8月10日から、ポレポレ東中野で映画『標的の村』の上映が始まっている。
毎日、補助席まで使うほどの満員で、熱気に溢れている。
琉球朝日放送の三上智恵さんが監督した『標的の村』には、本土には知らされていない沖縄の現在が映し出されている。

現在、普天間基地への追加配備が始まっているオスプレイだが、初めて配備されたのは、昨年の10月1日だ。
その直前の9月29日、普天間基地のすべてのゲートに市民たちが車を停め、座り込んで抗議した。

その時の映像が、『標的の村』には収められている。
参加者には、沖縄戦や米軍統治期を知るおじい、おばあ世代が目立つ。
「正直、怖い。怖いけど、やるしかない」
仲井真知事は、当時の森本防衛大臣にオスプレイ配備の中止を求めた。
全国知事会が全会一致で反対決議を行い、沖縄県内全41市町村議会が反対決議を採択した。
それでも配備するのだから、実力で抗議するしかない。

翌30日、沖縄県警によって、実力排除が始まった。警察官が腕ずくで人々を連れ去り、車をレッカー移動させていく。カメラを持った報道人まで、警察官たちが取り囲み、撮影をさせないようとする。
「ウチナンチュー同士で、なんでこんなことしてるんだよ!」という悲痛な叫びが上がる。
この事件自体が異常なことだが、もっと異常なことは、本土のメディアではまったくといっていいほどこれが報じらなかったことだ。

『標的の村』が追っているのは、沖縄本島北部、ヤンバルの森にある東村・高江でのヘリパッド建設に反対する人々だ。ヘリパッドができればオスプレイが来ることが予想されていたが、普天間にオスプレイが来たことで、その意図ははっきりしてきた。

これも、これまでまったく知られていなかったことだが、1960年代、高江には「ベトナム村」と呼ばれるものがあった。
ベトナムと同じ村をそこに作り、戦闘訓練を行っていたのだ。驚くべきことに、その時にベトナム人の衣装を着せられ、ベトナム人役をさせられたのが、高江の人々だったという。

高江でヘリパッド反対運動を続けている住人たちは、映像の中で語っている。
米軍のヘリコプターは、夜の僅かな村の明かり、村人の動きを見定めながら、上空を飛んでいる、という。
「ベトナム村」はなくなったが、そこにある高江の村が、演習の一部として、まさに『標的の村』となっているのだ。

その地に住む人々がどんなに反対しても、米軍がやると決めたことは、やられてしまう。
いまだに沖縄は、そして日本は、米軍の占領下にあるのと同じことだ。
それを知らせないために、本土のメディアは、これを黙殺しているか。

『標的の村』はこれから、全国を巡って上映される。
真実を知ろうとする多くの人々が、『標的の村』を見ることを願ってやまない。

(FY)