東京法務局訟務部付けの保木本正樹検事が山口地検の三席検事だった2011年5月、殺人などの容疑で逮捕された在日韓国人の男性・湖山(本名・許)忠志氏(29)に対する取り調べ中に「韓国人・朝鮮人は下等な人種」などの民族差別発言をしたという疑惑について、筆者は先日、当欄でレポートした(http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=2983)。筆者が保木本検事本人に事実関係の確認をすべく、電話で取材依頼をしたところ、保木本検事は疑惑を何ら否定せず、一方的に電話を切るという対応をしたことまでは前回報告したが、この保木本検事の態度について、湖山氏本人の意見を聞くことができた。
前回お伝えしたように湖山氏は一貫して無実を訴えながら、昨年7月、山口地裁の裁判員裁判で懲役30年の判決を受け、現在は広島高裁に控訴中。勾留先の広島拘置所の面会室で、保木本検事の上記の態度を報告したところ、湖山氏は心底呆れたようにこう述べた。
「怒りを通り越して、なんと言っていいか……許せないですね。あそこまで言っておいて……(保木本検事の発言は)誰彼に向かって、『アホ』とか『バカ』と言ったというレベルじゃなく、民族差別発言です。内容的にも常軌を逸していました。僕らの民族性からしても、許せないですね」
湖山氏は、保木本検事の「民族差別発言」を最高検の監察指導部に情報提供し、調査するように求めている。保木本検事がどんな処分を受けることを望んでいるかも尋ねてみた。
「僕は(検察庁の)処分の仕方をわからないんですが、まずは(保木本検事には)全面的に(自分が訴えている差別発言を)認めて欲しいですね。そして公の場で謝罪して欲しい。それが第一ですね。望みが叶うなら、『鉄格子の中に一生おれ』と言いたいくらいですが」
湖山氏によると、保木本検事は下関署の取り調べ室で初めて会った際、いきなり「あなたが犯人と思っとるから」と言い放つなど、最初から話をできそうな感じがまったくなかったという。そこで事件のことは何を聞かれても、「知らないです」と答える態度を貫いていたところ、イライラした感じの保木本検事は、前回紹介したような凄まじい民族差別発言を浴びせてきたという。
過去、当欄でお伝えしてきたように湖山氏に対する裁判員裁判の有罪判決もかなり問題があるのだが、湖山氏の白黒に関係なく、保木本検事の差別発言疑惑の白黒がきっちり追及されなければならないのは間違いない。この件については今後も当欄で続報をお伝えする予定だ。
(片岡健)
★写真は、湖山氏が勾留されている広島拘置所