2020年夏季五輪でレスリングが排除される可能性が大きくなった。国際オリンピック委員会(IOC)が12日にスイスで開いた理事会で、レスリングを五輪での実施が確定する「中核競技」25競技から除外することを決めた。

「IOCの理事15人のうち欧州が9人も占めている。レスリングに関していえばアジアは男女18個のメダルのうち、11個もとっている。かつて強かったロシアは、4個だけと低迷した。こうした裏事情もあるのではないでしょうか」(スポーツ紙記者)

理事会では、無記名の投票を繰り返し中核競技から外れる1競技を決め、レスリングは近代五種との決選投票で敗れた。

なぜ近代五種ではなかったのか、明確な回答はない。しかし、この競技は「近代五輪の父」クーベルタン男爵(フランス)の肝いりで1912年のストックホルム五輪から導入。歴史を重んじる欧州の理事は排除に消極的だったと言われる。

次に整理対象となっていたのがテコンドー。しかしホッケー、カヌーといった他の候補も含めて中核競技にとどまった。テコンドーについては、韓国の朴槿恵次期大統領が訪韓したIOCのロゲ会長に存続を直訴したという報道がある。そうしたロビー活動が奏功した可能性もある。

海外の関係者からも驚きの声が上がった。
AP通信によると、2000年シドニー五輪のグレコローマンスタイル130キロ級金メダルのルーロン・ガードナー氏(米国)は「いきなり死刑を宣告されたようだ」と呻いた。

「簡単に言えば、国際レスリング連盟(FILA)に危機感がなかったのが一因でしょうね。ロシア連盟のミハイル・マミアシビリ会長が『問題の根はFILAにある。この問題を防ぐために何をしたのかを聞きたい』と不満を漏らすコメントをしています。FILAは『必要なすべての措置をとる』と公式サイトで表明しています。最終決定する9月までに、レスリングを競技として採用するアプローチをし続けるでしょう」(事情通)

吉田沙保里選手や伊調馨選手など、レスリングは日本のお家芸である。国際的な政治力に抗って、2020年五輪でもレスリングで選手を見たいと思う。

(鹿砦丸)