エンジニア会社社長の取材は内容が不十分なまま時間が来て終わった。
榛野氏とはこの頃はもう関わりたくないと思っていたので、テープ起こしまでだと値段が違うという話を再度したところエンジニア会社社長からはほとんどお金をもらっていないという話をされた。実際にこれでは1文字1円というかなりの格安仕事になってしまう。これに時間をかけると生活ができないのも事実であり、そういった話も少し大げさにすると「これ以上は出せないんです」と言われるだけだった。後にも先にもライティングのお金が足りないという話をしたのは榛野氏だけである。もうこの人とは二度と関わらないと心に決めていたので、その時は好き勝手に言えた。

ちなみにこの原稿に関しては「ライターの書くものだと思えない」と榛野氏から言われ大きく直しということになったのだが、取材内容が足りないという指摘にプラスして『など』が漢字ではない、『ほど』が漢字ではないという理不尽な理由が多く書いてあった。取材内容が足りないのは彼のせいなので全く理不尽である。しかも、榛野氏は漢字で書けるものはなんでも漢字が良いと思っているようで、嫌味のように漢字ばかりを使い、そのうえできる限り堅苦しい文章にするとあっさりOKが出た。エンジニア会社の社長からは20代の女性社員に多く居るという話があったので、柔らかく書いていたのだが……と思っていたら、案の定もう少し柔らかくしてくれと再度修正があった。その際に腹立たしくなったので「次も直しがあるならばテープを渡すから、他のライターに頼んでほしい」と言うと「そうすると、頼む人が居なくて、私が直さなければいけないのでお願いします」と急に下手に出てきた。この件ではごちゃごちゃと揉めて榛野氏とはすっかり険悪になってしまった。

WEBマガジンに話を戻すとSkype会議にて岡田くんから「どうしても、東京へ行く日程をとれない」と言われた。しかし、企画は元の通り行いたいので本の内容を7人で決めて欲しいとも伝えられた。お金に関してはWEBマガジンの収入は会社側、それを自分たちの著書として売り出す場合の印税は全て著者側ということになった。また、雑誌の発刊日に関しては会社で決められていたため、その日に合わせて発売できるように内容を決めてほしいとお願いされた。期間は2週間しかなかったため、もともとは岡田くんの東京出張に合わせて顔合わせするはずだった日に7人集まり内容を決める。内容は自分の中で一番お気に入りのストック作品を提出し、その作品を連載形式にするというものでまとまった。そうするしか2週間では間に合わないと思われたからだ。しかし、内容を私達に任せっぱなしにするのもいかがなものかと7人の間では不満が上がっていた。

とにかく、文芸誌の内容はできた。それを岡田くんに伝えると小説の内容はこちらで確認するので、そのためのメーリングリストを作成するという話になる。そのメーリングリストを使って、岡田くんの会社側だけでなくお互いの作品を講評・校正し合いましょう。となったのだが、メーリングリストは待っていてもできる気配がない。それに対しての不満がWEBマガジンのメンバーから私の方にメールで送られてきたりもしていたが、なんとか間を取り持とうとしていた。岡田くんをかばうというよりは、2回も個人出版関連で失敗するのは嫌だという思いが強かったからだ。

そんな中で「岡田さんにメールを送ったら『初めまして、おかもとです』って返ってきたんだけどあの人やる気あるの?」というメールがあるメンバーから送られて来た。そして、「名前を名乗らないということが、ものすごく不愉快だ」とも言われた。それに関しては納得である。それに続くように、なんでまだ連絡が来ないのだというメールも増えたため、それを岡田くんに伝えると「すみません、作業が遅れています」という返事が私宛に来る。その時点では全員のメールアドレスを知っているので、全員に送るのが普通だと思われるが彼はそうしなかった。そして、このままでは上手くいくわけがないと思い「発売日をずらした方が良いと思うのですが」と伝えると、「発売日はずらさずともなんとか間に合うように設定します」と返事が来る。どうするのが良いのだろうかと考えているとメンバーの一人から岡田くん宛てに辞めるということをメールで送ったということを聞いた。これをきっかけに、個人出版なのだから自分たちで出した方が良い。大手のサイトがついて無くても1人が抜けて6人で宣伝すればやっていけるのではないかという話が出てきた。もう一度皆で話し合ったところ全員が岡田くんの会社とは組まない方が良いと賛成してくれたのでWEBマガジンの話は断ることとなった。

(但野仁・ただのじん)

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