まずは、どこの電子書籍ストアに配信されるのか説明がされた。その後、お金の話に繋がる。Amazonで販売するということは、案内だけでなく口頭でも初めに伝えられた。Amazonで売れなくなるとApple、楽天koboといった順に販売してゆくという。
Amazonについて詳しく話すのはkindleを榛野氏自身がすでに発売しており、Appleはまだ、日本に上陸していない時期だったので詳しくわかっていなかったということもあるのだろう。

Appleというのはibookstoreでの販売という意味である。販売するのはkindleとibookstoreとはっきり言ってもらえれば、契約書を交わす前にその2点についてもっと調べられたかもしれない。kindleもibookstoreもよくわからないという状態のまま契約ということは避けられた。私は、よくわからない説明をよくわからないまま聞いていた。何故、質問しなかったのだろうと自分でも思うが、Amazon、Appleという言葉は普段聞き慣れており、わけがわからないながらも、まともな場所で販売するのだろうと思ったのかもしれない。無知とは恐いものである。今回の件によりこれまで詐欺に合う人々は何故気付かないのだろうと思っていたが、なんとなく気持ちがわかる気がした。

そこからはほぼお金の話になるのだが、お金に関してはこちらからは一切必要ないという。その代わりに、印税の半分をシェアするという形であった。kindleはkindleセレクトというものがあり一定条件をクリアすれば印税が70%になる。値段を少し高めに設定するため、印税をシェアしても普通の紙書籍と変わらない収入になると説明をされた。また、小説のマネジメントは豊穣出版で全て行うため他のストアでの配信、紙の書籍化、ドラマ化、映画化された場合などで得た収入も豊穣出版とシェアするという話をされた。これは、二次使用権を豊穣出版に渡すということだ。ただし二次使用権に関しては、今回の作品に関してはどこかで利用されることは、まず、ありえないと思っていたのであまり気にしていなかった。

「売れればドラマ化なんかもありえます。どんどん売って行きましょう」という榛野氏。印税収入も期待できます。と、話を大きくしてゆく。芳川氏には収入に関しては、見込めないと言われたのだが……正直、電子書籍の印税で儲けていますという話は自分の周りで聞いたことがない。芳川氏の言う通り収入は見込めないのだと思う。ただ、榛野氏の話を聞くと月に数万円ぐらい、副業程度の稼ぎにはなるのではないかとも思ってしまう。

「校正・校閲もこちらでやります」「デザイナーも居るので表紙なども問題ないです」「プロモーションも行います。WEB上の露出を増やし売れるようにします」などの言葉を羅列する。パソコンに眠っているだけの作品であり、きっとどこの場でも披露する機会はないであろう。その上、お金も少しでも入るのなら悪くない話のように思えた。安心してしまった私は会ってみてから渡すかを決めようと持ってきていた小説、数作を榛野氏に渡す。
しかし、問題はお金などではなかった。IT企業が電子書籍を出版する。個人出版事業に参加するということの問題点がこの後、大きく見えてくる。

(但野仁・ただのじん)

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