「今、国税局は摘発に躍起になっています。名うてのOBも呼びもどされて、大企業の脱税を狙っています」
(全国紙国税担当記者)
空前の増税が始まる。消費税で医療や生活保障をまかなうというが、本気モードで摘発しないと国民に「何をやっているのか」と批判される国税はかなり本気だ。

このほど、74億円の申告漏れを発見したのは、大阪国税局。
大手電機メーカー「シャープ」(大阪市阿倍野区)が大阪国税局の税務調査を受け、海外子会社との取引をめぐり、平成23年3月期までの5年間で約74億円の申告漏れを指摘されていたと報道された。このうち約16億円については「取引価格を意図的に減額した」として、所得隠しと認定された。

ただ、過去の赤字と相殺された関係で、更正処分による追徴税額は、重加算税を含めて約5200万円にとどまった。同社はまもなく納付する方針という。
関係者によると、シャープは海外子会社に対して、液晶パネルなどの製品を通常よりも安い価格で販売するなどしていたという。
「シンガポールやインドの海外子会社を通じて、原価を安く仕入れていた。偽装経費計上の疑いです。長い内偵が身を結んだのでしょう」(国際会計士)

もし、国税局のOBの話を鵜呑みにした場合
「もう、告発が殺到しています。窓口は各地方の国税局に設置されていますが、詳細な資料が送られてくるので、8割は内部リークです。おそらくコンプライアンスの意識があがったのでしょう。ドラマ『トッカン』など税務徴収の物語の影響もゼロではないと思う」(税理士)

7月中旬には、大手音楽会社「ユニバーサルミュージックグループ」の日本法人(東京都港区)が東京国税局の税務調査を受け、平成22年12月期までの3年間で約90億円の申告漏れを指摘されていたと報道、関係者の度肝を抜いた。
「ユニバーサルミュージック」といえば、「少女時代」や「福山雅治」などのミュージックビデオ制作を手掛ける大手だ。
これは、組織再編に伴い、海外の関連企業から借り入れた資金の利子の支払いが、海外へ所得を移す「租税回避」にあたると判断したとみられる。
「ユニバーサルは、国税の調査のやりかたを批判しています。まっこうから争うことになるでしょう。 追徴税額は過少申告加算税を含めて約30億円。日本法人は国税不服審判所に審査請求しています」(ユニバーサル関係者)

この脱税スキームは、ものすごく複雑だ。
まず日本法人「ユニバーサルミュージック合同会社」が平成21年1月、「ユニバーサルミュージック株式会社」を吸収合併する際、関連するフランス企業から約800億円を借り入れた。合同会社はその後、このフランス企業に支払った利子約90億円を損金として計上。だが、東京国税局は再編には合理的理由が乏しく、利子の損金計上は海外への利益移転で、不当な租税回避にあたると認定したようだ。
「要するに、合併のどさくさで、経費をうまく溶かしたということ。よくある手口だね。合併されるほうもされるほうも、合算してしまえば、もともとの経費の出所はわからなくなる。よく調べたね」(租税コンサルタント)

580億円売り上げている会社が仕掛けた合併時の経費偽装。
「国税を舐めてはいけない。地獄の耳を持っている。彼らは国が認めたヤクザだ。国民から絞りとる、という点ではプロ中のプロだからな」(元税理士)
国税は警察と連携していることでも知られる。パイプは強烈で、一部であるが「盗聴しているのでは」という疑いが税務調査員にも向けられている。まさかとは思うが、世の中の経営者のみなさん、不適切な経費計上はすぐに彼ら、国税局が嗅ぎ付けると思ったほうがいい。なにしろ、国税局は「国が認めたヤクザ」なのだから。

(九頭龍家元)