ランチの後すぐにLineにて連絡が来た。細目に連絡を取りたいからLineのアカウントを教えて欲しいと言われたので教えていたのだ。断る理由も無いし、特に気にせず教えていたのだが、こんなにすぐに来るとは思って居なかった。ここからはLineが彼との連絡の主流となる。
『今日はありがとうございます。今週中には企画書を送ります』という内容である。若いのでSNSを使ってのやり取りは自然なのかと思ったが、半ば大丈夫だろうかという思いが強かった。しかし、私もアカウントを教えているので彼にとってはなんの違和感もない行動なのだろう。すぐに連絡をしてくる辺り、細目に連絡をしたいという辺りはやる気はあるのだろうが……大きな企業とはいえ、新入社員はこんなものなのか。実際、23歳と言えばフリーのライターとして仕事をしている人も居る。そういう人たちは、大概礼儀が正しい。そうで無ければフリーとしては働けないと思う。そう言えば、身分を明かすためFacebookを利用していたな。やはり、先にメールを送るのが常識なのではと思えてきた。まあ、他の上司も一緒に仕事をすることになりそうだし、悪い人間では無さそうだが……榛野氏のようにある程度の年齢になり、社長という立場になってもメールはいい加減で金儲けのことしか頭にない人間も居る。それよりひどいということはないだろうと考えていた。それに「友達感覚で仕事をするな」と言われたということは、上司は彼のこういった部分もわかっているのであろうから、もう少し話が大きくなれば岡田くんと私のやりとりでは無く上司の方とのやりとりになるだろう……。
しかし、次の週になっても企画書は来なかった。1日や2日ならば遅れてもそんなに気にはならない。実際にライターの扱いがひどい会社も多く、連絡すると言って来ないということは良くある。企画書が遅れること自体に問題はないが、そろそろ連絡をくれても良いのではと思っていたところだった。このままだと話自体が流れてしまいそうだ。何も始まっていない状態で流れてくれるなら、他にも仕事を抱えている状況であったので助かるという面もあった。あの時はやる気だけはあると感じたのに見誤ったなと思っていると『すみません、企画書ですが来週になります』という連絡Limeで入った。Lineで連絡が入ることにはもう、驚きは無かったので少し様子を見るかと思った。
そして週明けに『遅れてしまい申し訳ありません』という文面とともに企画書がメールで届いた。
企画書は簡単なもので良いと話していたわりにはしっかりとしたものであった。現在の電子書籍事情や、今後の個人出版の考察についてなどが書かれていた。私も自分自身で出版しようと考え始めてから、すでに出版していた方から話を聞いたり、多くの本を出版している方のブログを見たり、多く出版されているKDPで販売されているKDP出版本を読んでみたりしていたので、その考えを踏まえWEBマガジン自体は行ってもいいとは思っていた。更に企画書を読んでとりあえず始めてみようと考えられた。それは、企画書の文面からして、岡田くんが書いたものではないと思えたからだ。本当に上司が関わっていることが感じられた。それに、もう少し話をしてみてダメなら抜ければ良いとも考えていた。
だが、企画書にはお金のことや、オンデマンド印刷のことなど具体的な部分には触れて居なかったので、メールで問い合わせると『今週中にスカイプ会議できますか? そこで上司も交えて詳しく話します』という返事が来た。断る理由もないと思い日程を決めた。また、他にもやってみたいという作家さんがいらしたら声を掛けてみて下さいとも言われた。
(但野仁・ただのじん)
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