芸能人がAVに転身するのが、まるで珍しくなくなった、昨今。
元芸能人でなくとも、AVギャルの質は上がっている。昔から美少女AV嬢はいたが、まともにセックスしていればまだいいほうで、疑似セックスであることも多かった。
ところが今は、かなりきれいなAV嬢でも、多人数プレイや野外ファックなど、過激な撮影にも応えなければ、やっていけない時代になった。
もはやAVは、女優だよりになってしまった感がある。
そんななかで、演出にこだわっているのが、『脅迫スイートルーム』(ドリーチケット)だ。受付嬢や女医、CA、教師などが、負い目を背負って軟禁されて、体で借りを返すという設定だ。
重要なのは、SEXを嫌がっている女優が急激に肉欲へとおぼれる女になる「転換点」である。
ドリームチケットは、この演出の妙をよくわかっている。
見た目は実際、まじめな受付嬢に見える、長谷川みくは、演出の仕掛けに追い込まれ、「欲しいといってみろ」と迫られ「欲しいです」と照れつつ答える。しだいに「ぶち込んでくださいと言え」と言われて、「ぶち込んでください」と答える時には、よだれを垂らすほど、本気で欲しがっている顔になっているのだ。電動マッサージでのオナニーを強要され、強制フェラチオ、乱交に至るのは、多くのAVにあるパターンだが、男たちに脅えていた彼女が、悦楽に身をゆだねていく表情の変化は、このシリーズならではだろう。
シリーズで水元ゆうながCAに扮したときには、すでに水元ゆうなは人気が頂点であった。もしもデビュー直後に出ていたなら、もっと違う意味でいい味を出していただろう。ほかにも、森ゆうこや川上ゆうなど、「脅迫スイートルーム」に出てもらいたい女優は山ほどいる。だが今、演出でAVが売れる時代ではなくなった。AVは、ひたすらファッションモデル雑誌に出てくるような女優をキャスティングしないと売れないのだ。
「今、どれだけ美人の女優を出せるかどうか、つまりスカウトがAVメーカーの浮沈を握るようになってしまった。演出やロケのおもしろさで勝負する時代はもう来ないのかな。まあ、女優におんぶに抱っこで似たような作品ばかり作ってきた私たちにも、責任はあるけどね」(AV監督)
だが、今での演出で勝負しようとするAVは、まだあるのだ。機会があればまた紹介していこう。
(千代田次郎)