様々な、ヘンな専門家がいる。
放射能は体にいい、と言う薬剤師もいた。昔からの知り合いで、善意の人であることは確かだ。フクシマ差別をしたくない、福島の農産物を食べて応援したい、という気持ちからの言葉だとは分かる。
だが、脱原発の立場から専門家としての見解を明らかにしている、 京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏のことを「小出さんは原子炉の専門家だけど、放射能の専門家じゃない。私は薬剤師として放射能を扱っているから、放射能のことが分かる」と言うのだから、首を傾げてしまう。
学問の世界は細分化されている。確かに、原子炉の専門家と放射能の専門家は別だ。しかし、それを言えば、薬剤師ははもっと別だ。
薬剤師も放射能を扱うようだが、原子炉の専門家のほうがもっと放射能を扱っている。

話していると、彼女は小出氏の著作を一冊も読んでいないことが分かる。
低線量被曝の蓄積による身体のへの影響は、長年に渡る被爆者の追跡調査が必要だが、確定したデータはない。それは、放射能の専門家にとっても同じ事だ。
分からないからこそ慎重になるべきだ、というのが、小出氏の主張だ。

ちなみに筆者は、放射能汚染されているかどうか気にせず、福島の農産物も食べている。もう50代だし、放射能の影響はさほど受けないと思う。それに、原発のある社会を作ってしまった責任が、自分にはまったくない、とは言いきれないからだ。彼女も50代なのだから、どんどん食べたらいいだろう。

問題なのは、成長期の青少年、妊婦、妊娠可能な年齢の女性が、放射能汚染された食べ物を摂り、汚染された空気を吸うことだ。
今年8月には、福島県内の18歳以下の子供を対象に行っている検査で、約36%の子供の甲状腺にしこりなどが見つかった。9月には8万人に対する検査で1人、甲状腺がんの発症が確認された。通常、子どもの甲状腺がんの発症は100万人~500万人に1人である。

『タブーなき原発事故調書~超A級戦犯完全リスト』(鹿砦社)で、超A級戦犯の1人として取り上げた山下俊一が座長を務める福島県民健康管理調査の検討委員会で、オブザーバーの鈴木真一教授(福島県立医科大学)は「チェルノブイリ事故後の発症増加は最短で4年」などとして、福島第1原発事故との因果関係を否定した。
しかし、ベラルーシにおける甲状腺がんの症例数を見ると、チェルノブイリ事故の翌年から増え始めている。4年というのは激増し始める時期だ。
因果関係を否定する根拠にはならない。
純科学的に言えば、因果関係は分からない、と言うべきだ。分からないのだから、因果関係があることを疑って対処すべきだろう。

分かる分かる、と言い募る専門家ほどあてにならない、ということを、友人の薬剤師は示している。

(FY)