巷間で指摘されているようにNHKの朝の連続ドラマ「純と愛」は、これまでの朝ドラと極めて異質だ。ジェットコースターのごとく展開が速く、1話ごとに不幸から幸福へ。幸福からどん底へと展開する。夏菜が演じるのは「ホテルが舞台のふたりの奮闘記!数々の苦難を乗り越え夢を叶えます!」というキャッチフレーズを掲げていきまく女、純(夏菜)。彼女は自分が正しいと思ったら、猪のごとく突き進む性格で、周囲と軋轢を繰り返す。
純には次々と困難が押し寄せる。最初に勤めたホテルは外資の買収によりクビ。それでも「いつか自分の理想の民宿を作り上げたい」と心に決めた純は、大正区の小さなホテル「グランド大阪」に再就職。修行を重ねながら、寂れたグランド大阪を再生させようと奮起する。しかし、すっかりやる気を失っているオーナー・上原信代(52)や、屁理屈ばかりの先輩社員たちのおかげで純は悪戦苦闘の日々となる。
純の夫である愛(いとし)はそんな純を全身全霊で支える。愛は、「人の本性が見える」という病気にかかっている。これだけでもオカルトチックなのだが、純が勤めるホテルはことごとく倒産したり、火事に遭ったりしてつぶれていくのだ。
番組には「今まで通りの朝ドラを作れ」と苦情が殺到しているようだ。しかしいっぽうで、このドラマを見て、夫婦仲が元に戻ったという視聴者もいるという。
NHKは、伝統的な朝ドラのイメージを壊したかったのだろう。
「今どき、さわやかなヒロインを出しても受けない。もっと不景気を押しのけるようなパワーのあるキャストを設定しないとダメだろう」(テレビ局関係者)
なるほど確かに、「純と愛」には、再びやり直そうという気分になってくる要素がある。
テーマは「再チャレンジ」だったのだろう。もしそうだとしたら、時代の空気を読んだ制作側の勝利であったと言えまいか。苦情などもろともせず、最後まで朝ドラにつきあってみたい。
(鹿砦丸)