居酒屋などに、吠える熊のイラストともに「熊出没注意」と書いたポスターが、シャレで貼ってあるのを、ときたま見かけることがある。
知床の自然センターにも、まったく同じものが貼ってある(写真)。こちらはシャレでなく、本当にヒグマが出るのだ。
ヒグマは街にまで出てきて、学校の校庭に現れたり、民家に入り込んで食べ物をあさったりしているのは、時折ニュースなどで報じられている。

かつて、熊は人を恐れていた。
危険なのは、山中で不意に遭遇してしまい、熊が人に襲いかかることだった。
熊のいそうな山を歩く時は、ザックに鈴をつけて鳴らし、人がいることを知らせれば危険は少なかった。
だが今、熊は人を恐れなくなった。

その理由についてニュースなどでは、山中に食べ物がなくなったから、と曖昧な説明しかされていない。
知床では、いたるところに知床財団の作製したカードが貼られ、その理由が示されている。
たまたま間近に現れたヒグマに、車中からソーセージなどの食べ物を与える観光客が多かったことが原因であるとのことだ。
ヒグマは人間の食べ物の味を覚え、それを求めて、人に近づこうとする。

知床財団のカードには、小学校に現れて射殺されたヒグマの写真が載り、「エサやりがクマを殺す」と書かれている。
ヒグマにエサを与える観光客は後を絶たず、今年になっても確認されているとのこと。
警告を強めるために、あえてショッキングな写真を載せたのだ。

おもしろ半分にエサをやる観光客のせいで、ヒグマの恐怖が身近になってしまっているわけだが、自然を愛する知床の人々は、ヒグマとの共生を考えている。
ヒグマが人里に現れたとしても、いきなり射殺するのではなく、花火で大きな音を立てたり、ゴム弾を撃って痛みを覚えさせるなど、なんとかヒグマが人に近づかないように工夫しているのだ。
観光客に対しても、様々な工夫をしている。知床五湖には、周囲に電流を流した高架木動が作られており、安心して歩くことができる(写真)。

ヒグマの人里への出没は、あまりにも自然を恐れなくなってしまった人間が原因だったということは、都会に住む人間も知っておく必要があるだろう。

(FY)