『電子書籍のことでいろいろと話したいことがある』と仕事中、連絡があった。
嫌な予感がしながらも『何かあった？』と返すと『１冊３万円を払わないと小説は読まないって言われた。長くなるので詳しくはskypeで送る』と書いてあった。skypeをオンラインにしていた私の元にチャットにてすぐに文字が送られてきた。
矢継ぎ早に送られてくる文をまとめると、榛野氏にメールにて挨拶文と小説を送ったところ、すぐに返信がきてウチは１冊３万円で出版を承っている。３万円を払えば小説を読んで出版するかを検討する。と言われたそうだ。それに加え、何作品ぐらい持っているのか？ そのうち、何作品出版しようと思っているのか？ と聞かれたという。３万円の内訳は表紙代と手続き代行のお金だそうだ。あまりにも勢い良く文が打ち込まれるため、私もどのタイミングで書き込めば良いのかと戸惑うほどだった。ようやく『断ったの？』とだけ打ち込んだ。『紹介してもらって悪いけど、そんな金はないです。とだけ返した』と書かれている。紹介してもらって悪いなんて思っていないだろうという内容であったが、断ったようでほっとした。榛野氏との付き合いより友人との付き合いの方が大事である。友人は私にも怒りの矛先を向けているようなのでしばらくチャットにてやりとりをした。その中で、私もお金の負担があるとしても３万円とは全く知らなかったし、小説を読むために３万円が必要だとは思ってもいなかった。榛野氏からもらったメールだと小説を読んでから、自分が気に入らないものだと自費出版にする形だと思った。というようなことを送った。
『やっぱり、あのメールそう読めるよね。何作品ありますか？ とか、１作品だけだったら販売したくないみたいだし、どれだけお金取る気だよとか思った、正直あの表紙に３万円も払えない。無料で販売できるんだよね？』と送られてきた。その他、『読むためにお金払えとか詐欺だ！ HPには無料のような書き方をしてあったし』と書いてある。
友人が『詐欺だ！』というのも納得できる。私もすでに騙されている気持ちでいっぱいであったので、全く友人の言葉を疑わなかった。友人の言う通りだというようなことを伝えると友人の怒りもおさまったようだ。私も榛野氏に対してイライラしていたのでこの際、この件に関しては文句の一つでも言ってやろうと思うほどだった。それにしても、表紙に関しては友人も良くないと思っていたのだとその時に初めてわかった。
一通り話した後、落ち着いた友人は私に対して怒りを向けたのは悪いと思ったようで最後は謝罪をしてきた。私も紹介しないで止めるべきだったと思うので謝ったが、友人は紹介しなくても気分を悪くしたような気もする。表面上は解決したと思ったのだが、その夜SNSにて友人は詐欺にあったというような内容で榛野氏のことを挙げていた。私の名前はなかったが、榛野氏に対しての怒りはおさまらないようだ。
それにしても榛野氏は本当に利益のことしか考えていない。まだまだ軌道に載っているとは思えない個人出版ビジネスの中で良質な作品を世に送りだして、会社名を売ろうなどという考えは全くないのだろうか。少しでも小説が好きな人がこの事業を行っていたら、どれだけ利益重視でも、もう少し作家のこと、作品のことを考えるのではないかと思う。
そして、この友人とはこのことをきっかけにいろいろと問題が起こり今でもギクシャクした状態が続いている。なんとか解決できればと思ってはいるのだが、私の信用はこの後に起こる問題によって更に失われていった。
（但野仁・ただのじん）
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