獄中で12年を過ごし、作家になり、2005年に死亡した見沢知廉は、千葉刑務所で服役していた時に、歌手の克美しげると会ったという。
刑務所では囚人のリクリエーションとして歌合戦があるのだが、プライドがあるためか、克美しげるは一度として歌ったことがなかったようだ。

克美しげるは、殺人を犯した歌手だ。妻子ある身で、愛人であるホステスにキャンペーンに着いていきたいとせがまれ、うっとうしくなって殺した、という。思い出すたびに、もう少しどうにかならなかったものか、と思わせる事件だ。

『犯罪・事件を起こした芸能人 レコジャケ・厳選100 OTAKARAファイル』(鹿砦社)では、封印されていた、克美しげるの『エイトマン』のジャケットが見られる。
なんと、子どもに夢を与える『エイトマン』のアニメ主題歌を歌っていたのだ。
ジャケットの中で、克美しげるは躍るしぐさで両手を振り、右手をこちらに伸ばしている。
その手で、愛人を絞殺したわけだ。なんとも、感慨深いものがある。

殺人を犯した芸能人など克美しげるくらいかと思ったが、他にもいた。
『子連れ狼』で、子役として大五郎を演じた西川和孝が、長じて殺人を犯したのだ。

ロックバンド『アナーキー』のボーカル、逸見泰成は殺人未遂を犯している。新宿ロフトのパーティで、前妻が他の男といるのを見て、彼女を刃物で刺してしまったのだ。

そこへ行くと、内田裕也などは、ロッカーとしても加減を知っているな、と思わせる。
昨年はストーカーで逮捕されたが、1983年には文化包丁を片手にウドー音楽事務所に殴り込みをかけ、「なぜ外人ロック歌手ばかり呼ぶのだ!」と抗議、自ら110番通報して逮捕された。
掲げられているレコジャケは『長いお別れ』だが、その後、芸能界復帰している。あいつはやっぱりロッカー、と思わせつつ、芸能人生命を失わないギリギリの線で留めている感がある。薬物で捕まったこともあり、メチャクチャなエピソードはいっぱいあるが、意外と計算ができる人なのかも知れない。

布袋寅泰の暴行も、ロッカーっぽい。2007年、パンクロック歌手で芥川賞作家の町田康が布袋の別荘に遊びに来た際に、帰りに車中で音楽のことで口論になり、布袋が町田を殴り、全治2週間の怪我を負わせたのだ。掲げられているレコジャケは『わがままジュリエット』だが、わがままにもほどがあるだろう。

宮崎県知事になり、都知事に挑戦して落選。その後はバラエティ番組への出演も多くタレントに戻った感のある、そのまんま東。16歳の少女を雇っていた風俗店が摘発された際、彼女の客となっていたのが、そのまんま東だった。任意の事情聴取を受け、6カ月間芸能活動を自粛した。児童買春禁止法ができた後だったなら、逮捕もありえたし、その後の政界進出もなかったかも知れない。掲げられているレコジャケは、たけし軍団の『BON・BON・BON』で、そのまんま東の人生を現しているようだ。

その他、盗撮の田代まさし、強制わいせつの横山ノック、大麻取締法違反では、井上陽水、研ナオコ、上田正樹、その他の薬物違反では、勝新太郎、カルメン・マキ、カルーセル麻紀など、様々な芸能人が並ぶ。

今も獄中やら、消えていってしまった者、今も大活躍している者。やはり芸能人というのは、ただ者ではない。レコジャケを眺めながら、それぞれの人生に思いを馳せてみるのもいいだろう。

(FY)