フジテレビで「俳優たちがタモリの家に来る、という設定でダラダラとおしゃべりをするドラマ宣伝番組」である『タモリ中居ドラマ18名が超接近密着でマル秘関係性発覚…ガチでイイのに!?』(8日21時オンエア)を最初の1時間だけ見た。
今クール、フジテレビはドラマにかなりの力を入れている。

まず、最大に話題なのは『PRICELES$S~あるわけねぇだろ、んなもん!~』(月曜9時)で、木村拓哉が久しぶりに「月9」に帰ってきたということで話題を呼んでいる。
設定としては「一文なし」になるキムタクがどうやって再び会社員として復活するのか、というテーマのようだ。しかし至極残念だが木村拓哉は、俳優としては「すでに終わっている」感が否めない。

脚本家が声を潜めて言う。
「キムタクでドラマの脚本を書くのはきわめて難しいともっぱらの噂です。なにしろ色がない。オーソドックスな反応しかしない役はもっとも書きにくいのです。強いて言うなら、人間味が少し欠けた『ギフト』(97年)とか『空から降る一億の星(2002年)や『月の恋人』(2010年)などはとても光って見える。演出家も同じ意見だろうね」
今後、フジテレビはもし木村拓哉で高視聴率を狙うなら、人間味が欠けた役を配置するべきだ。

それにしてもドラマを見ていると「演出家」の力量不足が鼻につく。
宮部みゆきの傑作『パーフェクト・ブルー』(TBS)は第1回目を見たが説明が過多で原作を台無しにしている。 宮部みゆきが見たら、卒倒しそうなほどシナリオが下手である。
いつから、日本のドラマの質が落ちたのだろうか。かつては和田勉、久世光彦など名演出家が各テレビ局に配置され、安定した出来を誇っていた。

「それは仕方がないだろう。テレビ局はCMが激減してクライアントの意向を聞きすぎるようになったからね。もはやクライアントがキャスティングまで口を出してくる始末だ」
(広告代理店)
味のあるドラマが見たいと思う。今の演出家には辛口なことを言えば、もっと本を読み、キャラの造詣に役立てろといいたい。

ちなみに、ちょっと個人的に期待したいのは湊かなえ原作、長澤まさみの『高校入試』(土曜23時10分~、フジテレビ)、深田恭子主演の『TOKYOエアポート 東京空港官制保安部』(日曜21時間~、フジテレビ)だ。2本とも脚本を読んだが、かなりキャラがたっていた。おやおや、偶然フジテレビが揃ったか。

日本テレビはアメリカドラマの真似をしすぎで論ずるに値しない。
TBSは唯一、山下智久と香取慎吾が共演する『MONSTERS』(日曜21時、TBS)が気になるが、このほかのドラマはおそらく滑るだろう。

テレビ朝日は『相棒 eleven』(月曜21時、テレビ朝日)が、水谷豊の新相棒である成宮寛貴の演技にかかっているといっても言い過ぎではない。成宮がどうキャラを作り上げるか。才能ある役者だけに期待したい。

テレビ東京は、今年のドラマはさておき、NHKの来年の大河ドラマ『八重の桜』にこれみよがしにぶつける新春ワイド時代劇 「白虎隊」(仮)(2013年1月2日(水) 夕方5時から一挙7時間放送)が楽しみだ。度胸を買いたい。

NHKを忘れていたが、このところまったく見ていないので次回に論評したい。こうしてみると、ドラマばかり見ている小生。原稿が進まないわけだ(笑)。さあ仕事仕事。

(鈴木雅久)