岡田くんとは新宿駅で待ち合わせをし、ランチをとることとなった。
東京は全くわからないというので私が店を見つけ予約することにした。新宿には比較的良く行くので私が店の予約を取ることに関しては特に何も思わなかったが、徐々に彼が他人任せの性格だと知ると自分で予約しなかったのも納得できる。
岡田くんはランチをとりながら自分たちの会社のチームが行いたいプロジェクトを私に説明した。その話を簡単にまとめると個人出版からベストセラーを生み出そうというプロジェクトだ。そしてその大きなプロジェクトの枠組みの中に雑誌を作るというものがあった。岡田くんの会社がおかもとの名義で運営しているサイトから発信するWEBマガジンを作りたいという。そして、その制作を手伝ってほしいと言った。
WEBマガジンには連載作を何篇か入れてもらい、隔週で発行したい。連載後は話をまとめて一冊のkindle本として発売し、その後、岡田くんの働く会社は印刷所を持っているので紙の本でも発行したいと話す。すでにオンデマンドの印刷は行っているという話もしてくれた。最終目標はその本が書店に並びベストセラーになることだと語る。
「今日、但野さんと話して様子を見て上司に話そうと思うんですよね。今も、上司も交えて数名のチームでサイトの運営してるんですけど、もし上手く行きそうならさらに上の方に話持って行こうと思っています」と言った。
お金について尋ねるとそれは全くかからないと言う。
「もし、紙にするときにデザイナーを頼みたいという場合などは発生するかもしれないですけど、基本はサイトの名前を売ることを目標としているんで、サイト名が売れてオンデマンドの印刷などをするお客に繋がってくれれば良いかなあって。もし雑誌の売上げが出ればそれも払いますよ。ただし、払える金額については少ないと思います。やっぱりkindle自体が今の段階では儲かっていないですし、それに、何人かで雑誌にするんでお金を分配するとあんまり入らないですよね」と話す。
私の場合は出していたkindle本の印税を豊穣出版と全てシェアしていたので、豊穣出版から送られてくる明細を二倍にすればどれぐらいの利益が出るかはわかった。正直、一冊の単価をなかなか上げられないので冊数の割にはお金は入らないという印象が強い。他のKDPにて販売している作家さんの話を聞いても、売れていそうに見えてそんなに利益は無かったため、岡田くんに払える額は少ないと聞いてもそんなものだと思っていた。
その他に、雑誌の連載を終えて一冊のkindle本になった場合は販売の代行は全て岡田くんの会社で行いまたその利益も全て著者に渡すと言ってくれた。Kindle本での儲けは全く考えていないようだ。細かいお金を搾取して儲けようと考える豊穣出版とは違いが、やはり大きな企業だと感じられた。
岡田青年の第一印象は悪くは無かった。本当に良き青年と言った感じだ。夢が大きいのも良い。そして、喋りやすい。少しノリが軽いのが気になったのだが「今日は友達感覚で仕事するなよ。って上司に言われてきたので真面目に仕事します」と言っていたこともあり、ノリが軽い部分は自分でも感じているのだろうと思った。ランチでは悪い印象は持たなかった。
だが、ここで軽く返事をするのも嫌だったため「簡単なものでいいんで企画書送って下さい」と言い別れた。その日は前向きに検討するという形で終わった。
(但野仁・ただのじん)
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