人身売買というと、外国人が被害者だと思われがちだが、最近は、日本人の被害者も増えてきた。
外国人も様々なケースがある。よくあるのが、ホステスとして稼げるなどという誘いで不法入国した女性が、偽造パスポートを取り上げられ、渡航費を借金だとして、売春を強要されるというケースだ。この場合、不法に入国しているので、警察には駆け込めない。

これを考えると、なぜ日本人が被害者になるのか? と不思議に思うが、要するに無知につけ込まれるのだ。
日本人女性の場合だいたいが、ホストクラブにはまって借金を作ってしまった結果、人身売買の被害者となる。
借金を肩代わりする代わりに、性風俗で働くことを強要されるのだ。

だが、売春防止法には、以下の条文がある。

第九条  売春をさせる目的で、前貸その他の方法により人に金品その他の財産上の利益を供与した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

これによって、法的には人身売買はできなくなった。
これ以前の赤線や遊郭は、多くは人身売買で成り立っていた。
よくあるケースは、飢えた農村で、親が娘を売ったのだ。
この場合、親が店から金を借り、娘が働きでそれを返すという形になる。
だが、売春防止法第九条で、それが禁止されたのだ。
娘が警察に駆け込みさえすれば、金を貸した店のほうが罰せられることになる。

風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)にも、これに準ずる条文がある。
だから風俗店の経営者は、用意しているマンションに女性従業員を住ませることはあっても、引っ越しの費用を貸すなどということはしない。
そのままトンずらされても、文句は言えないからだ。

そうしたことは風俗業界の常識だ。
被害に遭うのは若い女性に多いが、OLなど社会人でも、風俗の常識などは知らずに、人身売買されてしまうことも少なくないのだ。

女性たちが知らないのはしかたがないが、人身売買を扱ったウェブサイトでも、次のように書かれていた。
「人身取引は新しいタイプの犯罪です。現行の法律で防止し、加害者を処罰し、被害者を保護するのは難しい。加害者にとっても摘発されるリスクの低い犯罪であることから、被害者を不当な借金漬けにし、売春などの罪を犯させ、莫大な利益を手にするという悪循環が発生しています」

人身取引=人身売買は古くからある犯罪であり、現行法で、加害者を処罰することは十分に可能なのだ。

(FY)