菅直人元首相が名誉棄損で安倍晋三現首相を訴えた裁判が12月3日に行われ、東京地裁は菅元首相の請求を棄却した。この判決について毎日新聞はこう報じている。

東京地裁:菅元首相の請求棄却 「安倍首相が名誉毀損」(毎日新聞2015年12月03日付)

民主党の菅直人元首相が、東京電力福島第1原発事故の対応を巡る安倍晋三首相のメールマガジンの記載で名誉を毀損(きそん)されたとして、謝罪記事の掲載と1100万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は3日、菅氏の請求を棄却した。永谷典雄裁判長は「メルマガの重要な部分は真実」と述べた。

安倍首相は自身の公式ホームページに2011年5月20日付で「菅総理の海水注入指示はでっち上げ」と題したメルマガを掲載。東日本大震災発生翌日の同年3月12日に実施された原子炉への海水注入について「やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だった」などと記した。実際は海水注入は停止されず継続された。
判決は「再臨界の可能性を質問した菅氏の気迫に押され、東電幹部や官邸のメンバーが海水注入を再検討した経緯があった。菅氏には海水注入を中断させかねない振る舞いがあった」と指摘した。

菅氏は判決後に記者会見し「重大な事実誤認があり承服できない。控訴する」と話した。安倍首相の事務所は「当方の主張が認められた」とのコメントを出した。【島田信幸】

これだけの記事では詳細が何のことやら一般の読者には充分な理解が出来ないのではないだろうか。

この問題を含めて、私たちは10月8日菅元首相に取材を行っている。そのインタビュー記事は先月25日発売されたばかりの脱原発雑誌『NO NUKES voice』第6号に掲載されている。簡単にまとめれば経緯は以下の通りだ。

◆安倍メルマガ掲載翌日の2011年5月21日、読売、産経の2紙が一面トップで報じた理由

安倍現首相は自身のメルマガに上記通り「菅総理の海水注入指示はでっち上げ」と題した文章を2011年5月20日に書いている。元首相といえども当時の安倍は野党の一議員に過ぎない。しかし翌日、読売新聞、産経新聞は1面トップでこの「恣意的誤報」を大々的に報じている。読売新聞の見出しは「首相意向で海水注入中断」だ。ご丁寧にも安倍の「首相が誤った判断で(海水注入)を止めてしまった。万死に値する判断ミスでただちに首相の職を辞すべきだ」とのコメントまでと掲載している。

菅元首相によると、この「海水注入中断造話」は東電社員が情報を大手メディア各社に配ったのだという。

このメルマガでの安倍の記述を大々的に報道したのは全国紙では読売、産経のみで朝日、毎日は掲載していない。そのことからも事実がどこにあったのかを推認することは難しくない。

2011年5月21日付読売新聞1面

◆その後、安倍側が2011年5月20日掲載記述を削除した理由

菅元首相は訴えの中で、1)メルマガ記載文章の削除、2)謝罪、3)名誉棄損の損害賠償を求めていると取材の中で明らかにした。安倍側は当初、全面的に争う姿勢を見せながら、ある時期こっそりと2011年5月20日の掲載内容を削除している!やましくないのであれば係争中の文章をこっそり削除する必要があるだろうか。

菅元首相は「傑作なのはこれから1週間経った時に吉田昌郎(当時福島第一原発所長・故人)がそんなことはなかったと言っていることです」と続けた。さらに「なんで新聞がこんなことを書くのか、私は海水注入を怒鳴って止めたことは一度もないですよ。海水注入で廃炉になるのだというのなら、それは東電が気にする事であって、私がそんなことを気にするはずもないですよ。海水に変えることを誰も反対していませんでした」と私たちの質問に明言した。

3月12日午後6時頃から官邸での打ち合わせで海水に切り替える相談をしていました。そこに東電から来ていた武黒一郎氏(当時副社長)は『切り替えに1時間半くらいかかる』というので、私は原子力安全委員会委員長の班目春樹氏に2つ質問をしました。
12日朝ヘリコプターで福島第一に向かう途中班目氏に『水素爆発は大丈夫ですか』と聞いたところ『圧力容器に水素が漏れても、格納容器内は窒素で満たされているので爆発はしません』との答えでした。でも午後3時ごろ1号機は爆発するわけです。私と班目さんは同じ場所にいて、その時も東電からの連絡は大幅に遅れました。民間のテレビ局が放送するまで連絡をしてこないのです。東電は。爆発から2時間後です。そこで班目氏が言ったのは『建屋まで水素が流れていくことまで気が回らなかった』でした。
そういうことがあったので(心配して)海水を注入した時、塩分の影響が出ると想像されるがそれはどうですかと、それが一つです。もう一つはメルトダウンしてメルトスルーすると再臨界の恐れはないか、それを非公式に外部の専門家にも意見を聞き、「懸念がないわけではない」と言われていたので『再臨界の恐れはないですか』と班目さんに聞きました。『可能性はゼロではありません』と彼は答えました。
このやり取りを誰かが「海水注入を止めた」と全く脈略の違う解釈をしたわけです。(『NO NUKES voice』6号特集インタビューより

つまり、菅元首相は一度も海水注入を止めていない。「塩分による影響」に対する質問が「海水注入停止」にすり替えられている。判決も「海水注入停止はなかった」と認定しながら安倍がメルマガで「やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです」と安倍の事実誤認を問題にしていない。いかに時の最高権力者への司法判断とはいえ、全くの不当判決というほかない。

「安倍晋三議員の虚偽メルマガ」(菅直人氏公式ブログ2015年12月01日付「今日の一言」より )

「安倍晋三議員の虚偽メルマガ」(菅直人氏公式ブログ2015年12月01日付「今日の一言」より )

◎「安倍晋三議員の虚偽メルマガ」(菅直人氏公式ブログ2015年12月01日付「今日の一言」より )

◆菅元首相の「承服できない判決・控訴する」は当然だ!

菅元首相は12月4日、自身の公式ブログで「承服できない判決・控訴する」と強い決意を述べている。私が電話取材をお願いしたところ、ご本人が「係争中なので公式のコメント以上は述べにくいから理解してほしい」と話されたが、周辺事情を含め丁寧なご説明を頂いた。

この裁判の背景を含み菅元首相が語る3.11──。その直後から官邸内でなにが起こったのか、何が隠されたのか、知られざる多くの事実を菅元首相は『NO NUKES voice』第6号で語ってくれている。是非ご一読を。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎「難民受け入れ」表明前にこの国が顧みるべき「中国残留日本人」帰国政策
◎大阪ダブル選挙──「安倍と橋下どっちを選ぶ?」の選択肢しかなかった不幸
◎挙句の果ての「1億総活躍」──狂気、矛盾、悪意、恫喝づくしの安倍暴走政権
◎隣のクルド人──「国を持たぬ民」が日本社会で暮らすということ

「脱原発」×「反戦」の共同戦線誌『NO NUKES voice(ノーニュークスヴォイス)』第6号!

この夏は熱かった。11月も後半になり記憶が薄れかけている向きもあろうが、安保法案をめぐる抗議行動は国会周辺だけでなく全国で多彩に闘われ、そこではこれまで少なかった若者の姿があった。その中心としてメディアの寵児にのし上がった感すらある「SEALDs」。中心メンバーの奥田愛基さんは国会でも発言するなど多くの注目をあつめた。「本当に止める」、「民主主義ってなんだ」といたフレーズがネット上でも飛び交い、大きな話題となった。

だからこそ、本日11月25日発売の『NO NUKES voice』(NNV)第6号の特集は「脱原発と反戦・反安保」だ。

◆菅直人元首相の「告白」から見えてくるマスメディアが伝えてこなかった真実

まず、特集の頭を飾るのは、当時首相であった菅直人さんの激白だ。「いまこそ、私の話を聞いてほしい なぜ、あの時、情報が正しく伝わらなかったのか?」は、反原発運動に長年携わってきた槌田敦さん(物理学者)が聞き手となることにより、他媒体では決して実現できない踏み込んだ事実をいくつも掘り起こしている。首相官邸内でどのような思案がめぐらされたのか、情報は正確に伝わっていたのか、最高責任者として事故直後福島に飛ぶ決意をした理由とは……。息をのむような事実がこのインタビューでは明らかにされている。

少しだけ種明かしをすれば、「菅インタビュー」は今日のマスメディアが重要な事柄を全くと言っても過言でないほど「伝えていない」ことを示す証拠を読者に提供してくれる。

◆「SEALDs」奥田愛基に鹿砦社松岡社長が挑む激論生録インタビュー!

「SEALDs」奥田さんへのインタビューは発行人である松岡社長自らが敢行した。このインタビューは「提灯持ち」視点からのそれではない。よってこれまで他のメディア(一部右派メディアを除く)で紹介されたのとは全くことなる角度から遠慮なく疑問がぶつけられており、「SEALDs」現象が一体何だったのかを理解するためには必読だ。

同時にやはり松岡社長自ら斬り込んだミサオ・レッド・ウルフさんへのインタビューも「激論」と表現しても過言ではないだろう。「反原連」の指導者として、これまでもNNVに登場したミサオ・レッド・ウルフさんへの松岡直撃は予定調和と対極に位置する。反・脱原発運動が今後進むべき道筋、3・11後これまで歩んできた道程を振り返り、成果と問題点を浮かび上がらせる示唆に富んでいる。「反原連」支持者、「反原連」に違和感を抱く方双方にとって読み逃すことが出来ない。

◆「SEALDs」現象と対を成す「ハンスト実行委員会」の学生たちの座談会実現!

若者の活躍では「ハンスト」を戦術に闘った「ハンスト実行委員会」の座談会は内容において「SEALDs」現象とは一線を画す「硬派」のそれと言えよう。僅か10数人のメンバーが4人のハンスト実行者を支え、最長149時間のハンストを戦い抜いた学生たちが見据える未来は「現状肯定」ではなかった。「SEALDs」現象との対比は必ずや読者に強い刺激となるだろう。

◆鹿砦社が執念で実現した武黒一郎=元東電副社長のおっかけスクープルポ!

そして、鹿砦社といえば名物「直撃取材」だ。今回のターゲットは元東電副社長で検察審議会により強制起訴が決定した「武黒一郎」だ。我が取材班の執念は果たして実ったのか……。捕捉した! 武黒の変わり果てた姿を長時間の張り込みの末に自宅で激写に成功!武黒と取材班のやりとりも執念のなせる技。NNV取材班の執念恐るべしである。

◆上野千鶴子さん、鎌仲ひとみさんの熱きインタビュー、各地の運動報告もますます充実!

他にも社会学者の上野千鶴子さん、映画監督の鎌仲ひとみさんなど熱きインタビューが盛りだくさんだ。そして、特集を締めるのは今号で編集長を降りる松岡社長による「解題 現代の学生運動―私の経験に照らして」である。自ら「SEALDs」や「ハンスト実行委員会」に接触し、語った松岡社長にとって「学生運動」は他者のそれではなく、現在の彼を規定している一部である。自らの経験とこんにちの「学生運動」を解析し若い世代へ送る辛口のエール。この文章は「ヘサヨ」、「ブサヨ」といった語彙を持つ方々からはたいそうな顰蹙を買うであろうし、賛否両論激論を喚起すること必至だ。

運動報告では経産省前テント広場裁判「被告」の淵上太郎さんが東京高裁の不当判決を糾弾し、高木久美子さん(笑顔でつながろ会代表)、本間龍さん(元博報堂)、渋谷三七十さん(ライター)、納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティー)、中村通孝さん/松浦寛さん(FB9条の会)など全国各地の情報が満載だ。

雑誌は「総力特集」、「全力取材」をキャッチコピーに多用するが、NNV6号は誇張抜きに取材班が「総力」を挙げた濃密な報告と思想と行動が詰め込まれている。今すぐ書店へ! (田所敏夫)

タブーなき総力取材!「脱原発」×「反戦」の共同戦線雑誌
『NO NUKES voice (ノーニュークスヴォイス)』 第6号
11月25日発売!

●主な内容●
秋山理央(映像ディレクター、フォトジャーナリスト)
ALL STOOD STILL Vol. 6『冬ニモマケズ』
[報告]淵上太郎さん(経産省前テントひろば裁判「被告」)
経産省前テント裁判控訴審 東京高裁不当判決に抗議する!
[報告]本誌特別取材班
福島原発事故A級戦犯=武黒一郎(東電元フェロー=副社長)を直撃!

[特集]脱原発と反戦・反安保―世代を超えて
[インタビュー]菅直人さん(元内閣総理大臣)
いまこそ、私の話を聞いてほしい なぜ、あの時、情報が正しく伝わらなかったのか?
[インタビュー]上野千鶴子さん(社会学者)
知っていたのに 何もしなかった私も 共犯者だった
[インタビュー]鎌仲ひとみさん(映像作家)
映画と一緒に旅しながら民主主義のエクササイズ続ける
[インタビュー]Misao Redwolf さん(首都圏反原発連合)
再び脱原発のコールの爆発を!──今後の超党派市民運動の行方
[提案]佐藤雅彦さん(ジャーナリスト)
うたの広場
[インタビュー]奥田愛基さん(「SEALDs」メンバー)
デモするたびにパクられてたら 俺、国会行ってないすよ
[座談会]学生ハンスト実行委員会
私たちは直接行動で状況を切り開こうとした
[報告]松岡利康(本誌発行人)
解題 現代の学生運動―私の体験に照らして
[報告]高木久美子さん(笑顔つながろ会代表)
3・11 放射能汚染に負けない! 笑顔でつながり、みんなで立ち上がろう!
[報告]本間龍さん(元博報堂社員、作家)
原発プロパガンダとは何か?(第四回) 福島民報・福島民友(三)
[報告]渋谷三七十さん(ライター)
地獄への道案内は罪! もはやつける薬がない「原発推進メディア」を斬る!
[報告]納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティ)
反原発に向けた想いを次世代に継いでいきたい(5)
このシリーズの連載を始めた真の意味を、そろそろ打ち明ける時がきた……
[運動情報]中村通孝さん/松浦寛さん(FB憲法九条の会)
原発をゼロにしてから死ぬのが、大人の責任だと思う
ほか

「貫くべき信念があります」河野太郎HP

まさに罪と×(バツ)だろう。
日刊スポーツを見ていて、頭にきた。血液が沸騰し、体温が40度以上になりそうだ。

こんな記事だ。タイトルは「河野太郎氏、原発批判封印 入閣した途端ブログ閉鎖」
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「脱原発」は封印か─。第3次安倍改造内閣で初入閣した河野太郎・行革担当相が自身のホームページ(HP)で公開していたブログ「ごまめの歯ぎしり」や「主張・政策」などの項目が8日までに、閲覧できない状態になった。
「メンテナンス中」と書かれ、これまで公開してきた過去記事などは読めない。河野氏は一貫して脱原発を訴え、安倍政権の原発政策を批判。先月3日のブログでは、自身が共同代表を務める「原発ゼロの会」の活動も紹介した。閣僚となり、持論と政府の政策が「閣内不一致」と批判される可能性もあり、一時的に「封印」した可能性がある。
7日から閲覧できなかったブログは8日深夜、更新され、「入閣に当たり」と題した文章が掲載された。
「これまでは政府の外から自らの主張を訴えるだけでしたが(略)政府の中で主張を訴えることができるようになった」とした上で、「私のすべての主張がそのまま政府の政策になるわけではないが、1つ1つ、実現に向けて努力をしていく」と釈明。「政府の一員になる以上、政府の外に向かっては、政府の政策を擁護していく」と、持論の「封印」に理解を求めた。
ただ、河野氏の持ち味は歯に衣(きぬ)着せぬ物言いだ。初入閣と引き換えに発言にブレが出れば、政権のアキレスけんになる可能性もあり「もろ刃の剣」といわれた河野氏の初入閣は、改造内閣船出早々、早速、波紋を広げた。
野党は今後、国会審議で河野氏を追及する。民主党の岡田克也代表は「これまでのはっきりした発言と整合性が問われる。内閣の一員としてどう折り合いを付けていくか、よく見ていきたい」と、けん制した。(日刊スポーツ2015年10月9日)
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『原発と日本はこうなる』(講談社2011年)

河野は、以前から原発に依存する危険性を、自民党にいながらして訴えていた。

J-CASTはこう伝える。
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脱原発派の河野氏は、九州電力川内原発1号機の再稼働についても批判的だった。14年7月のブログでは、「再稼働する前に、使用済み核燃料とどう向き合うか、国民を巻き込んでしっかり議論するべき」だとして「核のゴミには目をつぶり、やみくもに再稼働しようというのは無責任です」と主張していた。
だが、実際には放射性廃棄物に関する議論は深まらないまま、川内原発1号機は15年8月に再稼働。9月には営業運転に移行した。
こういった主張が書かれた河野氏のブログは入閣が決まった10月7日には「メンテナンス中」になり、過去の書き込みは削除されてしまった。
もちろん、こういった過去の発言との整合性については記者会見でも問われることになる。河野氏は、安倍首相が2012年自民党総裁選で、「長期的には原子力への依存度を下げる」と打ち出していたことを理由に、「ベクトルとしては同じ方向を向いていると思っている」と苦しい釈明をした。
「今までは外から言っているだけだったが、今度は政府内の議論に参加できるようになった。政府内の議論で、しっかり言うべきところは言っていくと思っているが、政府の一員である以上、決まったことについては、それを誠実に実行するということだと思う」などと説明した。記者はブログの記事が見られなくなった理由も質問していたが、河野氏は直接答えなかった。(J-CASTニュース2015年10月8日)
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週刊誌の政治記者は言う。
「行革担当大臣として、かつての主張をキープすることはできた。つまり『核のゴミが解決されない限り、原発は再稼働するべきではない』という主張だ。反原発の方向へ、原子力保安員や経済産業省にも意見ができる立ち位置だからだ。ところが閣僚入りで慌ててブログを閉じているということは、エネルギー関連の利権を官邸にちらつかせられた、もしくは『脱原発』を封印するかわりに、なんらかの将来的なポストを約束した、と見られてもしかたがない」

『「原子力ムラ」を超えて』共著(NHK出版 2011年)

「河野太郎の『変節』については、支持者からも絶望の声が上がっています。地元の神奈川の反原発活動家もあきれた。権力の中枢に入ると、急に『原発推進』が正しいことになってしまうのだろうか。それとも安倍が反乱分子をとりいれて『リベラルさ』を見せているのだろうか。いずれにせよ、安倍政権の傲慢さがちらつく人事だね。閣僚入りさせたからブログを閉じろと銘じたのは、菅官房長官だという話も出てる」(同)

ともあれ、そこまで変節するなら河野よ、原子力ムラを切り捨てたかつての著書 『「原子力ムラ」を超えて―ポスト福島のエネルギー政策』 (NHKブックス/共著)はどうする? 今すぐ、「変節してすみません」と言いつつ全国の書店をまわって丁寧に頭を下げて回収せよ。
あんたの脱原発は、しょせん大衆受けを狙った、時局によるパフォーマンスだ。ちがうというなら、脱原発の政策を、首相に突きつけろ、大衆を舐めるなかれ! だ。

※河野太郎公式HP=http://www.taro.org/

(小林俊之)

◎山口組が分裂した本当の理由──マスコミが注目する「内部抗争」の真実
◎「工藤會壊滅ありき」で福岡県警が強引に人権を無視し続ける邪な理由
◎警察が「ぼったくり」を刑事事件化したことでヤクザのさらなる地下潜行が始まる

独裁者を撃つ反骨の砦『紙の爆弾』11月号絶賛発売中!

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号!

「貫くべき信念があります」河野太郎HP

まさに罪と×(バツ)だろう。
日刊スポーツを見ていて、頭にきた。血液が沸騰し、体温が40度以上になりそうだ。

こんな記事だ。タイトルは「河野太郎氏、原発批判封印 入閣した途端ブログ閉鎖」
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「脱原発」は封印か─。第3次安倍改造内閣で初入閣した河野太郎・行革担当相が自身のホームページ(HP)で公開していたブログ「ごまめの歯ぎしり」や「主張・政策」などの項目が8日までに、閲覧できない状態になった。
「メンテナンス中」と書かれ、これまで公開してきた過去記事などは読めない。河野氏は一貫して脱原発を訴え、安倍政権の原発政策を批判。先月3日のブログでは、自身が共同代表を務める「原発ゼロの会」の活動も紹介した。閣僚となり、持論と政府の政策が「閣内不一致」と批判される可能性もあり、一時的に「封印」した可能性がある。
7日から閲覧できなかったブログは8日深夜、更新され、「入閣に当たり」と題した文章が掲載された。
「これまでは政府の外から自らの主張を訴えるだけでしたが(略)政府の中で主張を訴えることができるようになった」とした上で、「私のすべての主張がそのまま政府の政策になるわけではないが、1つ1つ、実現に向けて努力をしていく」と釈明。「政府の一員になる以上、政府の外に向かっては、政府の政策を擁護していく」と、持論の「封印」に理解を求めた。
ただ、河野氏の持ち味は歯に衣(きぬ)着せぬ物言いだ。初入閣と引き換えに発言にブレが出れば、政権のアキレスけんになる可能性もあり「もろ刃の剣」といわれた河野氏の初入閣は、改造内閣船出早々、早速、波紋を広げた。
野党は今後、国会審議で河野氏を追及する。民主党の岡田克也代表は「これまでのはっきりした発言と整合性が問われる。内閣の一員としてどう折り合いを付けていくか、よく見ていきたい」と、けん制した。(日刊スポーツ2015年10月9日)
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『原発と日本はこうなる』(講談社2011年)

河野は、以前から原発に依存する危険性を、自民党にいながらして訴えていた。

J-CASTはこう伝える。
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脱原発派の河野氏は、九州電力川内原発1号機の再稼働についても批判的だった。14年7月のブログでは、「再稼働する前に、使用済み核燃料とどう向き合うか、国民を巻き込んでしっかり議論するべき」だとして「核のゴミには目をつぶり、やみくもに再稼働しようというのは無責任です」と主張していた。
だが、実際には放射性廃棄物に関する議論は深まらないまま、川内原発1号機は15年8月に再稼働。9月には営業運転に移行した。
こういった主張が書かれた河野氏のブログは入閣が決まった10月7日には「メンテナンス中」になり、過去の書き込みは削除されてしまった。
もちろん、こういった過去の発言との整合性については記者会見でも問われることになる。河野氏は、安倍首相が2012年自民党総裁選で、「長期的には原子力への依存度を下げる」と打ち出していたことを理由に、「ベクトルとしては同じ方向を向いていると思っている」と苦しい釈明をした。
「今までは外から言っているだけだったが、今度は政府内の議論に参加できるようになった。政府内の議論で、しっかり言うべきところは言っていくと思っているが、政府の一員である以上、決まったことについては、それを誠実に実行するということだと思う」などと説明した。記者はブログの記事が見られなくなった理由も質問していたが、河野氏は直接答えなかった。(J-CASTニュース2015年10月8日)
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週刊誌の政治記者は言う。
「行革担当大臣として、かつての主張をキープすることはできた。つまり『核のゴミが解決されない限り、原発は再稼働するべきではない』という主張だ。反原発の方向へ、原子力保安員や経済産業省にも意見ができる立ち位置だからだ。ところが閣僚入りで慌ててブログを閉じているということは、エネルギー関連の利権を官邸にちらつかせられた、もしくは『脱原発』を封印するかわりに、なんらかの将来的なポストを約束した、と見られてもしかたがない」

『「原子力ムラ」を超えて』共著(NHK出版 2011年)

「河野太郎の『変節』については、支持者からも絶望の声が上がっています。地元の神奈川の反原発活動家もあきれた。権力の中枢に入ると、急に『原発推進』が正しいことになってしまうのだろうか。それとも安倍が反乱分子をとりいれて『リベラルさ』を見せているのだろうか。いずれにせよ、安倍政権の傲慢さがちらつく人事だね。閣僚入りさせたからブログを閉じろと銘じたのは、菅官房長官だという話も出てる」(同)

ともあれ、そこまで変節するなら河野よ、原子力ムラを切り捨てたかつての著書 『「原子力ムラ」を超えて―ポスト福島のエネルギー政策』 (NHKブックス/共著)はどうする? 今すぐ、「変節してすみません」と言いつつ全国の書店をまわって丁寧に頭を下げて回収せよ。
あんたの脱原発は、しょせん大衆受けを狙った、時局によるパフォーマンスだ。ちがうというなら、脱原発の政策を、首相に突きつけろ、大衆を舐めるなかれ! だ。

※河野太郎公式HP=http://www.taro.org/

(小林俊之)

◎山口組が分裂した本当の理由──マスコミが注目する「内部抗争」の真実
◎「工藤會壊滅ありき」で福岡県警が強引に人権を無視し続ける邪な理由
◎警察が「ぼったくり」を刑事事件化したことでヤクザのさらなる地下潜行が始まる

独裁者を撃つ反骨の砦『紙の爆弾』11月号絶賛発売中!

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号!

すっかり秋真っ盛り。TPPは妥結、23人目のノーベル賞受賞者誕生、ラグビーはW杯で未曾有の2勝、阪神は終盤で例年通り凋落と目出度いのやら、怪しいのやら見極めにくい日替わりの新聞の見出しは横目で眺めていればよい。

今、あまり知られてはいないかもしれないけれども、書店では1つの「事件」が進行している。何を隠そう、鹿砦社が全力を傾注し季刊で発行している『NO NUKES voice』5号が俄然注目を浴び読者が拡大しているのだ。

例えば、さる9月23日代々木公園で「さようなら原発 さようなら戦争全国集会」が数万人の結集で行われたが、鹿砦社は盟友「たんぽぽ舎」ブースを拠点に『NO NUKES voice』宣伝チラシ配り闘争を貫徹した。その数1500枚。集会参加者のほとんどが快く受け取って下さり、「知ってますよ!買ってるよ」との声も多数頂いた。

◆デモの先頭で横断幕を持った板坂氏と松岡社長が渋谷の街を練り歩く!

松岡社長以下鹿砦社の街宣行動はチラシ配り闘争貫徹で勝利を見たのだが、状況はそれだけでは許してはくれなかった。なんとデモのほとんど先頭で横断幕を持って歩いてくれとの要請が!

勿論デモ程度に怯えるヤワな我々ではない。しかも何故か「あの」板坂剛氏が赤い心に赤いシャツを纏い隊列に加るのだという。板坂氏はデモ開始前に「渋谷で大暴動を引き起こす!」と不敵な宣言を小声で発する。皇室ポルノ事件で『噂の真相』を震撼させて以来、この人行くところにはなにかが起きる。果たしてどんなデモになるのだろうか・・・。



(渋谷は大混乱に陥った。数万の人民がデモ隊に合流し「安倍打倒」を連呼し、スクランブル交差点では渦巻きデモが唸りをあげ、渋谷界隈は完全な「解放区」となった)

という夢を見たが、どこまでが事実でどこからが妄想か区別がつかない。そうだ写真が残っている。どうやら「渋谷大暴動」は夢の中だけだったようだ。デモは成功裏に無事終了した。しかしデモの先頭で横断幕を持つ松岡社長の姿に違和感を覚えるのは私だけであろうか(これって彼の言う『焼香デモ』じゃないの・・・?)。

◆沖縄の書店では岩波『世界』の横に『NO NUKES voice』が並べられていた!

しかしもう一つの写真がある。読者から提供を受けたこの写真は、先月沖縄の大手書店で撮影されたものだ。

よく見てほしい。岩波の『世界』の横に『NO NUKES voice』が並べられている。この事実に「ヤマトンチュ」は震撼しなければならない。反原発の視座から「福島―沖縄犠牲のシステム」を特集した同号が、このように闘いの最前線、沖縄で「世界」の隣に平積みされているのだ。私は「『世界』の横に並んでるぞ!」と浮かれているのではない。戦いにおいて「権威」など何の役にも立ちはしない。最前線に位置する人びとが持ち合わせる繊細な感性こそが本質を射抜くのだ。それを証明しているのが沖縄における『NO NUKES voice』5号に向けられる視線である。

反原発を語るにあたり、反戦争、反差別は当然すぎる前提であって、それらを排除したいわゆる「シングルイシュー」的取り組みなど何の力も持ちえないことは、賢明な読者諸氏には語るまでもないだろう。

単視座に陥ることなく、そして「タブーなき」視点から『NO NUKES voice』は問いを、戦線拡大を訴え続ける。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎安保法採決直後に若者弾圧!ハンスト学生への「不当ガサ入れ」現場報告
◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる
◎橋下「維新の党」離党の茶番──マスコミが取り上げなければ橋下は終わる

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』11月号本日7日発売です!

「大阪都構想断念」もウソだった橋下徹「引退撤回」の悪夢
「裸の王様」安倍晋三!安保法成立でさらに高まる批判
環境省の犯罪を黙認 福島・放射性廃棄物施設で「最悪の判決」
「原発稼働ゼロ」を取り戻す!川内原発ゲート前で菅直人元首相が訴え
山口組分裂の衝撃─その背景と来たる「ヤマ場」
など、
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するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号!

 

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号が8月25日発売開始!

安倍首相が体調不良を原因として辞任するのは、もはや永田町界隈では常識だ。「週刊文春」で報じられた通り、安倍は東京ステーションホテルで吐血しており、この報道後、7月末にも吐血したようだ。「今度の吐血は、吐瀉物が半分で血液が半分。さすがに9月の総裁選までもつかどうか微妙になってきた」という全国紙記者の声も聞いた。

自民党が描くシナリオとはどんなものか。まず、現状では病状がどうあれ、病気を隠して9月に安倍が総裁選に出るのは、規定路線だ。「無投票だと『独裁だ』などと世間がうるさいから、賑やかしで野田聖子あたりを候補として出すのでしょうが、安倍が再選するのはもはや確定的ですよ」(全国紙政治部記者)

そこで、ここでは安倍が「もはや辞任しなければならないほど病状が悪い」としよう。自民党の複数の議員が「もう安倍は体がもたない」と言っているからだ。安倍は、当選して2ヶ月くらいは意地で首相をやるが、「体調不良」を理由に辞任、誰か息がかかった候補を推す「フィクサー」となるだろう。政局については、またご報告する。

◆次期総理が決断を迫られる「福島原発事故の核廃棄物処分」

さて、「原発問題」にとって「次の総理」の決定は大問題だ。まずは核廃棄物の問題。時事通信はこう伝える。

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地域振興の具体策、国に要請へ=指定廃棄物処理で―福島知事 8月23日付時事通信
東京電力福島第1原発事故で発生した福島県内の放射性物質を含む指定廃棄物を、民間の処分場(同県富岡町)で最終処分する計画をめぐり、同県の内堀雅雄知事は23日、県庁で地元の富岡、搬入路がある楢葉の両町長らと会談し、処分場の追加安全確保策や地域振興策の具体案などを提示するよう、国に要請する方針を決めた。月内にも政府に申し入れる。? 具体的には、(1)地元と結ぶ安全協定の内容(2)住民の不安緩和策(3)放射線量が低い地域に住宅などを集中させる復興拠点や、都市基盤の整備方針(4)地域振興のための交付金の規模―などを示すよう求める方針。? 内堀知事は会談後、記者団に「申し入れは計画受け入れを前提にしたものではない」と強調した。
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この富岡町では、住民たちと議論を尽くしていない。それだけでなく、「川内原発」の核廃棄物の処理の場所すら決まっていなく、固定廃棄物は敷地内の貯蔵庫にあるとされる。なお、低レベル放射性廃棄物(LLW)の処分は青森の低レベル放射性廃棄物埋設センターに集中して貯蔵することとしている。だが、これらの「放射性廃棄物」は安全なのだろうか。

たとえば火山噴火とリンクして廃棄物になんらかの「化学変化」という名の「事故」があったらどうするつもりなのか。青森とて、中間処理施設であり、最終処分場ではない。フィンランドの地下最終核処分場「オンカロ」のように、10万年後の人類に責任を押しつけるようなやりかたを、日本人はとれない。地震大国だから地下が危険に満ちているからだ。

◆不可欠なゼロベースでの「エネルギーミックス」再考

さあて、「次の総理」が、もうゼロベースから考えていただきたいのが、「エネルギーミックス」の問題だ。

ある番組でノー天気な女性ジャーナリストが「この夏がこんなに暑いのは火力発電の比率が多いからだ。火力発電に切り替えても、火力発電には火力発電の危うさがある」とコメントしていた。案外、こういう厚顔無恥な人は多いのではないだろうか。火力には確かに問題はあるだろう。だが、そうしたコメントには「原発に比べると」という枕詞が欠落している。
2030年度には、原発を10~11%に下げると経済産業省はアナウンスしている。(http://www.meti.go.jp/press/2015/07/20150716004/20150716004_2.pdf

経済産業省よ! いいか、原発をすぐにゼロにせよ。

放射能で健康になった人がいるのだろうか。原発の放射能汚染で不健康になった人はいるが。

そして今、脱原発の問題は、「前の内閣がそうしたから」として議論がまた棚上げになるのだろうか。

「次の首相」にもの申す。すぐに原発をやめて、原発の輸出もストップせよ。
あなたは、放射能だらけのフィンランドの「オンカロ」で子供を育てられるだろうか。棚あげにされるであろう原発問題には、当然、僕から見て3つめの問題「原発をなくしたら経済をどうする」という問題が残っていると思うが、これについては、また別の回でレポートしよう。

(小林俊之)

◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
◎731部隊を隠蔽し続ける米日の密約──近藤昭二さん講演報告
◎警察が「ぼったくり」を刑事事件化したことでヤクザのさらなる地下潜行が始まる
◎「工藤會壊滅ありき」で福岡県警が強引に人権を無視し続ける邪な理由

『NO NUKES voice』第5号amazon.co.jpでも発売中!

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号8月25日発売!

8月24日午前0時50分頃、相模原市の米軍関連施設「相模総合補給廠」で起きた爆発火災事故──。事故直後の報道によれば、「米軍側の規制のため警察や消防は出火現場に近づけず」現場近くに消防車と救急車が計13台が出動したものの放水活動さえできなかったという。その後の経過情報に関しても、24日13時時点では詳細な情報が見当たらない。


◎[参考動画]相模原市米軍基地爆発(2015年8月24日mo si氏公開)


◎[参考動画]相模原・米陸軍総合補給廠で爆発火災(神奈川新聞@カナロコ2015年08月24日公開)

そこで相模原市消防署へ電話取材を行った。同消防署総務課の吉平(よしひら)氏が対応をしてくれた。

・怪我人はいないか
・相模原消防署による消火活動は行われたのか
・鎮火したか
・事故の検証は消防や警察が行うのか

を尋ねた。吉平氏によると「怪我人の報告は入っていない。詳細はわからないが相模原消防署による消火活動は行われた。現在は鎮火したと思われる。出火原因の検証などは火災現場が米軍敷地内なので、消防・警察ではなく米軍が行うことになる」そうだ。

◆沖縄であろうと首都圏であろうと、米軍基地内に手出しができない日本政府

196ヘクタールという広い敷地ながら、相模原市の住宅街に隣接する場所に位置する米軍施設内での火災(爆発?)にしては、あまりにも情報や報道が少なすぎる。そして周辺住民は不安で不安で仕方がないのではないだろうか。原因が公表されなければ、今後また同様な、いやそれ以上の火災や爆発が起こるのではないか、と心配になるのは自然な心理だ。(2015年8月24日付朝日新聞

事故原因の検証や究明が日本の行政機関によって行われないことは、相模原消防署に電話取材する前から解りきっていたが、敢えて質問をぶつけてみた。沖縄であろうが、本州であろうが米軍基地は米軍基地。その敷地内で火災や事故、爆発や核兵器の誤爆があっても、日本政府は何の手出しも出来はしないし、多くの事実が隠される。

◆日本の私有地でも米軍ヘリが墜落した現場を日本の警察は捜査できない

基地の中だけではない。2004年8月13日沖縄国際大学という明白な日本の私有地に米軍ヘリが墜落した時でさえ、初期消火以外、日本の警察は捜査に手を出す事すら許されなかった。(2015年8月14日付琉球新報

世の関心は、辺野古の基地建設問題だけに関心が集中しがちな傾向が見られる。相模原米軍基地爆発事件が示すことは、言わずもがな「米軍基地内は日本の治外法権」であるばかりでなく、周辺住民に危険が及ぶ可能性がある事故が発生しても、その実態や情報すら、日本の行政機関(いわんやマスメディア)は掴むことが出来ないという現実だ。

こういった米国と日本の関係を「主従関係」という。

日本政府は米国を「同盟関係」の国だというが、それは明らかな誤りだ。米国内で米国行政機関が強制的に立ち入ることができない「日本政府」が占有する場所は、日本大使館と日本領事館だけだ。日本は「軍隊」は持っていない(防衛省見解)から米国に日本軍基地が存在する根拠はないが、「対等な日米関係」というならば、この島国が差し出しているのと同等、もしくは等価の土地提供を日本政府は米国に行うべきだ。「対等」とはそういう実践があって初めて使える言葉だろう。しかしそのような要求は過去になされた実績はないし、未来においてもほぼ可能性はゼロに近いだろう。

◆最も身近な「戦争」の破片は米軍基地の中に眠っている

米軍基地などこの島国のどこにも必要ない。

「集団的自衛権反対」、「戦争推進法案反対」、「戦争反対」であれば、その延長戦上に「日米安保破棄」が自然に浮かび上がって来るはずだ。最も身近な「戦争」の破片は米軍基地の中に眠っている。

嘉手納基地やキャンプハンセンなど無数の基地を抱える沖縄。かつては「基地がないと経済が成り立たない」という理屈が人々を押さえつけていたけれども、美しい海・自然という人間の手では創造することが出来ない貴重な天然資源が、観光業だけで充分沖縄が自立できることを証明し、今や「基地がなければ・・・」などと言う人はごく少数派となった。

◆基地も原発も「止めるメリット」は「存在を許すメリット」よりも大きい

やってみればわかる。やらないだけだが「原発廃炉」も全く構造は同じだ。

基地があることを認めていた人たちは「経済的」理由のみによって基地の存在を肯定していた。「経済的」なうまみが無くなれば、基地は騒音を毎日振りまき、航空機やヘリコプター落下の危険性をはらむ厄介者。そして米国が戦争を起こすたびにいつ標的にされてもおかしくない存在だ。これほど危険なものはない。ただの邪魔者だ。

原発だって「再稼働したら町が活性化した」というタクシー運転手のコメントなどを新聞は紹介しているけれども、彼らには福島第一原発事故が起こったことの記憶がないのだろうか。川内原発では早速の動作トラブルが起きている。事故が怖くないのか。いつまでも「経済」、「経済」と言っているうちに事故は必ずまた起こる。目の前のちょっとした「経済」と多額の補助金中毒になった人たちは住家を失う。

馬鹿げたことはもう止めよう。原発を廃炉にしたって誰もいなくなるわけではない。「廃炉作業」が待っている。「廃炉作業」は2,3ヵ月で終わるものではない。でも廃炉にすれば永遠に「原発事故の脅威」から抜け出すことが出来る。

基地も原発も同じだ。止められる。止めるメリットは存在するメリットと比較にならない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる
◎『火垂るの墓』から考える──住み慣れた街に戦火が襲い、家族を失うということ

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号8月25日発売!

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するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号8月25日発売!

酷暑は峠をこえたようですが、近い日本の将来を重大に左右する「安保関連法案」の審議が連日参議院で行われています。

また、さる11日には九州電力川内原発1号機が多くの人の反対にもかかわらず再稼働されてしましました。川内原発再稼働を待っていたように桜島周辺地下のマグマが地上に向かって動き出し、桜島には警戒情報レベル「4」が史上初めて出されました。桜島と川内原発の直線距離は50キロです。火山に詳しい専門家は「桜島で最大級の噴火が起こった場合、関西地方でも5センチ程度の火山灰が積もるかもしれない」と警告をしています。

はるかに離れた関西で5センチならば、至近距離の川内原発には一体どのくらいの火山灰が降り注ぐのでしょうか。また、川内原発では運転開始後、排水系統に異常が発生し、九州電力は出力を上げる予定を当初の計画から延期しています。

本当に原発は不安だらけです。

だから黙ってはいられない!

昨年鹿砦社が発刊した「NO NUKES voice」の第5号(創刊一周年記念特別号)が出来上がりました。

脱原発・反原発を中心に「採算を度外視しても」(編集長)も果たさなければならない役割を指向してきた同誌ですが、今号は間違いなく日本の言論界で脱原発・反原発の「エポックメーキング」となる怒涛の迫力です。

◆総力特集「福島―沖縄 犠牲のシステム」は渾身の6本立て50ページ!

第5号のテーマは「福島―沖縄犠牲のシステム」。野球に例えれば、真正面ど真ん中への直球ストレート連投です。変化球は一切ありません。本文は東大の高橋哲哉先生と映画監督三上智恵さんの対談で幕を開けますが、この「対談」の緊張感と真剣勝負は読んでいても火花が散っていて、読者までがやけどをしそうです。目指すゴールは同じでも少し考えの異なるお二人。その妥協なき「討論」(闘論)は、どなたにとっても一読の価値ありです。思想を戦わすということの「凄み」を体験できる貴重な対談です。

そして、日本を代表するフォトジャーナリスト広河隆一さんのインタビューが続きます。チェルノブイリに50回以上の取材を重ね、福島第一原発事故翌日には福島に入り、原発近くでの取材を行った広河さん。お話のテーマは「加害者は必ず被害を隠す」です。チェルノブイリ原発事故で起こった事と福島事故後に起こったこと、その対比から見えてくる意外な共通点と相違点は現地で長年取材を重ね、あわせて救援運動にも積極的に関わった広河さんにしか語りえない内容でしょう。広河さんの奥行きの深い視点は、チェルノブイリから福島、そして沖縄へと広がります。沖縄に保養施設「球美(くみ)の里」を設立した広河さんの熱意が誌面から発露され、その意思と行動は読者を圧倒するでしょう。

次いで共に元知事である沖縄の大田昌秀さんと福島の佐藤栄佐久さんによる超大物対談です。お互いが意外なほどに福島、沖縄とのかかわりがあったことがお話の中で明らかになります。和やかな語り口ながら日本政府と闘って沖縄を背負った大田さんと、政府の原発政策に苦言を呈したために「冤罪」同然の弾圧を受けた佐藤さんの対談は「NO NUKES voice」だから実現できた夢の対談です。


◎[参考動画]衆院安保法制特別委員会─沖縄地方参考人会での大田昌秀元沖縄県知事の意見陳述 (2015年7月6日那覇市:10分)


◎[参考動画]佐藤栄佐久元福島県知事講演「原発問題と地方の論理」(2015年5月10日和歌山市:92分)

巻頭3本の特集記事だけでも、誇張なく「永久保存版」の価値ありです。その他沖縄からの視点で震災に向き合う蟻塚亮二さん(精神科医)や逆に茨城県から沖縄に自主避難した久保田美奈穂さんのお話は沖縄と福島(福島事故)を交互の視点で見直すのに最上の教材でしょう。GE(ゼネラル・エレクトリック)社の技術者として福島第一原発の建設に関わった名嘉幸照さんは沖縄のご出身です。「二つの故郷原発技術者の『福島』『沖縄』」を語って頂いています。文字通り「福島―沖縄 犠牲のシステム」に翻弄されたご自身の一代記です。

◆原発推進〈戦犯〉直撃取材は八木誠=関西電力社長兼電事連会長!

そして鹿砦社といえば、名物直撃取材です。今回は八木誠=関西電力社長兼電事連会長が「ターゲット」です。果たして戦果は如何に?

◆小出裕章さんの最新講義録から全国各地の脱原発報告まで総力網羅!

更に贅沢なことに、今年3月で京都大学原子炉実験所を定年退職された小出裕章さんの登場です。退職後唯一非常勤講師を引き受けた関西大学で行われた講義の1回分、90分を全文掲載! 大学生を相手に、いつになく熱を込めて語る迫力満点の小出さん。終盤の衝撃的な内容は本誌でしか目にすることが出来ないでしょう。

他にも注目記事が満載です。福島事故の避難者加藤凛さん、第三次原発賠償関西訴原告の石塚路世さん、トルコ現地で原発反対運動を取材・研究した森山拓也さんの各報告は、ほとんどの読者には初めての目にする内容ではないでしょうか。

本誌常連の元博報堂の本間龍さん、納谷正基さんには引き続き思いを語って頂いています。こちらも重鎮、経産省前テント広場の淵上太郎さんはテントひろばの物語に加えて、国から提訴され争っている裁判を東京高裁口頭弁論陳述書の要旨を紹介しながら解説していただきました。その他全国各地の運動情報も満載。細かくは紹介しきれません。

総ページ数は176頁。これまでの「NO NUKES voice」と厚みが違います。質も量もです。今この内容の雑誌を出せる出版社があるでしょうか。宝島?無理です。岩波書店?無理です。週刊金曜日?無理です。だから鹿砦社がやるのです!

僭越ながら、今、脱原発・反原発ではこれ以上の内容はない!と鹿砦社は自信をもって世にその評価を委ねます。巻頭秋山理央さんの写真から、編集後記まで緊張感が途切れることがありません。

秋の気配が感じられるようになりましたが、熱の充満した「NO NUKES voice」5号(創刊1周年記念号)は文字通り「必読」です。今すぐ書店へ! (伊藤太郎)

『NO NUKES voice vol.5』──『紙の爆弾』2015年9月号増刊

2015年08月25日発売 定価680円[本体630円+税]
A5判/176ページ(巻頭カラー8ページ+本文168ページ)
NO WAR! ?NO NUKES!
戦後70年の2015年夏、するな戦争!止めろ再稼働!
戦後70年の夏を迎えた日本は、4年ぶりの原発再稼働と安保法案成立に抗う「新たな闘い」が始まった。
福島の復興、復旧も進まない中での原発再稼働、沖縄が日米両政府の意向に翻弄され続けての「戦争法案」
そこに共通するものとは何か。「犠牲のシステム」としての福島と沖縄が孕む根本的問題を暴く!
総力特集「福島─沖縄 犠牲のシステム」では高橋哲哉・東大教授と、
映画『標的の村』、『戦場ぬ止み』で話題の三上智恵監督による対談、
世界の最前線から真実を伝えるフォトジャーナリスト広河隆一さん(DAYS JAPAN)が語る原発事故の実態、
大田昌秀元沖縄県知事と佐藤栄佐久元福島県知事による基地、原発立地県の「闘う知事」対談をお届けします。
また、本誌特別取材班による八木誠関電社長への直撃ルポや、
原発とメディアの「不適切な関係」を暴き続ける作家・本間龍さんの連載といった“トガった”トピックや、
川内原発再稼働反対をはじめとした全国の最新運動情報も掲載!
世代、地域を超えて「新たな脱原発情報ネットワーク」の構築を試みる『NO NUKES voice』にご期待ください!

【主な目次】
《表紙・巻頭グラビア》ALL STOOD STILL Vol.5 『ローカルアイテム─プラカードと横断幕』
秋山理央(フォトジャーナリスト)

《総力特集》福島─沖縄 犠牲のシステム

フクシマ─オキナワ「犠牲のシステム」を超える加害責任の共有
高橋哲哉さん(東大教授)vs三上智恵さん(映画監督)

加害者は必ず被害を隠す 原発事故の実態──チェルノブイリから福島へ
広河隆一さん(フォトジャーナリスト)

基地、原発─「闘う知事」は語る
大田昌秀さん(元沖縄県知事)vs佐藤栄佐久さん(元福島県知事)

《講義録》核と原子力、そして人間の幸福──科学者の目、科学者の願い
小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)

《各地の原発再稼働阻止活動情報》
東京での九電東京支社抗議をはじめ、川内、高浜、伊方、志賀、玄海の各原発をめぐる再稼働阻止運動レポート

《全国からのレポート》
本間龍さん(作家) 原発プロパガンダとは何か? 第三回 福島民報・福島民友(二)
山崎久隆さん(たんぽぽ舎) 巨大なリスクを抱えたままの福島第一原発の止まらない汚染
淵上太郎さん(経産省前テントひろば) 経産省前テントひろばの実態とは何か─東京高裁高等弁論陳述書要旨
松浦寛さん(FB憲法九条の会) 脱原発から護憲運動へ
首都圏反原発連合 MCAN activity now! 首都圏反原発連合中央放送誌面版
……and more!

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号が8月25日発売開始!

HIROSHIMA1945 - FUKUSHIMA2011

「いいかい遥(はるか)、さっきの質問は二度と人前でしちゃいけないよ。私達は色んな危険に囲まれているんだ。遥ももう少し大きくなれば解るだろう。だから解らないことは誰もいないところで父さんに小声で話しなさい」
私が娘にそう諭すと遥は「うん、わかった」と素直に忠告を受け入れた。

遥の質問はこうだった。
「ねえねえお父さん。なんで私達は日本語を知っているの? 友達と話すときはいつもスペイン語なのに家に帰るとどうして日本語なの? 日本ってもうないんでしょ? だれも住めなくなったって学校で教わったけど……」

遥は買い物客で賑わうエスペラント通りの市場の中で突然私に日本語で問いかけてきた。
「黙りなさい。スペイン語で話すんだ」と私は遥の耳元で呟いた。10歳の娘に私達が住んでいた国の話をする事は親の義務のようにも感じるが、難民として制限の多い生活をしている立場を理解するのに若すぎる。いずれ物事が分かるような年齢に達したら全てを話そうと思う。妻もそれに対して異論はないようだ。

◆2016年「JAPAN CHAOS」──悪夢の連鎖が始まった

KAGOSHIMA2016

2016年、山口県の岩国基地に配備されていたオスプレイが鹿児島の川内原発上空で操縦不能に陥り稼働中の原発へ墜落したのが事の始まりだった。悪夢の連鎖と言えばそうとしか言えないが、今となっては後悔すらが無意味だ。事故の前年に戦争へ向けて法整備を完了していた日本は川内原発へのオスプレイ墜落事故直後に、米国がホルムズ海峡にイランが多量の機雷をばら撒いたことを理由に日本への機雷撤去作戦への協力を要請する。「集団的自衛権」で逃げ場を塞がれていた日本政府は原発事故の対応よりも米国の要請に応じることを優先させた。その結果2011年の福島第一原発で起こった事故と比較が出来ない大惨事が発生し、急性放射線障害により九州では事故から2日以内に3万人が犠牲となった。

その後も暴走する原発事故へ有効な対策は皆無で、被害は四国、山陰、山陽から関西までに広がった。西日本からの国外避難は、一切の航空便が日本への乗り入れを停止したことにより不可能となった。事故後1週間で犠牲者の数は確認できているだけで20万人に上ったと言われている。

その事故の最中、米国からホルムズ海峡での機雷除去作戦の要請に日本政府は諾々と従った。海上自衛隊、航空自衛隊のみならず海上保安庁の巡視艇までがペルシャ湾へ派遣された。

日本国内の行政機関は実質的に破綻を来たしていたと言って過言ではないだろう。マスコミも同様で大手新聞社が朝刊の発行を行えないという第二次大戦中も例のないところまで混乱は極まっていた。私はその時、もうこの国はお終いだから逃げなければと決断していた。

日本政府が実質的に機能停止に陥った、という確定な情報が伝わってきたのは複数の海外メディアがインターネットを通じて発信したニュースによってだった。

私は妻と娘の遥とともに新潟に向かった。停泊していたロシアの貨物船の船長に多額の袖の下を渡し、取り敢えずナホトカへ向かった。貨物船の中には私たちのように日本から避難する人達があふれていて誰もが先を案じていた。

ナホトカに到着するとロシアの入国管理局は私達「避難者」の受け入れをすんなりとは認めなかった。難民申請も持たずにいきなり押しかけて来た避難民を受け入れなければならない国際法上の義務がロシアにあるわけではないから、その態度は仕方ないものであったといえる。結局ここでも入管当局と個別折衝で袖の下を渡す事ができた人達だけが入国を認められた。そうでなかった人たちの安否は判らない。

私はロシアに長期滞在するつもりはなかった。ロシア語は話せないし、この国には不安定要素が多すぎると感じていた。急ぎモスクワ行きの航空機に飛び乗りモスクワから中米の某国に向かった。この国は幸い私達を難民として受け入れてくれた。第二次大戦で日本と戦火を交えていなかったことが幸いしたのかもしれない。

今日、2024年8月15日は日本がまだあった頃、「終戦記念日」と言われた日だった。今私達が暮らすこの国は第二次大戦に参戦していなかったので、取り立てて8月15日が話題になることはない。

2016年、1億2千万近い人間が僅か数週間で放射能と戦争により国家を破滅させた「JAPAN CHAOS」は近代史の中でもまだ評価が定まっていない。私の心の中でも同様だ。遥には物心がついたら説明するとは言ったものの、それが果たせる自信はない。

◆2024年8月15日──自ら国を破滅させた愚かな民として他国で生きる

ここへ難民として住み着いて8年になる。日本を出た2016年、遥は2歳だった。家の中では日本語を使っているが、日常生活ではスペイン語だけで通している。私の家族のようにこの国へ逃れてきた日本からの難民は少なくない。しかし彼らの中には「日本への帰還、日本政府の再建」等と言った政治的行動に走るグループがいて、それはこの国の政府からは「厄介者」と危険視されている。

また、決して豊かとはいえない経済状況が続くこの国の国民は私達難民に政府から与えられる僅かばかりの「生活援助」にも不満を持っている。だから私は妻や娘に「家の外では『日本』のことは決して話題にしないように、政治的な話には関わらないように」事あるごとに言い聞かせている。私達は祖国を失った難民なのだ。しかも侵略や他国の攻撃により祖国を失ったわけではない。政権の愚策により、2度と戻れない猛烈な放射能汚染を広め、無責任な政治意識が何の利益も産まない好戦国=米国の言いなりとなり。こともあろうか原発事故の対策を放棄して米国の作戦に国力を傾注してしまった、救いがたい愚かな民族だ。

世界中のあちこちに散らばる日本系難民の苦悩はこれから果てることがないだろう。だから本音を言えば娘の遥には「日本を忘れなさい」と語ろうかとも思案している。

幸いこの国では肌の色や出身による差別は少ない。でも子供たちの間にも「日本」と言う国がどうして破滅したのかへの純粋な興味はある。遥と同じクラスで成績が優秀なフリオやフェルナンデスは遥には同情してくれているという。でも少し意地悪なメンドーサやイザベラにはからかわれることがあるらしい。

仕方ない。難民はそれらを背負って生きなければならない。クルドやパレスチナと我々は違う。自ら国を破滅させた愚かな難民なのだから。でも遥や子供が責めを負わなければならない道理はない。弁解する資格すらない私たちは贖えない罪を死ぬまで背負わねばならない。

あれだけ明確な予兆が示されていたのに、それを食い止めることができなかった。あの時代の空疎感。生物種としての衰退がこの結果を招いたのか。これから年を重ねるごとに私の心がどう変化するのか、それすら想像がつかない。

日曜日(16日)には教会に礼拝に行かなければならない。この国ではカソリックとして振る舞うことが身の安全にもつながる。私も妻も礼拝は護身術でしかないが、遥には礼拝に通うことが自然な行為になってきたようだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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戦後70年を独裁者「退陣」の年へ!話題の『紙の爆弾』9月号発売中!

 

「DAYS JAPAN」と言う月刊誌をご存知の方も多いであろう。
今月号の特集は「福島の小児甲状腺異常多発の発表」だ。

「DAYS JAPAN」2015年7月号

悲しいニュースだが直視を避けられない現実が詳細に報告されている。本号は発売直後よりアマゾンをはじめとするネット上の図書販売サイトでは完売となり、書店でも残部僅かのようだが、増刷されるとのことであるのでまだご覧になっていない方にはご購読を強くお勧めする。

「DAYS JAPAN」はかつて講談社が発行してたが休刊となり、2004年にフォトジャーナリストの広河隆一氏が会社を立ち上げ編集長に就任し復刊した。表紙の右下には発刊以来毎号「一枚の写真が国家を動かすこともある」との腰の据わったメッセージが記されていたが、その場所には編集長が丸井春氏に代わった昨年からは「人々の意思が戦争を止める日が必ず来る」と、より明確な「宣言」が掲載されるようになった(「人々の意思が戦争を止める日が必ず来る」はそれ以前にも時に表紙に書かれていたメッセージではある)。

◆発刊以来、原発問題に深く取り組んできた「DAYS JAPAN」

この雑誌の最大の特徴は現在世界でも希少となった「フォトジャーナリズム」を実践し続けていることだ。同時にパレスチナ、イラク、中東など世界中の紛争地帯(それが脚光の当っている場所であろうがなかろうが)の問題を取り上げ、視覚に訴えると同時に卓越した視点から解説を行うことだ。国内問題も同様である。一貫して在野の立場から権力監視を続ける骨太の編集方針は「ジャーナリズム」の原点から全くぶれていない。

また同誌が主催する「DAYS国際フォトジャーナリズム大賞」は世界的に権威のある写真コンテストとなり、ここでの受賞者がピューリッツアー賞などを後に受賞することも珍しくない。実は世界のフォトジャーナリストから注目されている雑誌でもある。世界的な注目を浴びる雑誌はこの島国に「DAYS JAPAN」だけである。

「DAYS JAPAN」2015年7月号より

前述の通り今月号の特集は「福島の小児甲状腺異常多発の発表」である。同誌は発刊以来一貫して原発問題に深く取り組んでおり、2011年の1月号(大震災の2カ月前)特集は「浜岡原発爆発は防げるのか」だった。事故直前まで月刊誌でこれだけ原発問題に警鐘を鳴らしていた雑誌は他にはない。スリーマイル島やチェルノブイリで原発事故取材経験豊富な広河氏は福島事故発生後3日目には現地入りしている。そこで持参した放射線測定器がチェルノブイリでも経験したことのない高い値、針が振り切れる経験を初めてする。目前には何も知らない人々がマスクもつけずに危機感もなく往来している姿を見て、取材を止め高線量地帯へ向かう人々の車を止め引き返すように説得を始める。


◎[参考動画]「3・11メルトダウン 福島原発取材の現場から」Part2
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)綿井健陽氏2011年7月18日公開

◆「DAYS JAPAN」行動原理の体現者・広河隆一氏

「DAYS JAPAN」の行動原理はこの時の広河氏が体現している。ジャーナリストとして現地へ赴くがある時期「人間として」何をすべきかと感じた瞬間に彼らは「行動者」へと転身する。広河氏がレバノンの難民キャンプ取材から難民支援を始めて20余年が経つ。チェルノブイリ取材を50回ほど行っている広河氏は1991年に「チェルノブイリ子供基金」を設立し、保養施設「希望21」を各国のNGOと政府の協力により設立し、そこで保養を行った人の数は7万人を超えたという。

福島原発事故のわずか2か月後、早速保養所設立プロジェクトは動き出し、早くも翌年2012年7月には久米島に「球美の里」を設立し福島から子供達(親同伴の場合もあり)の受け入れを開始する。常人には想像できない発想と行動力は編集長が代わっても引き継がれている。

原発や被曝については「付け焼刃」ではなく長年の取材経験と人脈、知識と実践を持つこの雑誌に敵うものはないだろう。いや違った。「NO NUKES voice」ははるか後ろを走っているけれども志だけは負けたくないと編集長以下腹を固めている。
◎「DAYS JAPAN」Facebook
◎広河隆一氏のtwitter


◎[参考動画]DAYS JAPAN フォトジャーナリズム写真展 特別講演会「震災と原発問題」
2012年11月20日京都造形芸術大学 学校法人瓜生山学園公開

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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