誉田哲也の小説を、竹内結子主演で映画化した『ストロベリー・ナイト~インビジブル・レイン』を見た。2010年に放送されたスペシャルドラマから始まり、2012年の連続ドラマをへて、今回ついに映画化されたものだ。原作では、警察の腐敗ぶりや官僚の傲慢さが、これでもかと描かれている。

今作では、連続殺人事件の捜査にあたる女刑事・姫川玲子(竹内結子)と、菊田(西島秀俊)ら部下4人からなる“姫川班”の活躍が描かれる一方で、玲子が落ちてはならない男、牧田(大沢たかお)と恋に落ちるなど、ドラマからのファンの興味をかきたてるエピソードが盛り込まれている。メガホンをとったのは、ドラマから演出を務めてきた佐藤祐市監督。なんとこの映画は、ほぼすべてのシーンが雨である。

「降る雨の量で、登場人物の心理描写を表現した」と佐藤監督。自在に雨量を操った演出は、じつに冴える。映画化が決まったときは「連続ドラマでやり切った感があったので、新しい玲子を描くには、どうしたものかと考え込んだ」と佐藤監督は語る。
説明的なシーンを一切排除した演出手法は斬新で、菊田が姫川に対する恋心すら、表情を隠して手の動きだけで伝えようとしている。

それにしても武田鉄矢が演じる、元公安の刑事の勝俣は不気味だ。このようなニヒルな役が武田の持ち味である。惜しむらくは、武田がいまひとつストーリーに深く関わっていないことだろうか。いずれにせよ今年、もう一度見たい映画のひとつだ。

(鹿砦丸)