若者がツイッターに迷惑行為、犯罪行為を収めた写真をアップロードして、逮捕されたり停学になる事件が相次いでいる。コンビニのアイスケースに入った事件から、先日は学園祭の打ち上げで喫煙、飲酒した高校生18人がまとめて停学になっている。その類のニュースが出る度に馬鹿だなあ、といった声が上がる。当然馬鹿だとは思うが、ただの馬鹿な学生なのかと考えると、少し考える余地がある。
社会的な良識がある普通の大人であれば、馬鹿だ、と簡単に言える。しかし現在大人である人達の殆どは、学生時代にインターネットが無かった世代だ。インターネットが普及したのは、windows95が発売され、テレホーダイサービスが始まった1995年頃からだ。当時はブログサービスも無ければSNSもなく、携帯電話も普及しておらず手軽に持ち運べるカメラなどはなかった。 これらが学生でも簡単に揃え、簡単に扱える条件が揃ったのが近年になってからだ。テクノロジーの進化は目を見張るばかりだが、その弊害として違法行為や迷惑行為ですら気軽に写真を撮り、気軽にSNSへ上げられるようになってしまった。
「若気の至り」という言葉もある通り、大人になってから、かつての行為を恥ずかしく思う人も、反省する人も多いだろう。禁煙ブームのおかげで未成年の喫煙は格段に減ったようだが、今でも20歳まで全く飲酒をしたことが無いという人は逆に珍しい。それを親や学校に見つからないようにやっていたわけだが、パソコン、ケータイ、スマートフォンといったものが若者の身近にあるのが災いしている。社会的な良識が判断できない「若気の至り」でSNSに掲載してしまうのだろう。
勿論それは馬鹿な行為だが、もし今の40代以上の大人が若い時にスマートフォンやSNSがあったなら、同じことをする人は結構な数いたのではないだろうか。しまむらの土下座写真をSNSに掲載して逮捕されたのは、子供がいる中年の女性だった。大人になってもネットの世界に上げてはいけないものの区別がつかない人は、普通に存在しているのだ。
インターネットがこれだけ普及しているにもかかわらず、インターネット教育はまるでなされていない。子どものために不適切なサイトをブロックする機能はあるが、そんなものは一時しのぎに過ぎず、何の解決にもならない。物覚えのいい子供はすぐにブロックを解除して、よりディープなネット世界を簡単に発見してしまうものだ。違法な画像や動画などは、ちょっとしたテクニックを覚えてしまえばいくらでも見ることができてしまう。学校の裏サイトなどというものも作ってしまい、学校側も保護者も十分な対策ができていない。
今の大人は当然、インターネットの教育を受けていない。だから利用の仕方は完全に個人の判断ということになる。良識がある人は良識の範囲内での利用に留める。けれどそれができない、モラルが欠けている大人は子供と同じように違法データ収集する者もいる。犯罪行為をアップロードしたり、匿名をいいことに(実際は匿名ではないのだが、それすら知らない大人は多い)誹謗中傷、暴言を好き放題書き込んでいたりする。個人情報が流出したおかげで、同業者への誹謗中傷がバレてしまった作家の事件も最近あったばかりだ。
お馬鹿な若者を笑うのもいいが、子どもも大人もネット利用のレベルは大差無いように思う。国民全員一度インターネット教育を受ける必要があるのかもしれない。尤も国民全員が対象となると、教育する側の人間が居ないということになってしまう。知識のある人は、ハッカーやクラッカーへと進んでいく可能性がある。技術の進化に、誰も追いつけないのだ。
(戸次義継)