2017年の主に目立った出来事を大雑把に独断と偏見で振り返ると、
・梅野源治とT-98(=今村卓也)のラジャダムナン王座陥落
・「KNOCK OUT」イベントの躍進
・IBFムエタイの発足
・高橋一眞の復活
・志朗と麗也の独立
などがありました。
他にも多くの興行、イベントがありましたが、あくまで独断と偏見です。
◆《1》梅野源治とT-98(=今村卓也)のラジャダムナン王座陥落
2016年6月1日にラジャダムナンスタジアム・スーパーウェルター級王座奪取したT-98(=今村卓也)は同年10月9日に日本人として初めて現地で初防衛を果たし、その勢いで2017年の更なる記録更新が期待される中、5月25日に現地での2度目の防衛戦は惜しくも判定で敗れ記録更新成らず。その後T-98は長い休養はとらず再起。今度はルンピニースタジアムに標準を定め、10月22日にルンピニージャパン・ミドル王座奪取を経て挑戦権を獲得。12月2日にタイ現地でルンピニースタジアム・ミドル級王座に挑戦しましたが、判定負けで王座奪取成らず。外国人初の二大殿堂制覇も成りませんでした。
2016年10月23日に、同じくラジャダムナンスタジアム王座をライト級で奪取した梅野源治は、2017年5月17日、現地で初防衛戦を行なうも判定で敗れ王座を失いました。現地に渡るとなかなか難しい本場の壁に阻まれますが、これを打ち破ってこそ崇高の王座であるわけです。
二人揃って王座陥落のままに終わった2017年でしたが、梅野源治は2018年2月18日、REBELS興行で、ルンピニースタジアム・ライト級王座決定戦出場が予定されています。日本人として新たな可能性を懸けて、ムエタイ二大殿堂王座への記録更新は2018年に引き継がれます。
◆《2》「KNOCK OUT」イベントの躍進
2016年9月14日に記者会見興行(お披露目1試合)から発足した「KNOCK OUT」イベントは同年12月、2回目興行(vol.0)から盛大に始まりました。(株)ブシロードがバックアップする背景から2017年は1年間を通じて8回の興行が開催され、想定する範疇ながら「やっぱり凄いな」と思わせる実績を残して来ました。
対戦が難しかった団体の垣根を越えたトップクラスの対戦があり、地上波のTOKYO-MXTVをはじめ、衛星放送やインターネット配信の充実、街頭スクリーンにもコマーシャルが流れる拡散に過去に無い一般社会へアピールの進出がありました。
選手の発言にも「KNOCK OUTに出たい!」と言う声が多くなっています。このリングに立つ為に、既存の各団体やフリーのプロモーション興行も選手の目つきが違って来ています。目指すものが大きいと選手のモチベーションも上がることが実証された1年でした。
ひとつ厳格に守って欲しいのは、本来のキックボクシングルールとシステムを遵守して欲しいこと。一旦勝手な解釈が加わると、そこからまた新たな解釈が加わり、本来のキックから逸脱した方向に行ってしまうので、老舗キック競技を守ることからイベント開催へ向かって行って欲しいところです。
◆《3》IBFムエタイの発足
2017年後半、水面下で動いていたのはIBFのムエタイ団体発足の動きでした。プロボクシングの主要4団体のWBCがムエタイ世界王座を発足されたのは2005年12月。いずれは他団体も手を付ける可能性が高いと思われたプロボクシング認定団体のムエタイ進出でしたが、ここに来てやっぱり出て来た他3団体の中のIBFでした。
多くの世界認定団体と二大殿堂王座、更に活発化するイベント(トーナメント戦優勝制)がある中、それらの価値が低くなってきた時代に、IBFムエタイがトップ争いの末、ムエタイ最高峰となることは無いでしょう。
初の世界王座決定戦を行なった2017年12月20日の世界戦数日前からから「ライトヘビー級か、クルーザー級かどっち?」と思っていたら、開催直前になって別選手によるウェルター級戦になる曖昧さ。発展途上のタイ側に任せていたらこうなるんです。ムエタイなので試合ルールは本場タイ側が主導するのは仕方ないにしても、IBFに限らず、組織管理・管轄はアメリカやメキシコの本部が監視していかないと、タイ側は勝手なことやりだすので、単なる名義貸しにならないよう注意して貰いたいものです。
◆《4》高橋一眞の復活
2016年に悪夢の3連敗を喫した高橋一眞は2017年は4連勝と完全復活。過去3勝1敗の村田裕俊を破り、NKBライト級王座奪取と、元チャンピオンの大和知也を破り初防衛を果たしました。
長男・一眞は打たれ脆さが心配されます。大和知也との試合はそのスリルある展開を見せ大歓声となりましたが、再び「KNOCK OUT」出場することとなった高橋一眞は、2018年2月12日の「KNOCK OUT FIRST IMPACT」に於いてKNOCK OUT常連の町田光(橋本)戦が予定されており、ここはガードを固め冷静に戦って欲しいところです。
次男・亮も12月のKNOCK OUTに於いて、小笠原瑛作(クロスポイント)と引分ける好ファイトを見せながらも弱点を見せる展開。三男・聖人は安田浩昭に一発で逆転負けする不覚を喫したばかり。それでもNKBを担う立場に成長した高橋三兄弟は、安泰マッチメイクは無く試練を乗り越えていくので、負けながら這い上がるところに好感が持て、それぞれが2018年の急成長が見られるかが期待と見所でしょう。
◆《5》志朗と麗也の独立
志朗と麗也(ともにKICK REVOLUTION)が新日本キックボクシング協会を、脱退宣言発表をしたのは6月20日でした。本場タイのリングでの戦いの場を求めて、これ以降ほぼ現地のみのリングに上がっていますが、現地の有力プロモーターに認められ、勝ち上がることはかなり難しい道程で、下手すれば簡単に切り捨てられる本場で、窮地に追い込まれても2018年も突き進まなければなりません。
早速1月13日(土)、タイ・ルンピニースタジアムにて志朗の出場が決定しています。試合はタイ地上波9チャンネルで放送と、セミファイナル出場が予定されるかなり高水準の待遇で、対戦相手は、チューペット・シットパナンチュンという、タイ7チャンネルや9チャンネルに出ている知名度があり、今最も勢いのある選手の一人として名を馳せており、パンチとローキックが武器で、最近は3連続KO勝ちしており、志朗とはKO決着が予想されています。
麗也は志朗とは別のジムに所属しており、まだ活躍の詳細は聞かれませんが、2018年は志朗に続かなければならない勝負の年となるでしょう。
新春最初の興行は1月8日に、後楽園ホールに於いて17時より、新日本キックボクシング協会・治政館ジム興行「WINNERS 2018.1st」が行なわれます。WINNERS、MAGNUM、TITANS NEOSなど、この団体内でもビッグイベントが揃っており、「KNOCK OUT」以外の国内各団体が突出してくるか、あるいはまた分裂が起こるか、何が起きても不思議ではないキック界が1年後にどうなっているか、波乱にも期待したいところです。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」