東京法務局訟務部付けの保木本正樹検事が山口地検の三席検事だった2011年5月、殺人などの容疑で逮捕された在日韓国人の男性・湖山(本名・許)忠志氏(29)に対する取り調べ中に「韓国人・朝鮮人は下等な人種」などの民族差別発言をしたという疑惑について、筆者は過去、当欄で3度に渡ってレポートした。この保木本検事の疑惑について、筆者が最高検の監察指導部に情報提供し、調査することなどを求めたところ、9月24日付けで受理された。

最高検の監察指導部とは、検察改革の一貫して2011年7月8日に新設された部門。検察庁職員の違法行為や不適正行為に関する情報を内外から集め、必要に応じて事実関係の調査や指導を行っているとされる。9月6日付けの当欄でお伝えしたように、湖山氏本人もすでにこの件を同部に情報提供しているが、湖山氏の情報提供がどう取り扱われているかを筆者が同部に問い合わせたところ、「外部には一切教えられない」とのことだった。これでは、湖山氏本人は広島拘置所に身柄拘束されているため(※湖山氏は一貫して無実を訴えながら山口地裁の裁判員裁判で懲役30年の判決をうけ、現在は広島高裁に控訴中)、同部が湖山氏の情報提供を適切に取り扱っているか否かを追跡調査するのが困難だ。そこで筆者自らこの件を同部に情報提供し、当事者になることを選択したのだ。

もっとも、筆者が情報提供後、同部に電話で問い合わせたところ、応対した同部監察指導課の上原万利子氏は筆者の情報提供を受理したことを認めつつ、「情報提供にどう対応したかは基本的に教えないし、公表もしない」とのこと。そもそも、提供された情報に関する調査などを行うのも「必要に応じて」だそうで、要するに同部がソノ気になれば、検察庁職員の違法行為や不適正行為に関する外部からの情報提供をいくらでも黙殺できるルールになっているわけだ。

実際、最高検と法務省が昨年4月5日にホームページで公表した「検察改革の進捗状況」という資料によると、同部が新設された2011年7月8日から2012年2月22日までの間、検察庁職員の違法行為、不適正行為に関する計598件の情報提供のうち、実際に監察が行われたのは2割にも満たない116件に過ぎない。しかも、監察対象となった116件が最終的にどのように処理されたかの統計を見ても、「指導等の措置をとったもの」はわずか2件だ。それ以外は「特段の措置不要と判断したもの」90件、「指導等の措置まではとらなかったが、調査の過程や原庁への通知文書で留意を促したもの」4件、「その他」1件、「監察中」19件――となっており、検察庁職員の行為が違法なものであるとか、不適正なものであると検察庁に認めさせる難しさが数字で如実に示されている。

しかし、検察庁も良心がまったくない人の集まりではないと信じたい気持ちもある。いずれにしても、筆者の情報提供に検察庁がどう対処したかは、保有個人情報の開示を請求するなどして追跡調査する予定なので、当欄でまた続報をお伝えしたい。

(片岡健)

★写真は、湖山氏に対する保木本検事の「疑惑の取り調べ」があった下関署

【関連記事】
新聞、テレビは報じない山口地検検事の民族差別発言疑惑
http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=1742

冤罪を訴える在日韓国人男性が取調検事の「下等な人種」発言を最高検に告発
http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=2983

検事の「民族差別発言」を最高検に告発した在日韓国人男性が怒りのコメント http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=3036