なんとしてでもシリアに軍事介入をしたいアメリカだったが、同盟国が離反し、あとは実質的に属国である日本の支持が頼りで、同調圧力をかけている。そして日本政府は苦慮していると報道されている。
もともとシリア情勢の報道は、嘘臭いものであった。リビアに続いて「民主化を求めるデモや集会に政府が武力弾圧」という嘘をNHKなどが報道してきた。穏健な運動に軍が武力を用いたにしては、長期に渡り内戦状態となっているので、みんな変だと感じていたはずだ。
最悪なのが『ニューズウイーク』である。特に7月の日本版に掲載された記事は、不可解な取材の方法と、不自然な事実関係、アメリカの軍事介入を求める意図が見え見えの嘘臭い証言によって構成されていた。それは、アサド政権が民間人ばかり殺傷し、これを傍観するアメリカに、シリアの市民は怒っているという内容だった。
これまでアメリカは、マスメディアを使って嘘を垂れ流して戦争の口実を作ってきた。リビアでも、その前のユーゴでも、その前のベトナムでも。
また、先日来日した映画監督のオリバー・ストーン氏は、92年に日本の報道番組に出演して筑紫哲也氏からインタビューを受けたさい、ニューズウイークは謀略宣伝雑誌だと指摘していた。
ただ、それを言ったらアメリカのマスメディアは総てそうだと批判されている。さすがに『リーダーズダイジェスト』のようなCIA直営雑誌とまで言われるところは少ないだろうが。その『リーダーズダイジェスト』日本版は、労働組合つぶしのため偽装倒産して撤退したが、このことが内部文書の漏洩で発覚し、出版労連が問題にしていた。
それを、表向きは、日本の郵便料金が高すぎてダイレクトメール費用がかさむからと言っていた。これは86年のことだ。こんな前から、アメリカは日本の郵政にケチをつけていたのだ。
とにかく、アメリカの、『リーダーズダイジェスト』に載った、『ニューズウイーク』に載った、「CNN」が放送した、というのは、旧ソ連で、『プラウダ』に載った、『イズベスチヤ』に載った、『モスクワ放送』が放送した、というのと同じである。
なのに、最新の情報や論調が読めると錯覚して、そんな雑誌の日本版を講読して気取っている人たちがいる。これはとても愚かなことである。
(井上 靜)