「日立トリプルウィン」という会社から電話があった。
国民年金が支払われていない、とのことである。
「日立って、日立製作所の日立ですか?」と訊くと、「そうです」と答える。
なぜ、日立系列の会社が年金の話などをしてくるのか。訊くと、国民年金機構の代行をしているのだという。
だが、国民年金を支払っていないというのは、身に覚えがない話だ。
これまで使っていたのは、みずほ銀行だったが、ゆうちょ銀行に替えて、各種の引き落としも移している。
みずほ銀行は、皆様のライフステージのお役に立ちます、などという頭取のメッセージをウェブサイトに載せていた。だが、父親が借金だけ残して亡くなり困っている時に、葬祭費の目的で使えるはずの多目的ローンの利用を申請したら、「応じかねます」と撥ねてきた。こちらを信用できない、ということだろう。
だからもう、みずほ銀行を使うのはいやだった。どこの都市銀行でも同じようなものだろうが、はっきり、こちらを信用できない、という態度を示した銀行を使い続けるわけにはいかない。どこでもよかったのだが、家の周囲に郵便局はいくつもあるので、ゆうちょ銀行にしたのだ。
国民年金は、送られてきた支払い票を使って、コンビニで支払ったはずだ。
「払ってるはずですよ」と言うと、「データがこちらに届くまでに時間がかかるので、まだ届いていないのかもしれません」とのこと。
「まさか、こんなことになるとは思ってなかったから、支払い票の控えを取っていないかもしれない。しかし、年金機構に変わったのに、まだ年金はこんないい加減なことをやってるんですか? もし、控えが見つかったら、そちらに連絡すればいいんですか」
「こちらにお電話していただいてもいいんですが、年金事務所にお電話していただいたほうが、いいかもしれません」
「ああ、そうですか。私のような者でも時間は貴重ですから、きちんと仕事してくださいよ」
探してみたが、支払いの控えは見つからない。
しかたがないので、年金事務所に電話する。
話しているうちに、自分の勘違いに気づく。支払い票を使って支払ったのは、国民健康保険のほうだったのだ。
預金を、みずほ銀行からゆうちょ銀行に移してしまったため、1カ月分の国民年金が引き落とされていなかったのだ。
後日、年金事務所から葉書が来たが、それを見れば一目瞭然だった。
日立トリプルウィンからの電話など、必要なかったのだ。
日立トリプルウィンのウェブサイトを見ると、「戦略的アウトソーシングの究極の目的はコアコンピタンス経営の確立です」などと書かれている。
葉書一枚で済むことをわざわざ電話してくるのが、戦略的アウトソーシングなのだろうか。
税金が、大企業のグループ会社に、無駄に使われている、という気がしてならない。
(FY)