筆者はこれまでに当欄で、東京法務局訟務部付けの保木本正樹検事が山口地検の三席検事だった2001年5月、在日韓国人の男性被疑者に対する取調べ中に、卑劣な民族差別発言を浴びせたという疑惑について、繰り返しレポートしてきた。10月1日付けの当欄では、筆者がこの疑惑について、最高検の監察指導部に情報提供し、調査することなどを求めたところ、受理されたことも報告した。

筆者はその後、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」に基づき、小津博司検事総長(担当課は最高検企画調査課)に対し、筆者が保木本検事の民族差別発言疑惑に関する情報提供をした件について、検察庁内でいかなる処理がなされたがわかる文書の開示請求を行った。筆者の情報提供をうけ、最高検の監察指導部がちゃんと適切な調査などを行ったかを確認するためである。これに対し、小津検事総長(同前)が先月19日、一部の文書を開示することを決定し、筆者に通知してきたのだが、その内容は大変腹立たしいものだった。

通知によると、開示されるのは、筆者が保木本検事の疑惑を情報提供するために最高検監察指導部に郵送した文書のみ。当然ながら、そんなものはわざわざ開示してもらうまでもなく、筆者の手元に控えがある。つまり、小津検事総長(同前)は事実上、筆者が求めた情報を何一つ開示しないも同然の決定をしたわけだ。

しかも、通知によると、それ以外の文書を開示しなかった理由は、該当する文書を「保有していないため」という。これはつまり、筆者が情報提供した保木本検事の民族差別発言疑惑について、最高検の監察指導部が何ら調査などをしていないことを意味する。何ら調査などをしていないからこそ、調査した結果などをまとめた文書が何も存在しないのだ。要するに検察庁としては、この疑惑を闇に葬り去る判断を下したということである。

検察改革の一貫として、2011年7月に新設された最高検の監察指導部。その役目は、検察庁職員の違法行為や不適正行為に関する情報を内外から集め、必要に応じて事実関係の調査や指導を行うことだとされる。だが、同部がちゃんとマジメに仕事をしているかは疑わしいというのは、10月1日付けの当欄でも指摘した通りだ。それだけに筆者も今回の決定は「想定内」ではあるが、腹立たしいことに変わりはない。この現役検事の疑惑が闇に葬り去られるのを黙認する気はないので、また別の手段で追及し、当欄でも続報をお届けするつもりだ。

なお、保木本検事に民族差別発言を浴びせられたことを訴える在日韓国人の男性・湖山忠志氏(29)は、昨年7月に山口地裁の裁判員裁判で懲役30年の判決を受けたが、一貫して無実を訴えており、現在は広島高裁に控訴中。この事件は冤罪だと示す事実が数多いことも当欄で何度かお伝えした通りだ。控訴審の判決は来年1月20日に宣告されるが、裁判の結果についてもまたレポートさせてもらう予定だ。

(片岡健)

★写真は、筆者が開示請求した文書について、最高検が一部開示する決定を通知する文書
【関連記事】
新聞、テレビは報じない山口地検検事の民族差別発言疑惑
http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=1742

冤罪を訴える在日韓国人男性が取調検事の「下等な人種」発言を最高検に告発
http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=2983

検事の「民族差別発言」を最高検に告発した在日韓国人男性が怒りのコメント http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=3036

民族差別発言疑惑検事に関する筆者の情報提供を最高検監察指導部が受理
http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=3112

頼りにならない最高検監察指導部
http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=2101