今年に入ってから、中国は尖閣諸島の周辺海域に「海上ブイ」を設置した。設置場所は排他的経済水域(EEZ)の境界線である「日中中間線」の日本側で、中国による構造物設置は国連海洋法条約と国内法に違反するという。
「尖閣諸島沖では、今も海保や自衛隊が警戒を続けていますが、それをあざ笑うかのような行為です。ブイには多数のアンテナが備えられており、音や海中データを収集・分析することで海上自衛隊の潜水艦の動向を把握でき、なおかつ攻撃に転じる布石でもあるわけです」(軍事ジャーナリスト)
尖閣諸島沖での問題は、中国の経済状況と連動している。
日本企業は、賃金が高くなった中国から工場などを撤退させ、ミャンマーやタイへと生産拠点を移動し始めている。
仮に中国バブルがはじけた場合、中国はなりふりかまわずに尖閣諸島沖の油田を漁り始めるだろうと言われている。
日本はたとえばジャブも少しずつ打っている。講演で、森本敏元防衛大臣は「日中に領有権問題がないというわが国の公式の立場は国際慣習から見ると難しい解釈だ。政治、外交上の重大な問題の存在は認めるべきではないか」とも述べ、日中間の歩み寄りを促している。
いっぽうで、日本政府は、尖閣諸島問題を中国政府とまともに話し合うこともできない。テーブルにつけないのだ。中国の哨戒機や警戒艇は、いつでも領海侵犯できるポジションを常にとっている。
「中国は日本からなんらかの条件を引き出すのを待っているのだろう。尖閣については少しずつ中国が外濠を埋めている」(週刊誌政治記者)
これほどまでに領海侵犯を繰り返す中国に対して、日本は本当に手が打てないのだろうか。経済政策ばかりがニュースでとりあげられているが、安倍首相の外交手腕が問われている。
(鹿砦丸)