「セクシャルバイオレットNo.1」などのヒット曲で知られるロック歌手・桑名正博さんが10月26日午前11時44分、全脳死による心停止のため大阪市内の病院で死去した。59歳だった。7月15日未明に大阪市内の自宅で、脳幹出血により倒れてから104日目。

「1日しかもたないと言われたが、104日も生きたことは奇跡です」と 長男でミュージシャンの美勇士は語る。稀代のロック・スターは、意識不明のまま壮絶な闘病を続けたが、奇跡は起こらなかった。30日の葬儀後は、大阪のメインストリート・御堂筋をリンカーン霊柩車で走る「御堂筋桑名パレード」を実施。派手に明るく、沿道のファンに別れを告げた。

元妻のアン・ルイス(アメリカに在住)といっしょに仲良くライブを行っていた光景も、目に焼き付いている。
逝去した夜、美勇士は名古屋から、父の亡きがらの眠る大阪市内の寺院に駆け付けた。アン・ルイスに報告すると絶句したという。
「生き様がそのまま歌になる、気骨のあるスターだったと思います」と知人は語る。
俳優としては、1980年に根津甚八、大竹しのぶと共演した『恋人たち』(TBS)での根津の不良の弟”ロク”役などで強い印象を残し、その他ドラマでは大阪弁をしゃべる気さくな役柄が多い。
コメンテーターやリポーターなど幅広い活躍を続けた

問題発言や行動も多々あった。
1977年の「芸能界大麻汚染事件」では、ブッダスティックと呼ばれる大麻を棒状にしたものを入手したとして、他5名とともに逮捕された。
1981年にも大麻不法所持で事情聴取を受けている。

『犯罪・事件を起こした芸能人 レコジャケ・厳選100 OTAKARAファイル』(鹿砦社)では、桑名は3度登場し、「サード・レディ」「セクシャルバイオレット No.1」「追跡ハートエイク」の3枚のレコードジャケットが所収されている。
他の芸能人はすべて1枚だけ。1回の犯罪で反省するか、消えていくからだ。
桑名には、芸能界の麻薬問題ではキングに近いという、不名誉な称号もあった。

そんな桑名だが、2000年に父親が急死すると、家業を継いだ。
ロックスターだった桑名が、港湾荷役、建設業、貸倉庫を営む社長となり、社長室では背広姿、現場には作業着にヘルメット姿で現れた。
借金だらけになっていた会社だったから、経営は楽ではなかった。
父親がせっかく作った会社だったから、と継いだのだ。
情に厚いところがあった。

稀代のロック・スターのご冥福を祈りたい。
彼のロックは、若い世代へと受け継がれていくことだろう。

(TK)