世間では今、有名司会者みのもんた氏(69)の次男で、御法川雄斗氏(31)という日本テレビ社員の男性が窃盗未遂の容疑で逮捕され話題になっている。これと似た事件として、広島で昨年、地元放送局の元アナウンサーの男性が窃盗の容疑で逮捕、起訴された事件があったのだが、ご存知の方はどれほどおられるだろうか。

男性は、煙石博氏(66)。TBS系列の中国放送でアナウンサーとして長く活躍した人で、地元では顔も名前もよく知られた人だ。それが昨年10月、広島市南区の広島銀行大河支店で、女性客が記帳台に置き忘れた封筒に入った6万6600円の現金を盗んだとして窃盗の容疑で逮捕、起訴された。その後、続報は地元マスコミの報道でもほとんど見かけないが、現在は広島地裁で公判中で、実は地元の傍聴マニアたちが「冤罪」だと噂する事件の1つとなっている。

かくいう筆者もこの事件は春ごろから傍聴に通っているのだが、たしかに有罪証拠は大変乏しい。銀行店内の防犯カメラには、事件があったとされる時間帯の一部始終が映っているが、煙石氏は被害者が現金入り封筒を置き忘れたという記帳台に近づいたりはしているものの、とくに不審な様子はなく、決定的な場面は何も映っていない。そして事件後、女性が置き忘れた封筒は記帳台の上で見つかっているが、煙石氏の指紋は検出されていない。加えて、証人出廷した被害者の女性やその母親の証言は終始あやふやで、実はそもそも封筒には本当に現金が入っていたのかという疑念すら抱かせる有様なのである。

また、検察官が冒頭陳述で示した事件の筋書きをみても、煙石氏が現金入りの封筒を持って一度、銀行の外に出て、金を抜き取った上で店内に戻り、封筒だけを記帳台に戻したという不自然な内容だ。「銀行の店内は防犯カメラでずっと撮影されていることは私も知っています。それなのに、こんなことをするはずがありません」と煙石氏本人も被告人質問の際に言っていたが、それは筆者も同感で、一般常識がある人間なら普通しないような犯罪だ。そんなこんなで、この事件は現在、広島の傍聴マニアの間で「冤罪」ではないかと評判を呼んでいるわけだ。

ただ、被告人が地元では有名な人物で、審理は犯人性に疑問を抱かせる展開になっているにも関わらず、地元マスコミの記者の姿は傍聴席にほとんど見かけない。当初は煙石氏の古巣・中国放送の記者がずっと傍聴に来ていたが、ここ2回の公判ではその姿も見かけなかった。煙石氏の友人、知人らしき人は毎回大勢傍聴にきて、法廷はいつも賑わっているのに、地元マスコミはなぜか、この事件にはあまり関心がないらしい。

10月10日にある次回公判では、検察官の論告求刑と弁護人の最終弁論が行われ、いよいよ結審する見込みだが、インターネット上では「煙石博 裁判」「煙石博 その後」「煙石博 続報」などのワードで検索をしている人がけっこういるようだ。それもこの事件の続報がマスコミから伝わってこないからだろう。そういう状況なので、筆者が今後も無事公判を傍聴できるようなら、当欄でまた裁判の続報を報告したいと思っている。

(片岡健)

★写真は、「煙石博」でグーグル検索した時に出てくる検索数上位のワード