知人が本を出したことを、共通の友人によるフェイスブックへの書き込みで知る。
もちろん私とて、本を出したことを、いちいち知り合い全員に知らせるわけではない。
だがその知人からは、編集者を紹介して欲しいと頼まれ、実際に引き合わせたことがあるのだ。
書き手の多い月刊誌であるから、私自身が出した原稿も、2~3カ月待たされて載る、というのが、ごく普通である。
知人の場合は、企画段階でなかなか通らなかったが、「ダメならダメと言ってくださいね」「他社に持っていってもいいですか?」などと言ってくる。
同業者には、人を出版者に紹介することは絶対にしない、と決めている者も多いようだ。
なるほど、こういう面倒くさいことになるのか、と納得する。
知人が本を出したのは、私の紹介とは無関係だ。
だが、本を送ってくれるなり、知らせてくれたりしたら、面倒もむくわれるというものだが……。
私自身が人に紹介されて仕事が広がったことが多いので、自分でも、できるだけするようにしている。
取材をした女性カメラマンが、本を出したい、というので出版社に繋いだ。
そして、本の出版が決まった。
すると彼女は、「○○の資料が欲しい」「××のことを取材したいが、どうしたらいいか」などと、やたらと連絡してくる。その度に応じていた。
しばらくすると、「本の出版が実現した際には、どのくらいのお礼をすればよろしいのか、あらかじめ教えていただけると、ありがたいです」というメールが来る。
なるほど、どうせ仲介料を取るのなら使ってやろう、というつもりだったのだ。
「この世界、紹介したりされたりはお互い様なので、お礼などは考えなくていいですよ」と返す。
しばらくすると、彼女の関係者だという男性から、本の出版が決まった経緯を教えて欲しい、とメールが来た。
お礼は要らない、というので、かえって不審に思われたのだ。
女性の場合は、男性よりも大変だ。
「出版社を紹介してあげる」「本を出してあげる」などという甘言でデートに誘い出し、食事代を出させ、コースの最後はホテル、ということが、今の時代にもあるらしい。
いや今は、逆のケースもあるようだ。
女性のライターと会う時は、自分1人では行かない、必ず他の編集者を伴って行く、という男性編集者もいる。
本を出させようと、色仕掛けしてくる女性もいる、ということだ。
その女性は、原稿を書き上げてから、「よく考えたら、こんな本を出したら恥になるだけだと分かりました」と断ってきた。
しばらくして、「本を出さないと、ただのオバサン。やっぱり出したい」とブランデーを送ってきた。
またひっくり返ったら嫌なので、連絡はせずに放ってある。
よくよく人の紹介というのは面倒なものだが、もちろん、うまくいっている例も少なくない。
人と人を繋ぐのは一人前の大人の証と心得て、これからも、懲りずにやっていこうと思っている。
(FY)