「原発については、最後のタブー以外はかなり報道されるようになってきましたね。原発の作業が、下請けのさらに下請けが入り、下手をすると5次6次7次下請けなんてことがあるのは、30年以上前からのことです」(元原発作業員)

東電が昨年9~10月に福島第一原発の作業員4千人を対象にしたアンケートで、「作業指示している会社と給料を支給している会社は同じか」との質問に47%が「違う」と回答。下請けが連なる多重請負構造の中で偽装請負が横行している実態が判明している。いわゆるダンピングがそこかしこで行われているのだ。

なぜそれほどまでに、下請けが生まれるのか。東電は、労働組合を手なずける手段の一つとして、少しでも危険な仕事は下請けに回すようになった。それは、電柱に登って補修作業をするような、ごく普通の仕事でもそうだ。
原発で幾次にも下請けが発生するのは、やはり危険が大きいからだ。

最も最下層の労働者は、東京の山谷や、大阪の釜ヶ崎(あいりん地区)など、日雇い労働者が集まる地域で集められてきた歴史がある。
2011年にも、原発の作業だと知らされずに、釜ヶ崎の労働者が福島原発で働かされていたことがあり、問題になった。
なぜ、日雇い労働者が使われるか。それは、彼らには身寄りがなく、被曝の蓄積によって病気になっても、問題になりにくいからだ。
稀に問題になっても、それは下請けの責任とされ、東電は何の傷も負わない。

事故の収束作業に当たっている福島原発では、必要な労働者は桁違いに増えた。仕事をなくした被災地の人々なども多く従事している。
「作業員からダンピングをする会社が多すぎます。政府と東電は、年間最大1万2千人の作業員が必要と試算していますが、偽装請負を除外すると、確実に人は足りなくなります」(業者)
「基本的には、連絡が来る会社と発注会社はまったく別な名称でした。さらに、私たち作業員と、リーダーの所属している会社はまったく別ものでしたね」(作業員)
基準値より高い線量を浴びた人が多数いることも発覚しているなど、原発作業に関する問題は多い。

違法な偽装請負の状態で働く人は、約半数に上る。適法な作業員だけでは足りなくなる。業界の慣行である偽装請負に依存しない新たな計画を打ち出せるかが東電の課題となってくる。

「除染作業についても同じく偽装請負が横行しており、いったい自分が何社にダンピングされているかわかっていない人もいるのではないか」(元作業員)
福島原発の作業は、世界が注目している拠点での重要な仕事である。偽装請負がこれほどまでに広がっているのなら、至急、見直しが必要だ。

(鹿砦丸)