新しい年を迎えて、新しい道を切り開こう! と張り切っている方々も多いだろう。
そんな時に目に飛び込んでくるのが、「資格を取ればバラ色の人生」「資格を取得して新たな未来をつかもう」といったキャッチコピーのテレビCMや新聞雑誌、電車の中吊り広告だ。
もちろん努力して資格を取ることは、いいことには違いない。
だがそこには、様々な落とし穴がある。
経験者の立場から、その内情を暴いたのが、須田美貴著『資格ビジネスに騙されないために読む本』(鹿砦社)だ。

資格を取りたいという動機は様々だ。
就職ができにくい、昨今。資格を取って正社員になりたい、という者もいる。
その逆に、社畜でいるのはもうたくさん、独立して自営したい、という者もいる。

きわめてまっとうな願望だ。
だが、いくら資格があっても、それに関する実務経験がなければ、就職にはほとんど関係がない。
会社員生活で媚びを売るのがいやだと思って資格を取ったのに、自営業は人脈を開くのが命。会社員時代よりも媚びを売らなければならない。
同書には、そのような事実が、豊富な実例とともに紹介されている。

驚くべきは、資格ビジネスの実態だ。
誰でも資格が取れるように宣伝しながら、実際に合格するのは、生徒の一部だ。
そうすると生徒は、続けて学校に通うことになる。
合格させないまま、生徒を引きつける力のある者が、学校にとっては、最もいい講師ということになる。

「生徒が全員合格したら、会社は潰れてしまう。不合格者がいるからやっていけるのだ」
同書の著者が勤務したことのある資格学校の校長の言葉だ。
全員が合格するような講座はやってはいけない、というのが、学校の方針なのだ。

合格した生徒には、開業講座というものが用意されている。
同書に詳しいが、これもまた、開業できないように講義が行われているわけだ。

なんとかして資格を取りたいと願っている方々は、必ず同書を手にし、資格ビジネスの実態を知った上で、成功を勝ちとってほしいものだ。
人間を捉える様々な魔力のうちの一つに、「資格」もある。
それに躍らされて食い物にされる者たちの実態は、自分で考えて行動することの大切さを教えてくれる。
「資格」を求めていない者にとっても、人間を知る上で必須の書である。

(FY)