムの新シリーズとして、今は『ガンダム Gのレコンギスタ』を手がけている。これは、富野由悠季監督が手掛ける、『ガンダム』シリーズの最新作で人気を集めている。本作では、『機動戦士ガンダム』で描かれた宇宙世紀(U.C.)のつぎの世紀にあたる“リギルド・センチュリー”が舞台となる。宇宙エレベーターを守る組織“キャピタルガード”のパイロット候補生、ベルリ・ゼナムの冒険が描かれていくものだ。

これこそ「新世紀の哲学」が問われる作品だが、この作品について語れる「自称ガンダム芸人」「自称ガンダム好き文化人」を見ないのは、ついに馬脚を現したと見ていいのだろうか。それともガンダムを「卒業」したのだろうか。

(ハイセーヤスダ)

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やっぱりカギは「原発」だった──安倍首相中東訪問の真相

 

粗製濫造で編集劣化──「女性向け官能小説」電子書籍化事業がこけた理由

もはや実売部数で『ハリー・ポッター』や『ダ・ヴィンチ・コード』を超えた史上最速のベストセラー小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(ハヤカワ文庫刊)の映画が日本でも公開され、スマッシュヒットとなっている。ちまたの映画館は「官能的世界を味わいたい」男女であふれている。この「グレート・コンテンツ」である『フィフティー』に意外な「被害者」がいるという。

◆『エロければよし』で「ドル箱」狙いの果てに負債を抱える出版社

「E・L・ジェームズが書いたこの作品は、大学教授と若い女が一風変わった恋愛とセックスをくり広げる、R18指定の映画となりました。この『フィフティー』は、原作本が世界で8000万部以上も売り上げている『モンスター・コンテンツ』です。実は、この小説がリリースされて日本でもじわじわ売れ出し時期、こぞって出版エージェンシーや出版社、編集プロダクションらが『とにかく女性官能家を探せ』と目が血走るがごとくコンテンツをかき集めて、こぞって電子書籍を立ち上げたのです。ちょうど、『女性向け官能小説』が注目を集めていたころで、新潮社が「女による女のためのR-18文学賞」で注目作家を生んでいたり、(ただし後に方向転換して官能小説ではなく女性向けの一般小説へとリニューアル)、松文館の女性向け官能漫画がブレイクしたりと、『女性向け官能コンテンツ』がドル箱と化した時期で、仮に高校生であっても、文章がめちゃくちゃでも『エロければよし』として「女性向け官能小説」の電子書籍を立ち上げ、すぐにあきやすい日本の読者の関心が『彼氏を作るゲーム』に移行すると、女性向け官能小説はうまくいかずに今、コンテンツビジネスを始めた多くの会社が負債を生んでいるケースが目立ちます」(出版エージェンシー社員)

一時期、判を押したように「第2の『フィフティー』を目指せ」と女性向け官能小説家をかき集めて大金を原稿につぎこんだところ、今になって大損している会社が多いという。

女性向け官能小説コンテンツに1000万円以上つぎこんだ編集プロダクションの幹部は言う。

「今から思えば、女性向け官能小説なら、なんでもいいってものじゃない。『フィフティー』は、ミステリー作品としても、文学としても一級であり、原作に忠実な映画は今もなお観客を集めています。 日本でもアメリカでも観客の特徴としては、『本で読んだが、映画でも見てみたい』という感想が多いことです」(映画ライター)

映画スタジオの推計に基づく2月20日─22日の北米映画興行収入ランキングは、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」が2320万ドル(約27億6000万円)で2週連続首位を飾った。日本の興業統計は出ていないが、観客の出足は好調のようだ。

「出版社に乗せられて、官能小説を書いた女流作家や、そうした作家を紹介したコーディネーターらのうち『失敗組』は、苦々しく見ているでしょうね」(出版関係者)

まさに官能小説ブームの被害も「フィフティ・シェイズ」(50通り)のようだ。

◆問題は電子書籍編集のクオリティライン

おそらく紙の本の10分の1、もしくはそれ以下の予算で作れるので、猫もしゃくしも電子書籍化しようとするので「電子書籍は、クオリティラインがかなり下がっている」と僕は見ている。一度だけ電子書籍を書いたが、うるさく編集者が赤字を入れてくるかと思いきや、それもなく、ほぼ書いたままの状態で販売された。

僕についてくれたベテランの編集者は長いつきあいだったが、「初稿を出さないのですか?」と聞くと、「おいおい、これは電子書籍ですよ」と言い返してきた。

「電子書籍ですよ、とはどういう意味ですか」と問い返すと「そこまで経費をかけらないという意味だよ」という冷めた答えがきた。その声には「当たり前だろう」というトーンが含まれている。

紙の本を作るときには「ここがわからないから書き直せ」「構成を変えろ」「取材が甘い」と厳しい癖に、電子書籍となるとこうも甘くなるのはなぜか。古いつきあいのビジネス書ライターに聞くと「しかたないですよ、電子書籍は、別に小学生でも理論的には出せますから、市場は粗製濫造という印象があります。そこまでパワーをかけてられない」と言ってのける。このライターとて紙の本となると、執拗に赤字を入れるくせに、電子書籍は、ほぼ書いたまま世の中に出すから嘆かわしい。

僕はこれまで、一度だけ電子書籍である中堅作家の小説を買ったが、その改行はきわめて機械的で、内容と関係なく、7行ごとに改行してあった。よく作家が文句を言わないなあ、と驚いた。これは、「編集」と文化の否定であり、冒涜だ。「人の考えはあとで変わる」ということを前提にすれば、今の考えで言えば、電子書籍など僕は糞くらえだ。こんなものが市場でまわっているうちは、おそらく出版水準は永遠に上がらないであろう。(伊東北斗)

◎《誤報ハンター01》芸能リポーターらが外しまくる「福山雅治」の結婚報道

◎小向美奈子逮捕は警察の協力要求を蹴った意趣返し?「後ろ盾」とも決別か?

◎秋吉久美子長男不審死の水面下で蠢く「タレント整形カルテ」流出騒動の闇

 

毎月7日『紙の爆弾』炸裂発売!

輸入できても国産化はアメリカに阻止される日本の「無人戦闘機」導入計画

国はそれぞれ独自の事情を抱えており、国情に見合った軍備を整えている。たとえば、陸のないスイスに海軍は不要だ。北朝鮮の南下を恐れる韓国は陸軍を重視する。

日本は海から来る敵と、物資流入を確保するため「シーレーン防衛」を最大目的としている。仮想敵がシーレーンを寸断しようとした場合の最も有効な兵器は潜水艦である。艦上自衛隊の装備は潜水艦排除を重視している。

そのため対潜哨戒機は重要だ。水中の潜水艦を発見し、攻撃する事に特化した偵察機で、鉄で作られた潜水艦を探す磁気探査装置や、音響で位置を特定するソノブイを装備している。ソノブイは高性能のソナーを積んだ浮きで空中から海に投下して使い捨てにする。

以前、対潜哨戒機としてアメリカ製「P3C」を使用していたが、同機の旧式化にともない日本は「川崎P1対潜哨戒機」を独自開発した。一方アメリカでも旧式化は免れず、「ボーイングP8ポセイドン」を開発した。ただしポセイドンは従来型と違い複数のトリトンを空中で指揮運用する前提で設計されている。トリトンの武装は明確にされていないが、最低でも爆雷、対潜魚雷、対艦ミサイルのうえに在来型が搭載する程度の武装は装備して、トリトンだけでも一定の対潜攻撃能力を持つと考えられる。

日本はポセイドンを買う予定はない。なにしろ、「P1」の倍以上する高価な機体である。しかし、補助的にトリトンを運用するのは有効だろう。日本も無人機の研究はしているが、十分ではない。アメリカはここに商機を見つけたのだ。

一方、無人武装機と考えた場合、「その次」に目をやる必要がある。いまや、アメリカ空軍の攻撃機は無人化され、メーカーでもプレデターをジェット化した海軍型を提案している。

◆アメリカが阻止する日本の国産戦闘機開発

となると、いよいよ無人戦闘機である。現在、アメリカの最新鋭戦闘機は「F35」であり十数年の内に西側の戦闘機は「F35」が主流となるだろう。一方、「F35」は有人であるためどうしても飛行限界が存在する。地上の十分の一以下の気圧、氷点下50℃の低温から人間を守らなければならない。

アメリカが開発中なのが「無人攻撃機X47ペガサス」である。速力はマッハ1以下と戦闘機としては遅いが、それでもプレデターの三倍以上。ステルス性は優れ、航続時間に至っては10時間を超える。空対空ミサイルをもち戦闘機としても使用できる。陸軍と海軍の共同プロジェクトであるので空母上の運用が前提で、昨年、完全自律での離着艦の実験が成功した。

日本の技術レベルはまだ無人機を買う状態であるが、陸自は無人偵察ヘリを運用している。空自も開発中の「F3戦闘機」の無人化を計画している。F3が完成したらF35は一気に陳腐化してしまう。そうなる前にアメリカは日本の無人機市場の発展を押さえる、あるいはまたも国産戦闘機開発の阻止を狙っているのである。

「無人攻撃機X47ペガサス」写真はOVAL OFFICE(http://ovaloffice.jp/)より
「無人攻撃機X47ペガサス」写真はOVAL OFFICE(http://ovaloffice.jp/)より

▼青山智樹(作家、軍事評論家)1960年生まれ。作家、軍事評論家。著書「原潜伊六〇二浮上せり」「ストライクファイター」等多数。航空機自家用単発免許、銃砲刀剣類所持許可、保有。HP=小説家:青山智樹の仕事部屋

7日には気をつけろ!──炸裂!『紙の爆弾』!

東電はKDDI、規制委員会は日立が請け負う原発関連コールセンターの無責任

いったい事故の真相はどうなっているのだろうと気がかりで東電に電話をかけてみる。ネット上で東電案内窓口と示されている案内一般のフリーダイアルに電話を掛けると「申し訳ございません」、「この度は大変ご迷惑をおかけしました」と言葉と態度は平身低頭だが、肝心の内容には全く回答してくれないオペレーターが応対に出てくる。

これは2011年事故直後からしばらく続いた東電の「電話対応」体制だ。当時この電話対応を請け負っていたは「TEPCOコールアドバンス」でこの会社は名前が示す通り東電の子会社だ。マスコミや記者を相手にした「記者会見」でもまともな発表を行わない東電が個々の電話問い合わせに真っ当な回答をする道理はないのだが、遠隔地に住む人間としては毎日東電記者会見に通うわけにもいかないから時々、東電に電話をかけて情報収集の真似事と、対応がどう変化してゆくかを追っていた。

◆「正社員は誰も責任を取らず傷つかない」仕組みとしての東電コールセンター

ある時期から東電HP上では一般問い合わせのフリーダイアルがなくなり、賠償対象者のみにフリーダイアルが公開されている。試しにこの番号へかけて事故の内容などを質問すると別の電話番号を案内される。その番号は050からはじまる「ナビダイアル」と呼ばれる番号で、電話をかけた方が通話料金を負担するようになる。

まあ、こちらは質問をしたいので、番号が無料であろが、有料であろうが文句を言う筋合いはないのだが、問題はそこで出てくる人間の応対だ。前述の通り東電は当初(事故前は不明)「TEPCOコールアドバンス」から派遣された電話応対部隊を使っていたのだが、理由は分からないもののある時期にオペレーターの総入れ替えを行う。「TEPCOコールアドバンス」は撤退し、代わって「KDDIエボルバーコールアドバンス」社が電話応対業務にあたるようになる。「エボルバーコールアドバンス」とは何とも強い怪獣のような名前だが、業務自体が変わったわけではないのでこちらが電話をかけた際の応対にさしたる変化は見られない。

この体制を敢えて短い言葉で表現するとすれば「正社員は誰も責任を取らず傷つかない制度」と言えよう。

私を含め東電に電話を書ける人の中には質問や、怒りが煮えたぎっている人が多かったに違いない。それを受け止めるのは正社員ではなく子会社もしくは、別会社で専ら電話受け付けのみを担当する人だ。

その人々には何の権限がないことは言うまでもなく、また「貴重なご意見として承り、必ず上司に伝えておきます」と決して実現することのない慣用句を口にするが、あの電話は直接、東電社員や幹部が時には体験してみるべきだ。そうしない限りいつまでたっても東電正社員の傲慢さと責任感のなさが改めれれることはないだろう。

◆日立システムズが原子力安全規制委員会のコールセンター業務を請け負う

電話対応で、これまた東電以上にえげつないのが「原子力安全規制委員会」だ。「原子力に関するお問い合わせはこちら 03-5114-2190」とHPに電話番号が載っている。こちらは官庁なのでフリーダイアルでないのは当たり前だが、ここへ電話をかけても「絶対」と言ってよいほどに公務員へつないでくれることはない。ここもコールセンターなのだ。「あなたは公務員のですか?」との質問に「こちらはコールセンターです」と答えをはぐらかす回答をするので、こちら意地になり同じ質問を5分ほど続けたことがある。

意固地な女性のオペレータはこれでもか、これでもかと私が質問を投げかけても「こちらはコールセンターです」の一点張りで機械のように回答を続けた。「あなたの所属する会社はどこですか」との質問へも「私はコールセンターの人間です」としか答えなかった。「ややこしい質問へはすべて『私はコールセンターの人間です』と回答しなさい」とのマニュアルがあったのだろう。

その応対が数か月前から変わった。現在「原子力安全規制委員会」コールセンター業務を請け負っているのは「株式会社日立システムズ」だ。こちらは日立の子会社と言うには規模が大きく、資本金が190億円もある大会社だ。その「日立システムズ」から派遣された6、7人が「規制委員会」コールセンターの電話受付業務にあたっている。「どこの会社か」と聞けば正直に答えるし、以前よりも多少人間らしい対応にはなっている。

しかし、原子力安全規制委員会と日立である。

余りにも怪しい組み合わせではないか。オペレーター氏に聞くと「契約は入札で行われた」という。原子力安全規制委員会にアクセスする方法がこちない以上、オペレーター氏の答えを信用するほかない。

日立は福島第一原発原子炉の設計にかかわったていた。原発を売って儲け、爆発させてもまだ儲ける。

公平な入札で「規制委員会」の仕事を日立が落札したとすれば、両者の因縁は断ち切りがたく深いと言わねばならない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」
◎日本の「新幹線」輸出で最初から破綻が運命づけられていた台湾高速鉄道
◎渡辺昇一の「朝日憎し」提訴原告数が「在特会」構成員数とほぼ一致

フクシマの真実を礎に百家争鳴を!『NO NUKES Voice』第3号!

 

《屁世滑稽新聞20》アベッチサンの鬼退治……の巻

屁世滑稽新聞(屁世27年3月5日)
屁世滑稽新聞(屁世27年3月5日)

アベッチサンの鬼退治……の巻

犬腰犬介アナ 「こんばんワ! イヌエッチケー“ニュースセンター9”。キャスターの犬腰犬介(いぬこし・けんすけ)です。」
犬飢ゆうひアナ 「同じくキャスターの犬飢ゆうひ(いぬうえ・ゆうひ)です。」
犬腰犬介アナ 「まずお約束の、いつものシュプレヒコールから始めましょう。……アベッチサン!万歳(マンセー)!」
犬飢ゆうひアナ 「アベッチサン!マンセー!」


犬腰犬介アナ 「最初のニュースです。……偉大なるイヌエッチケー会長さまであられる揉威斬人(もみい・かっと)将軍さまのご命令で、この番組では毎週『勝利の記録』コーナーを放送しております。」
犬飢ゆうひアナ 「『勝利の記録』は、前の週に放送された大本営の戦果発表や現地での実況録音などをまとめて、毎週月曜日のこの番組内で放送されており、国民戦意を高揚に貢献しております。」
犬腰犬介アナ 「本日の『勝利の記録』は、あの憎むべき鬼畜米英の首魁であるエゲレス王族の、ウィリアム王子を日本に呼びつけて、思いっきり放射能に汚染させ、さらに子供たちの“鬼畜一投一殺”ボール投げの標的にしたという、帝国臣民にとってはまことに痛快な快挙のご報告であります。」
犬飢ゆうひアナ 「これほどの快挙を実行しえたのは、まさに大将軍アベッチさまの威徳でありますワネ。」
犬腰犬介アナ 「ふたたび大将軍アベッチさまを讃えて万歳三唱いたしましょう!」
犬飢ゆうひアナ 「よっしゃ! アベッチサン!マンセー! マンセー! マンセー!」


犬腰犬介アナ 「では、きょうの『勝利の記録』です。」
犬飢ゆうひアナ 「ちょっとその前に……」
犬腰犬介アナ 「なんですか? 台本にないですけど?」
犬飢ゆうひアナ 「今回もあんたの手が邪魔ですけど……」
犬腰犬介アナ 「ケンチャナヨ~っ! 将軍さまからの御指示でないから今回も無視ね。……さて『勝利の記録』に行きましょう。八百田嘘記(やおた・うそき)記者に伝えていただきます。八百田さんどうぞ!」

★          ★          ★

八百田記者 「ハイ!八百田でんがな! ハイハイハイ! ちょうど……あっ! ちょうど今、今週の『勝利の記録』の“完パケ”が入りましたで~! ほな行こか~!」
犬腰犬介アナ 「……えっ? 完ハゲがどうしたって? ……えっ、ちがうの? ……えっ、なんだおい! 今までパッケージ作ってたのかよ、ホントにイヌエッイケーエンタプライズは能なしぞろいだな~おい! 定年退職したジジババばかり飼ってる利権企業だから、うちら神南本店の足ばかり引っぱりやがって!」
ディレクターの怒声カットせずに入る 「イヌスケこの馬鹿ヤロー! マイク入ってんだよ馬鹿! 会社の悪口いうな馬鹿!」
犬腰犬介アナ 「あっ! ……では今週の『勝利の記録』、ごらん下さい。(涙声)」

★          ★          ★

糸居九郎ナレーター 「ゴーゴーゴー、糸居九郎! 満州の新京(シンキン)・ハルビン股にかけ、京都放送、それでまたニッポン放送と、あっちこっちで苦労を積んできたニッポン初の本格DJ・糸居九郎がお送りする、ほとんどライブの戦争宣伝番組、『勝利の記録』っ! いってみよう! ゴーゴーゴー! ゴーズオン! (BGMは軍艦マーチ) ……さて今回はわれらが大将軍さま、アベッチサンが、ブリテン王子のウィリアムズを、われらが絶対防衛圏である本土に誘い込み、ボッコボコに叩きのめしたという痛快な戦いの報告であります! その報告に入るまえに、帝國(ていこく)臣民のリスナー諸君に一曲きいて頂こう! 鬼畜米英は、かように堕落した音曲(おんぎょく)に酔い痴れているから、わが帝國との戦争で負けるのである! その曲とは、ビートルズの『エイトデイズ・ア・ウィーク』、邦訳すれば“月月火水木金金”という英国の鬼畜どもの勤労歌なんだから、日英かくも真剣さが違うのかとビックリであります!」

英國の「ゴキブリ連中」などと自称する「The Beatles」なる不良どもが
連中の言葉で『月月火水木金金』を唄うと、かくもふざけた作品となる。
これは最早クラシツクのやうな洗練された音楽とは到底言へない。
かういふことだから英國は今回の世界大戦で大日本帝国に負ける運命にあるのだ。

糸居九郎ナレーター 「さて本題に戻りましょう。このたび、わが國(くに)と交戦中の“連合国”の一端をなす大英帝国の、なんとウィリアム王子がじきじきに、わが帝國を訪問したいと言ってきたのであります。ウィリアム王子は王立英國軍の兵士に志願した男であります。かの國ではこんなふうに貴族が兵隊に志願するのを“ノブレス・オブリージュ”と言うそうで、大昔に野蛮な戦いで勝ってそれで貴族になれたのだから、戦争がおきたら貴族の息子が兵役に就くのは当然だとかいう、なんともトチ狂った発想であります。そんなことしたら、せっかく築いた巨万の富を継いでくれる跡継ぎが戦死して居なくなってしまうのに、毛唐はそんなことすら思い至らないのであります。その点、わがニッポン帝国はエラい! 貴族皇族の皆さまもたしかに兵役にはお就きになるが、それは名目だけのもので、危険な前線には決して出ていかない。前線は、百姓とか、都会の魔窟で低賃金労働に甘んじている賃労働家庭の若者とか、世間じゃ使い物にならない大学生の青臭い若者とか、そういう連中に戦わせてきた。それがニッポン帝国の英知でありまして、この点は明治維新の時からカネ儲けの仕方を学んできたアメリカ合衆国の支配層の生活信条を、しっかりと踏襲しておるのであります。
さてここで、帝国臣民のリスナー諸君に一曲きいて頂きましょう! 鬼畜米英はかように堕落した音曲に酔い痴れているから、わが帝国との戦争で負けるのである! その曲とは、ランナウェイズの『チェリーボム』、邦訳すれば“同期の桜”という米国の鬼畜どもの同窓歌なのであるから、日米かくも真剣さが違うのかと驚嘆せざるを得ないのであります!」

米國の「脱走者ども」などと自称する「The Runaways」なる不良女子どもが
連中の言葉でいう『同期の桜』を唄うと、かくもふざけた作品となる。
これは最早クラシツクのやうな洗練された音楽とは到底言へない。
そもそも新興国のアメリカ合衆國にはクラシツクすら存在せぬのである。
かういふことだから米國は今回の世界大戦で大日本帝国に負ける運命にあるのだ。

糸居九郎ナレーター 「さて本題に戻りましょう。イギリス政府からウィリアム王子の訪日希望の連絡をうけた我らがアベッチサン政府は、アベッチサン大将軍じきじきにウィリアム王子と会見し、その場で『もし福島訪問を望むのなら、現地でピカを食え! その気がないのなら偽善の見世物などまっぴらだから日本に来なくてヨロシイ! イエスか? それともノーか?』と厳しい態度で腑抜けた王子に決断を迫ったのであります。 この真剣勝負のような会見は、まさに今からちょうど73年まえ、真珠湾奇襲の成功から3ヶ月たった昭和17年、すなわち1942年の2月15日に、帝国陸軍の山下奉文(ともゆき)大将が、シンガポール攻略に成功して宿敵連合軍の英國軍司令官・アーサー・パーシバル中将と会見を行ない、『イエスかノーか』と降伏を迫った逸話を彷彿(ほうふつ)とさせるのであります。」

日本を訪れたウヰリアム王子の一行に対して、
我らがアベツチサン大将軍は「福島に行くならピカを食え!
イエスかノオか!」と迫り、ちやうど今から七三年前の戦時下、
山下パアシバル会談で見せた日本の破竹の強さを、いま再び
英國に示したのであります。

糸居九郎ナレーター 「事前の会見でウィリアム王子にピカを食うことを確約させたアベッチサン大将軍さまは、その後、東京から福島までウィリアム王子の訪日団を徒歩で行進させたのであります。ウィリアム王子もこの試練によく耐えた! 敵ながらあっぱれであります。ここでまた一曲聴いていただきましょう、今度はトルコの軍楽隊の行進曲であります。イギリス王子も、楽器のひとつでも持参しておれば、悲惨な行進をせずに済んだでありましょうに……。こういうところに、おのおのの文明が育んできた文化の奥行きや深さの違いが現れるのであります。じゃあ曲いってみよう! ゴーゴーゴー! ゴーズオン!」


英国皇族の御一行も、このトルコの軍楽隊のやうに何か楽器のひとつでも
持っておれば、福島までの惨めな旅程を歩まずに済んだであろう。

アベツチサン大将軍さまの命令一下、徒歩で福島に向かう
英國ウヰリアム王子とその部下たち。王子らが履く粗悪な
英国製短靴はすぐに壊れて使い物にならなくなつたが、
「セカセカ歩け!」の叱咤を受けてなんとか福島に辿り着いた
英國皇族だつたのであります。

糸居九郎ナレーター 「さて、福島に到着したウィリアム王子ら御一行は、例によって幼い子供たちが遊んでいる場所を慰問したのであります。マスコミ報道に乗っけて庶民の安心やら賛同やらをとりつける“戦略的メディアイベント”の実施においては、子供とか動物のような“なごみキャラクター”を用いた見世物が絶対的に有効であり、必要なのであります。なにしろこれは、ナチスドイツがユダヤ人強制収容所を正当化するために利用した宣伝手法ですからねぇ。……そんなわけでアベッチサン大将軍さまとウィリアム王子は広告代理店の定石を踏まえて、チビッコたちが遊んでいるスポットを訪問したのでありますが、ここでハプニングがありました。……なんと、チビッコたちは、子供らに愛想よく接近したウィリアム王子を警戒して、その場にあったボールを投げつけたのであります。節分からほぼ一か月たった後のことではあったけど、福島の賢明なチビッコたちは、いみじくも鬼畜の親玉に、ボールを投げつけて撃退の意思を示したのであります。さすが日本の子供たち! あっぱれであります! しかもこの子供たちは、敵国イギリスの王子に、金魚の糞のようにくっついてヘラヘラとお愛想わらいをしていたアベッチサン大将軍さまにも、抗議のボールを投げつけたのでした。……独裁者の本性を、その場で直感的に見抜いてボールを投げつけて撃退した子供たちの感性の鋭さ! これこそが日本の宝であります。
……ここでまた一曲、聞いてもらいましょう! 大英帝国に乗っ取られて尻の毛まで抜かれてきたけれど、独立して独自の文化を育んでいるカリブ海の島国・ジャマイカのポップスター、ボブ・マーリーの大ヒット曲『アイ・ショット・ザ・シェリフ』です。直訳すると『オレが撃ったのは警官だよ』ってことです。……これは、ニッポンでいえば岡っ引きのような下っ端の警官を正当防衛で撃ち殺してしまったけれど『警察署長を射殺した』などと大げさにデッチ上げられて重罪にされた男が、我が身にふりかかった冤罪を訴えた歌であります。……でもまあ、お役人だというだけで無茶苦茶に権力を乱用する奴らには、鉛のボールでも撃ち込んでやったほうが世のためになるというのは、世界普遍の真理であり、小学校に上がるか上がらないかの幼児でさえ知っている自然の法理なのであります。……これを教えてくれたウィリアム王子の訪日は、まことに有益だったと言えましょう。……じゃあ曲いってみよう! ゴーゴーゴー! ゴーズオン!」

大英帝国の植民地だったジャマイカの、大衆歌謡の王子であった
ボブ・マーリーの『アイ・ショット・ザ・シェリフ』。自分を殺そうとした
警察の下っ端をやむなく成敗したけど、エライ人には手を出してないぞ、
と冤罪を主張する正義の歌であります。

第二次大戦時に獨逸のヒトラア閣下が宣伝相ゲツベルスに
作らせた宣伝映画のように、今回の英國皇族の福島訪問でも
我らがアベツチサン大将軍は幼気な子供たちが愉しく遊ぶ様子を
ウヰリアム王子らに見せつけたのであります。子供たちは
「鬼畜米英」の実物を目の前にして、手にした軟球を「鬼畜」
に投げつけて愛国心旺盛な闘志を自ら示したのであります。
更に子供の天才的嗅覚は邪悪な偽善者をも見事に嗅ぎつけて
ボオルを投げて排撃したのであります。

糸居九郎ナレーター 「アベッチサン大将軍さまは、ウィリアム王子が福島県訪問を終えた直後に、記者たちの前でこう語りました――『殿下の福島訪問は東北の被災者に勇気を与えていただいた。福島のおいしい食材を堪能(たんのう)していただきたい。風評被害を払拭(ふっしょく)する上で大きな力になる』。……これで明らかなように、アベッチサン大将軍さまは福島県の食材の放射能汚染という、もはや隠しようのない現実に、『風評被害』という奇妙な呼び名をつけて、それを払い拭(ぬぐ)うための道具として、英國の王子を利用したのでした。自国の恥ずべき現実をごまかすための“煙幕”やら“道化役”として、よその国家の皇族とか王子とかを利用した国が、これまでどこにあったでしょうか? アベッチサン大将軍さまは、あえて未曾有の蛮勇に踏み出し、それまで世界の歴史で類例のなかった“他国の皇族を汚名ぬぐいの雑巾(ぞうきん)”として使うという勇気ある行動を実行したのです。……なんと勇猛果敢な行為でありましょうか!」

鬼畜英國の皇族が這々(ほうほう)の体(てい)で退散した後、
我らがアベツチサン大将軍は今回の歓迎行事を勝利的に総括する
声明を発表したのであります。
それによれば「我が帝国の名誉を汚す風評被害を払拭するボロ雑巾として、
英國の王子を掃除の道具に使ってやつたワイ、あゝ愉快愉快!」という
痛快なものだつたのであります。我らが大将軍アベツチサン万歳!
神よアベツチサンに御加護を授けよ!

糸居九郎ナレーター 「……以上が本日の『勝利の記録』であります。英國のウィリアム王子をボロ雑巾のように利用したアベッチサン大将軍さまが、大英帝国を滅ぼす日はきっと遠からずやってくるでありましょう。だって一国の皇族をゾウキン扱いにしたのですからね。これほど痛快な外交があるでしょうか? ……ではリスナーの諸君、最後にウィリアム王子のおバアちゃんのことを唄ったビートルズの曲を聴いていただこう。……『女王様はかわいいお嬢ちゃんだぜ、めったにしゃべらないスケだけど。女王様はかわいい娘さ、毎日コロコロ気分が変わるけど。愛してるって言いたいとこだが、ワインをガブ飲みしなきゃ言えないな。女王様はかわいい娘、いつかオレのものにする、オレのものにするぞ』。……これ、ザ・ビートルズの『ハー・マジェスティー』です。彼らの最終アルバム『アビーロード』の、最後にポツンと張りつけられていた“しょうもない曲”ですよ。われらがニッポンであれば、こんな唄は不敬罪で登場しえなかったでありましょう。たとえ“不敬罪”という法律が廃止になっていても、死のぞこないのゾンビどもが死滅した法律を掲げて生者に嫌がらせをしているのが、われらが黄泉(よみ)の国・ニッポンなのですから。……まぁ、ゾンビどもは世の終わりが来なきゃ始末がつかんわけですし、困ったもんですワ。……じゃあ曲いってみよう! ゴーゴーゴー! ゴーズオン!」

★          ★          ★
八百田記者 「……ということで、今週の『勝利の記録』。おもろかったな! じゃあ犬腰キャスター、まとめ頼むで!」
犬腰犬介アナ 「バカヤロー! 今日もあと30秒で番組終了じゃねえか! 完パケが長すぎるだろ、イヌエッチケースペシャルじゃねえんだぞ!」
ディレクター(怒鳴り散らす声がそのまま番組に入る) 「犬介てめえキャスターのくせに何やってんだ! てめえやっぱし今日かぎりでクビだわ! 地方局に飛ばされて一生ローカルニュース読んでろバカ!」
犬飢ゆうひアナ 「きょうもニュースが一本しかお伝えできませんでしたが、そもそも数万人の職員を抱えているイヌエッチケーが日々カネをかけて製作しているニュースを、一時間のうちに何本も見たいのなら、受信料が月々数千円というのは安すぎます。テレビからもラジオからもインターネットからも、さらにありとあらゆる情報端末機器から、何重にも受信料をいただかなくては、とってもやる気になりません。視聴者の皆さまは、この時間帯に一本でも価値あるニュースを見れただけで、われわれを感謝せねばなりません。……皆さまのテレビ生活は受信料で支えられています。イヌエッチケー東京放送。……《ニュースセンター9》、明日もお楽しみに……」

 
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(この物語はフィクションであり登場人物その他はすべて架空のものです。
屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ご使用の際は《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=6831)から引用》と明記して下さい。)

 

ジャンク化マクドの「疫病神」原田泳幸の経営手腕は「合理化=搾取と混乱」

ベネッセの会長兼社長で日本マクドナルドホールディングス並びに日本マクドナルドの取締役会長の原田泳幸が3月25日の定時株主総会後に辞任することを明らかにした。

◆従業員を使い倒す“ピープル・ビジネス”のどこが「お客様第一」か?

原田は2月20日、マクドナルドを辞任するにあたってこんなコメントを発表している。

「私のマクドナルドでの歩みは常に変革・改革の連続でしたが、マクドナルドは“ピープル・ビジネス”、常に人材を礎としビジネス基盤を強固にしてきたことで成長してきたものと確信しております。幾度のビジネスの危機も、『お客様第一』であり、目の前のお客様に誠心誠意対応させていただくことを肝に銘じてまいりました。『お客様第一』を徹底して追求していく事こそがお客様への価値向上につながり、企業を成長させる最も重要な事であると考えております。日本マクドナルドは真摯な気持ちでふたたびお客様の店舗体験の価値を高めることと私は確信しております。」

原田らしいコメントだと思う。原田の言う「“ピープル・ビジネス”」とは「人々のための仕事」ではなく「従業員や消費者を使い倒す」手法である。元からアルバイト中心で少数の正社員で構成されていたマクドナルドに更なる「合理化」=「搾取」と「競争」原理を持ち込み、自分の人脈の人間を多量に雇い入れ、その連中とも反りが合わなくなり追放し、内輪のゴタゴタが凋落に繋がって行った。「ビジネス基盤を強固にしてきたものと確信して」いるのは原田だけだろう。

「『お客様第一』を徹底して追及してゆく事こそがお客様への価値向上につながり」とはこれと正反対の方針を取る経営者の常套句で「お客様第一」を考えていたらあんな体に悪い商品を臆面もなく売ることなどできないはずだ。あれこれ言いつくろってもジャンクフードの王様、マクドナルドで利益を上げようとした経営者に「お客様第一」を語る資格などない。

◆外資を渡り歩く経営者にありがちな「自己利益と身分確保」優先主義

読者は意外に思われるだろうが私は原田と面識がある。もっとも私が原田と知り合ったのは彼が日本アップルの社長だった頃でまだ白髪も目立たなかった。

その数年後、ある企画で原田に協力を頼めないかと日本アップルに連絡をしたところ原田は既に社長ではなかった。電話に出た人間に転職先を聞いても答えないので調べるとなんとマクドナルドに移っていた。「マック」(アップル製PCの略称)から「マック」へと冗談のような転身だなぁと驚いた記憶がある。が、経営者が大企業を渡り歩くこと自体は珍しくもないので原田の手腕が買われたのだろう程度に考えてた。だがその後マクドナルド内ではかなりえげつない合理化により、内紛と言っていいほどの混乱が起きる。ジャンクフードの売り方よりも自身の利益や身分の確保に凌ぎを削る争いが起きて、一部フランチャイズ店からは訴訟も起こされる。

たぶん原田の運はこのあたりから下降線をたどっていたのだろう。

◆マクドナルド凋落はベネッセでも繰り返される

ベネッセで社長兼会長に就任するとニュースを聞いたときは「いくらなんでもそれはやりすぎだろう」と感じた。ベネッセは福武書店が「進研ゼミ」の商標と名乗っていた岡山に本社がある教育関連企業だ。長く株式を公開せず、社員持ち株を続けていたが株式公開と同時に高騰し、社員が皆「億万長者」になったという噂を持つ会社だ。模擬試験や通信教育から始めた事業は「幼児から取り込めば大学受験まで顧客にできる」と着眼し、「シマジロウ」という虎の縫いぐるみを中心に幼児向けのビデオ教材でも成功を収める。

「幼児から取り込めば大学受験まで顧客にできる」これどこかで聞いたフレーズに似てはいまいか。そうだ。日本マクドナルド初代社長藤田田は「親の舌をハンバーガーに馴染ませたら、子供も食べに連れてくる。徹底的に日本人の舌を変える」と言った。「味覚の強制破壊」とも言うべき手法に限りなく似ている。ベネッセの幼児教材は、ほとんど玩具なのだが研究し尽してあり幼児が喜ぶ材料を毎月送って来る。ビデオなどは幼児のツボをついているらしく、一度見せると「もう一回!」と幼児が何度も繰り返し見たがる光景を私は各所で何度も目にしている。

だから、先ごろ起きた情報流出事件のように膨大な顧客を抱えることに成功していたのだろう。漏えいした個人情報の数はベネッセによると、実に3504万件に上る。大雑把に言えば国民3人に1人の割合だ。情報の内容や区分はともかくこれだけの情報を保持するほどに事業が拡大していたことは驚きに値する。売り上げを見ても2014年3月末で4663億円に上っている。経営も多角化し同時に混乱も多角化している様子が想像される。

そこに現れたのが原田泳幸だ。原田のベネッセ社長兼会長就任は2014年6月21日だからまさにベネッセ社内は情報漏えいでテンヤワンヤの時期だったろう。原田がこの漏えい事件にかかわったわけでは全くないけども、ベネッセに移籍するにあたりこのような混乱の渦中に放り込まれるあたりで原田の運がとことん尽きていることが伺い知れる。

ベネッセは昔通りに進研ゼミの「赤ペン先生」と「模試」を丁寧に行っていれば良いものを、「幼児から取り込めば大学受験まで顧客にできる」などとよこしまな考えを起こしたことがそもそもの過ちだったのだ。そこへ原田の登場である。マクドナルド凋落がベネッセでも繰り返されるだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」
◎橋下の手下=中原徹大阪府教育長のパワハラ騒動から関西ファシズムを撃て!
◎日本の「新幹線」輸出で最初から破綻が運命づけられていた台湾高速鉄道
◎リクルートの「就活」支配──なぜ国は勧告指導しないのか?
◎渡辺昇一の「朝日憎し」提訴原告数が「在特会」構成員数とほぼ一致

「闘う在米心理学者」矢谷暢一郎の心情溢れる提言『日本人の日本人によるアメリカ人のための心理学━アメリカを訴えた日本人2』

 

誰もテレビを見ない時代が到来する?──テレビが売れない本当の理由

大手電機メーカーの友人と雑談したが「今、とにかくテレビが売れない」のだという。「テレビが売れない」ということは「誰もテレビを見なくなった」ことを意味する。

◆4Kテレビを必要と感じている人はどれくらいいるのか?

革新的といわれた4Kテレビが発売されるようになってもダメか。確実にテクノロジーは進歩している。まず技術としては現行のハイビジョンの横方向の画素数(2Kとは2000のこと)が2倍になる4K(フルハイビジョン[約207万画素]の4倍の約829万画素もの緻密な画素数で表示できるテレビのこと)のさらに4倍になる8K、というスーパーハイビジョンの映像技術自体は、すばらしい。ただ、それを必要と感じている人は果たしてどれくらいいるのだろうか。はなはだ疑問である。

たとえばこんな報道がある。少しは希望が見えてきたか?

ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社(東京:中野区)は、家電量販店における4Kテレビの販売動向を発表した。
【概要】
・2014年11月第2週の50インチ以上薄型テレビにおける4Kテレビの金額構成比は51%
・テレビ購入意向者の92%が4Kテレビを認知し、そのうち43%が4Kテレビの購入を検討
【家電量販店 4Kテレビ販売動向】
4Kテレビは2013年以降、メーカー各社が50インチ、60インチ台を中心に本格的に製品展開を開始し、2014年に入ると40インチ製品を投入するなどモデルラインアップを拡充させた。販売モデル数も2013年の13モデルから、2014年11月時点では既に45モデルと3.5倍に増えた。家電量販店店頭をみると、AV製品売り場では高単価製品である4Kテレビを前面に押し出している店舗が多くみられる。こうしたメーカー、量販店の訴求の結果、2014年11月第2週(11月3日~9日)における4Kテレビの販売金額構成比は24%、特に50インチ以上薄型テレビ内では51%と初めて50%を突破した(図1)。また販売数量構成比は、薄型テレビ全体に対しては6%、50インチ以上製品内では34%となった。? 2014年7月に実施した消費者調査によると、過去半年以内に4Kテレビを購入した消費者のうち、事前検討をせずに購入したと回答した割合は24%であった。4Kテレビの高精細な画質に惹かれてその場で購入を決断した消費者は少なくないと想定される。(「GFK」より引用

だが家電店スタッフは「いやいや、金持ちだけが4Kに興味があるのでしょう。販売店では4K時代なんて感じていません。すぐに売れなくなりますよ」とため息をつく。

◆40代以降しか雑誌も買わないし、テレビも観ない時代

このほど、昨年の雑誌の売り上げが前年比の4~5%ダウンだということで、「もはや雑誌は40代以降しか買わない」という分析が記事で出ていた。テレビなど、10年前から「40代以降しか観ない」と指摘されてきた。

たとえば、東芝は2012年にテレビ事業からの撤退をアナウンスした。東芝にとっては、12年3月期のテレビ事業は約500億円の赤字と経営の足を引っ張っており、コストのかかる国内生産はもはや維持できないと判断。ただし、海外での生産は継続し、台湾メーカーなどへの生産委託も増やす方向性を打ち出した。

「かつての計算機やファックスがすぐに流行遅れとなったように、テレビがもはや、時代遅れとなった感は否めないですよ」(東芝関係者)

「長い歴史のある深谷事業所(埼玉県深谷市)で(テレビの)生産をやめることには忸怩(じくじ)たる思いがある。しかし経営の重しとなっては(継続は)難しく、(生産終了の)判断をしなければならなかった」

東芝の佐々木則夫社長は当時、経営方針を説明した記者会見で、苦渋の決断だったことを強調している。国内最後のテレビ生産拠点だった深谷事業所はテレビの設計・開発とアフターサービスの拠点に衣替えとなった。

こうした背景には、韓国の電機メーカーが元気に満ちていたことがあげられる。
特にサムスンに関しては、韓国の政府を挙げて資金面でも経営環境面でもバックアップしている。

また、ソフトに目を移せば、「見逃し番組」は、今や各テレビ局ごとにコンテンツを販売しているが、テレビ局をまたいでダウンロードできるシステム構築が提案されている模様だ。

テレビにコマーシャルを流しても「まったく宣伝効果がない」と企業が考え始めたのも痛い。「とにかく値段が下がっている。15秒の枠を30万円で売った時間帯もありましたよ。今年に入ってからの話ですけど」(広告代理店社員)

◆視聴者のニーズがわかっていない作り手がテレビ凋落を加速化させる

僕は、テレビの凋落は「作り手が、視聴者のニーズをわかっていない」ことにつきると考える。

ブレイクしそうな芸人が出現したら、とにかく起用して、どこかでやったようなネタを平気でやらせて視聴率を稼ぐ。カリスマ予備校講師が売れたら、番組を持たせてみる。名門の入試問題をもとにしたクイズ番組が人気が出たら、みな一様に真似をする。

「そうした創意工夫なきコンテンツが、視聴者から見放されてしまったのでしょう。逆に今、70年代のテレビ番組のアーカイブが人気で、CSなんかでは視聴率を稼いでいるようですよ」(制作会社)

矢沢永吉が30歳のときにNHKの番組に出たときの映像が「ユーチューブ」にあがっていて、爆発的にカウントを集めていた。また、昔のドラマで「とんぼ」もアップされており、上位にランクされていた。

「こうして勝手にアップされた番組を無料で見れるのも原因でしょう。今、やたらとテレビ番組には『番組を投稿しないでください』とテロップが出るが、これも必死すぎて見ていて引くね。本当におもしろい番組を作れば、みんなネットやゲームをやめてテレビに戻ってくるが、もはやそうした気力は現場にはありませんよ」(放送作家)

そもそも、テレビは「報道」という点でも取材スピードではネットには勝てない。悲しいかな、テレビを誰も見ない時代が本当に到来しそうだ。

[伊東北斗]

◎《誤報ハンター01》芸能リポーターらが外しまくる「福山雅治」の結婚報道
◎小向美奈子逮捕は警察の協力要求を蹴った意趣返し?「後ろ盾」とも決別か?
◎秋吉久美子長男不審死の水面下で蠢く「タレント整形カルテ」流出騒動の闇
◎多様性に不寛容な日本が「外国人」を無原則に受け入れるとどうなるか?
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」

 

橋下の手下=中原徹大阪府教育長のパワハラ騒動から関西ファシズムを撃て!

上は総理安倍から下は市会議員、村会議員まであらゆる階層で「毒素」がばら撒かれ蔓延する何とも嫌な時代になってしまった。先日の予算委員会では安倍が民主党の質問者発言の際に「日教組!」「日教組は!」とヤジを飛ばし、委員長から注意されていた。

確かに昔の日教組には骨のある活動実績もあったけども「連合」に加盟してこれといって際立った存在でもなくなった日教組を未だに目の敵にしている安倍の本音が露わになった。時々街で見かける大音量で改造車から軍歌を流している街宣車に乗っている右翼の方々と安倍は同意見なのだ。

◆2次関数の曲線のようにエスカレートする安倍の暴言暴走

安倍の暴走振りは2次関数の曲線のように日に日にエスカレートしているように思えてならない。安倍は「絶対に」、「全く」、「完全に」という言葉を頻繁に使うようになってきた。「絶対に」はイスラム国に向けた敵愾心の中で吐露されていた「卑怯なテロは絶対に許さない」だ。同様に「全く」は日本人人質事件で対応に問題はなかったかとの質問に対する回答だ。この質問への回答の中で「対応に全く問題はなかった」と断言している。「完全に」は政府の姿勢を正当化する答弁の際にしばしば登場する。

前回総理を勤めていた時、安倍の発言は今に比べればまだ慎重だった。やっていたことは「教育基本法」の改悪だったり、防衛庁の防衛省への格上げだったり今同様悪業の限りを尽くしていたのだけれども、言い回しはもっと迂遠(遠回し)で、今のように傲慢ではなかった。衆参両院で公明を入れれば絶対多数を維持しファシズムの下支えが盤石だからだろうか、もうこの男には日本語文法や原則的な憲法論が通用しなくなってきている。内心独裁者気取りだろう。

◆「パワハラ認定」中原徹=大阪府教育長は卑怯者「維新」の代表格

一方、厚顔無恥と屁理屈では安倍と双璧の大阪市長橋下はどうやらとうとう「弾切れ」に陥ったようだ。橋下が「改革」の名の下に行った「暴政」が次々に綻びを見せている。

橋下の手下で許せない人間の一人に大阪府教育長の中原徹がいる。奴は府知事時代の橋下によって大阪府立和泉高等学校の校長に民間出身、歴代最年少で就任した。中原は弁護士資格を持ち橋下とは大学時代からの友人だ。これだけで賢明な読者には怪しさが伝わるだろう。

和泉高校で中原が行った功績と言えば何と言っても行事の際に教員が「君が代」を歌っているかどうか「口の動き」をチェックさせたことだ。当時の大阪府教育委員長ですら「そこまでやらなくても」とコメントするなど多くの批判を浴びた中原だが、橋下はその行為に「素晴らしいマネージメントだ」と太鼓判を押した。戦前の特高警察、現在の公安警察並の行為を校長が行うことのどこが「素晴らしいマネージメント」だというのか。

また中原は「平和教育」と称して、生徒を自衛隊へ連れて行き、実質的な体験入隊に近いことまでさせていた。新聞が疑問も呈さずにあたかも新しい試みのように中原の「平和教育」を掲載していたので、電話取材を何度も試みたが中原はついに電話には出てこなかった。公立高校の校長のくせに卑怯な取材拒否だった。

橋下は調子に乗ると止まらない。手下の松井大阪知事を使って、あろうことか中原を校長から大阪府の教育長に引き上げた(2013年4月)。そして中原は当然のように事件を起こした。中原が「パワハラ」を行っていたことが2月20日認定されたのだ。立川さおり教育委員と教育委員会事務局の職員4人に対し、パワハラに当たる発言を行ったことが明らかになった。認定された「パワハラ」は3件だそうだがこれは「真っ黒」が3件と見るべきで、「グレー」な言動は数限りなくあったことだろう。中原は立川教育委員に対して「誰のおかげで教育委員でいられるのか。罷免要求出します」と発言したそうだ。天に唾吐くとはこのことではないか。「関西ファシズム」台風の目、橋下がいるからこそ、中原は民間出身校長に就任することができ、身分不相応な教育長にまで上り詰めている。橋下がいなければ中原が高校の校長や教育長に就任するような異常事態は起こりえなかった。

◆立地も建築も欠陥だらけの「咲州」府庁機能移転という「維新」幻想

カジノ設置候補地として横浜と大阪が選定されたそうだ。でもそんなことはもう橋下の追い風にはならないだろう。関西以外の読者の皆さんは現在の大阪府庁がどこに位置しているがご存知だろうか。橋下の当初の構想通り進んでいれば、そして東日本大震災が起こっていなければ、今頃、府庁機能は全て住之江区南港北にある「咲州」(さきしま)庁舎に移っていたはずだ。

現在大阪府庁の機能は大阪市中央区大手前にある旧来からの府庁舎と咲州庁舎に分かれている。旧庁舎は老朽化が進んでいるので建て替えか移転を模索していたが、橋下が知事時代に目を付けたのが旧「大阪ワールドトレードセンター」として建築され、財政破たんした大阪湾至近の咲州物件だった。地上55階、地下3階建てのこのビルはバブルの遺産ともいうべき無残な廃墟寸前だった。大阪市が一部を借り切りなんとか最終破綻を食い止めていたところに知事である橋下が「府が買い取る」と名乗りを上げた。もっとも当初は議会に反対されたり紆余曲折があったのだが、最終的に大阪府が買い取ることになった。

しかしだ、このビルがある場所は埋立地だから、海抜ゼロメートル(ひょっとすると海抜マイナス地帯かもしれない)だろう。ちょっとした高波、いわんや津波が来た際に機能しなくなる場所であることは素人にも自明だった。複数研究者の想定によれば南海、東南海地震による最大津波は内陸6キロ以上に及び大阪駅周辺も水没するとされている。なのに、海沿の孤立が確実な場所に庁舎を移転してどうするのだ。職員や知事はボートで庁舎へ行き来するのか。

更に立地だけでなくこのビルはとんでもない「欠陥建築」だということが判明した。東日本大震災時、大阪では震度3の揺れを観測している。日本で震度3と言えば驚きはするけども被害の出るような揺れではないはずだ。ところが咲洲庁舎では天井の落下や床の亀裂など360箇所が損傷、防火戸の破損、エレベーター全26基が緊急停止し、うち4基に男性5人が5時間近く閉じこめられ、エレベーターを支えるワイヤロープが絡まる、地震発生24時間後の12日夜の時点でも8基が復旧しないなどあきらかな「欠陥建築」であることが露呈したのだ。こんな被害が出た場所は関西でここだけだろう。

もう多言は要すまい。そんな場所、そんな建物に災害の時には対策の指揮を執るべき役所をおいているのが橋下を中心とする「維新」勢力だ。これでもあなたはまだ「維新」幻想を抱き続けるだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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