斉藤和義が歌った通り「ずっとウソだった」ことが、福島第一原発の事故でバレた。それでもまだ、安全ですから原発を稼働させましょう、とウソを重ねて国民を騙そうとしている政治家がいるのだから、恐れ入る。
原発は安全だというウソをつき続けるために原発推進派は、世界中の詐欺師が束になってもかなわないほど、山のようなウソをついてきた。
そんなウソにもう騙されないために、放射能について基礎から学べるテキストとして最適なのが、落合栄一郎著『原爆と原発 ~放射能は生命と相容れない~』(鹿砦社)だ。
自然界にも放射能はある。
原発推進派がよく口にする言葉だ。確かに、自然界にも放射能はある。それは事実だ。
しかし、自然界に元からある放射性物質と、原爆や原発によって人工的に創りだされた放射性物質では、人体に及ぼす影響がまるで違う。
自然界で生じる放射線によっても、生体内に損傷は生じる。しかし、それを修復する手だてを生物は進化の過程で身につけてきている。
原爆や原発。核分裂によって、天然にはない、およそ200種類もの放射性物質が生まれる。そうした放射能に対しては、生体には修復の機能はないのだ。
自然界にも放射能はある、などということは、原発を是認する理由には少しもならないのだ。
本書では、実例も挙げられている。アメリカのワシントン州ハンフォードの大学に通っていた女子学生は1949年の秋から髪の毛が抜け始め、卒業時には完全に抜け落ち、鬘を着けるようになった。同じ部屋で暮らした同窓生は、障害児を産んだ。彼女自身は、2度流産した。ハンフォードは、原子爆弾作成のマンハッタン計画でプルトニウムの精製が行われた場所だ。
スリーマイルアイランド、ソ連カラウル、チェルノブイリ、と実例は並ぶ。
地球の温暖化を避けるために、二酸化炭素を出さない原発が必要だ。
これは、原発を推進する表看板とも言える、ウソだ。
これへの反論部分を、本書から引用しよう。
「発電部分は、たしかに温暖化ガス二酸化炭素を出さないが、その他の工程では電力を必要とし、それが化石燃料発電から供給されるので、現実には、原子力発電は、全体としてみるとかなりの量の二酸化炭素を放出する。その上、原子炉で発生する熱の3分の1から40%ぐらいしか、電気に変換されず、残りの3分の2ほどの熱は冷却水を加熱し、そして環境に捨てられる。すなわち、原子力発電所は、このように、直接的に環境を熱するのである」
本書では、原爆の開発過程から、原子力の「平和」利用としての原発までの流れを、俯瞰してみることができる。原爆も原発も、放射性物質を作り出し、故意と事故の違いはあるが、それを放出する。そして、放射能は、生命とは相容れないものなのだ。
今日本で行われている、再稼働か否かの議論は、あまりにも現実からかけはなれている。
再稼働などという選択肢は、あり得ないのだ。
すでに2万トン近くも作り出されてしまった、放射性物質である使用済み燃料をどうするのか。すべての原発をどうやって廃炉にするか。それを議論すべきなのである。
(FY)