大阪地検特捜部、またもや大失態! プレサンス事件の取り調べ特捜検事、刑事裁判へ! 尾﨑美代子

プレサンス事件で被疑者の机を叩き、長時間に渡って怒鳴り続けていた大阪地検特捜部の検事について、大阪高裁が「特別公務員暴行凌辱罪」で刑事裁判にかけるとした。


◎[参考動画]「刑事司法の歴史変わると言っても過言ではない」不動産会社元社長“違法捜査”、担当検事を刑事裁判へ(読売テレビニュース 2024年8月9日放送)

Xでこの速報をポストしたのは、元裁判官の弁護士、プレサンス元社長・山岸氏の最強弁護団の一人・西愛礼(よしゆき)氏だ。私は、プレサンス事件について、春先、西弁護士を取材していたが、執筆が遅れ、今必死で原稿をまとめている。

無罪判決を勝ち取った山岸氏は、国賠を提訴すると同時に、捜査に関わった特捜検事2人を刑事告発していた。特捜検事を「特別公務員暴行凌辱罪」で刑事裁判を開くよう求める不審判請求で、大阪高裁は8月8日、田淵大輔検事を審判に付す決定を出した。今後、刑事裁判が始まる。

プレサンス事件では、ある「業務上横領事件」の共犯としてプレサンス元社長・山岸忍氏と部下のKと不動産会社のYさんも逮捕された。

今回裁判にかけられるのは、Kを取り調べた田渕大輔検事だ。
 
しかし、Yさんを担当した末沢岳志検事もなかなかの曲者だった。Yさんもいったんは末沢検事に脅され、山岸氏関与を認めるウソの供述を強いられたが、その後「あの供述を撤回してください」と末沢検事に頼み込んだ。しかし、末沢検事は撤回はしなかった。そればかりか、必死で頼み込むYさんをせせら笑っていたようだ。

じつはプレサンス事件の最強弁護団は、KとYさんが取り調べられた録音録画の反訳(書き起こし)を行った。その時間は2人で142時間32分にも及ぶ。カメラに映るのは被疑者の方だが、Yさんが「笑わないで下さい。真剣にしゃべっているのに」というような場面が残っている。

そして最後の最後にYさんが再度「僕の山岸さんについての調書、あのままにしとくんですか」と尋ねると、末沢は「それだけいうんやったら、法廷でひっくりかえせばよろしんやん」などと言っていた。そして……Yさんは実際に法廷でひっくり返してやったんだけどね。詳細は、記事になったら読んでね。

大阪地検特捜部は2009年の村木事件で大失態をおかした。そこからの挽回を図ろうと思ったのかどうかしらないが、今回、関西経済界の大物中の大物、プレサンスを一代で築き、東証一部上場企業に押し上げ、飛ぶ鳥落とす勢いだった山岸忍氏を逮捕した。

起訴し、有罪にできると思ったのだろうか。しかし、あまりにずさんな捜査だった。次々とでてくる証拠はいずれも山岸氏無罪を証明するものだった。検察は「大川原化工機事件」と同様に起訴を取り下げるかと思いきや、ずんずん進んでいき、山岸氏に有罪を言い渡して結審した。

しかし山岸氏には無罪判決が下された。そして山岸氏は最強弁護団とともに「負けへんで」「とことんやったるで」と国賠訴訟を提訴した。同時に取り調べた田渕検事を刑事告発していた。田渕検事は大阪地裁によって不起訴とされたが、弁護団は裁判所に対して起訴するよう申し立てる「付審判請求」を行った。

これに対して地裁は、田渕検事について「特別公務員暴行陵罪の嫌疑が認められるべきである」などと判示したが、起訴までは行わなかった。その後弁護団は高裁に不服申し立てを行っていたところ、大阪高裁で追訴された、ということだ。いけいけ、もっとやったれ!

しかし、なぜ警察も検事も「自白」をとることだけに必死なのか? プレサンス事件でも、税金使って大々的な強制捜査やって、プレサンス、Yさんの会社、山岸氏の自宅などからそれぞれ100箱もの証拠物を押収してきたのに。それをきっちり精査することなく、いや、そんなに時間もかけずに、慌ててKとYさんを逮捕し、2人に嘘の供述を強いて山岸さんを逮捕した。

証拠品を精査せず、とにかく「自白」をとりたい。自白といっても、検察の思うような自白、つまり罪を認めるような自白だ。本当におかしい。なんのために、どういう仕事をしてんだよ! 大阪地検特捜部!

 
山岸忍氏の著書『負けへんで! 東証一部上場企業社長vs地検特捜部』(文藝春秋社)

山岸忍さんの著書『負けへんで!』から、改めて、田渕検事の怒鳴っている個所を読んでみた。本当に凄まじい。

「開き直ってんじゃないよ。なにこんなみえすいたウソついて、なおまだ弁解するか。なんだ、その悪びれもしない顔は。悪いと思っているのか。悪いと思っているのか。悪いと思っているんですか(しつこいな)。私は何度も聞いた。ウソはひとつもついてないのかと。明らかなウソじゃないか。なんでそんな悪びれもせずにそんなこというんだ。なぜですか?なぜだ。大ウソじゃないか。よしんばこれでウソを認めて、会社のなかで口裏合わせをしてましたと認めるならまだしも、そこからまた悪あがきをするとはどういうことだ。そういうことなんですか。何を考えているんですか、あなたは。ウソじゃないですか。ウソつきましたね。ついたよね。」
 
「命かけてるんだよ!検察なめんなよ!命かけてるんだよ、私は。かけてる天秤の重さが違うんだ、こっちは。」

そして最後にKさんに

「もうさ、あなた、詰んでるんだから。もう起訴ですよ。ってゆうか有罪ですよ、確実に」

「あなたはプレサンスの評判を貶めた大罪人ですよ。会社から今回の風評被害とかうけて、会社が非常な営業損害をうけたとか、株価が下がったとかいうことをうけたとしたら、あなたはその損害を賠償できますか。10億、20億の話じゃないですよ。それを背負う覚悟で今はなしてますか」

などと脅したのだ。

「あなたは大罪人……10億、20億の損害を賠償できるか」と詰められたら、そりゃびびるわな。

実際、?はこうして脅されウソの供述(山岸さんも関与)をしたが、その後の裁判でも検察側について、うそをつきとおしたのだ。それでも山岸さんは、この部下Kを取り調べた田渕検事を告発したのだ。

もう30年ほど前、ある冤罪の専門誌みたいな本を読んだ。そこには、「日本は未だに自白中心主義で……」と批判する箇所があった。30年経った今でもそのまんまじゃないか? 自白をとることだけに必死ではないか? どうなってんだ。日本の司法は? 警察、検察は? 税金で集めた証拠をちゃんと精査して、事件を解明しろや!

それにしても大阪地検特捜は、村木事件に続く今回の大失態をどう「決着」つけるのか。


◎[参考動画]【独自取材】特捜部検事に対する刑事裁判を開く異例の決定 冤罪事件となった「プレサンス」事件〈カンテレNEWS〉(2024年8月9日放送)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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