15日に関西電力の大飯原発4号機が定期検査で停止し、再び国内の原発稼働はゼロになる。
一方、2020年のオリンピックが、東京に決まった。
国際オリンピック委員会(IOC)総会が開かれたブエノスアイレスでの、9月4日の記者会見では、海外メディアから、福島第一原発の汚染水の問題への質問が相次いでいた。
「福島とは250キロ離れている。皆さんが懸念するようなことはまったくない」と竹田恒和理事長は説明したが、質問した記者の1人は「証拠としてデータを示すべきだ。何かを隠しているように感じる」と会見後に語った。
そもそも、250キロ離れているから安全とは、福島の人々のことを忘れ去った発言だ。
福島では、いまだ仮設住宅で暮らしている避難者も多い。7年後に東京でオリンピックのニュースを聞いて、「2年経っても、福島は止まったまま」「同じ日本でも国が違うみたい」と嘆く避難者もいる。
原発を巡っては、アメリカと日本は日米原子力協定を初めとして、堅い利害関係で結ばれている。
だが、それ以外の国は、そうではない。
オリンピックが東京に決まると、すでに脱原発を決めているドイツでは、ランナーや観客がマスクをつけ白いタイペックを着ている風刺マンガが評判になった(冒頭に掲載したもの、Berliner Kurier筆)。
約8割を原発に頼る原発大国のフランスでも、腕や脚が3本ある力士などを描いた風刺画をカナール・アンシェネ紙が載せた。フランスもオランド政権になってから、減原発へと政策転換している。
そうした国際世論を感じ取ったのか。9月12日、民主党の大畠章宏幹事長は、国際オリンピック委員会(IOC)総会での「状況はコントロールされている」との安倍晋三首相の発言を捉えて、「『コントロール下にある』という根拠を示してもらわなければならない。政府は国民にも福島県民にも説明する責任がある」と会見で発言、臨時国会前倒しも視野に入れ、与党を追及していく姿勢を現した。
大畠章宏は日立製作所労組出身の労働貴族である。その詳細は『労働貴族』(鹿砦社)に記されているが、プラントメーカーである会社の意を受けて、一貫して原発推進に勤しんできた。原発に関してバラバラだった民主党を原発推進にまとめ上げ、民主党エネルギープロジェクトチームの座長として、大飯原発再稼働へと突き進んだのが、大畠章宏である。
日立製作所は6月21日の株主総会で、国内外の原発支えるのが責務との見解を、中西宏明社長が表明している。
大畠の発言にも「脱原発」に類することはなく、原発推進の立場だが事故処理はきちんとすべきだという立場なのだろう。
だが、放射性汚染水対策について国の主体的関与を求める提言を、内閣府の原子力委員会(近藤駿介委員長)の専門部会が2011年12月に行ったにもかかわらず、それを放置していたのは、当時の民主党政権である。
福島の人々のことを考えるのではなく、国際世論の風に押されて汚染水を問題にするというのだから、存在そのものが、戯画となったのが、民主党である。
(FY)