歌手の華原朋美が、熱烈な求愛を受けてきた竹田恒泰を、公衆の面前でフッたとして話題になったが、その竹田という人は、元皇族の家系というのを売りにして話題になっているが、実はもともと「山本七平賞」の受賞者として論壇の一部で注目されていたことを、前回に紹介した。
この賞に名を冠した山本七平といえば、イザヤ・ベンダサンという架空のユダヤ人を騙って「日本人とユダヤ人」という本を書いてベストセラーになったが、外国語の翻訳は滅茶苦茶だし、比較文化論や宗教学や民俗学の見地からも、こじつけやデタラメばかり。
こんな人を賞賛して『山本七平の知恵』という駄文を書いていたのが、あの渡部昇一上智大学教授というのだから、もうお笑いの域である。これは知恵の前に「悪」が欠落した誤植ではないかといわれたものだ。
この山本七平は、原稿を書くさい自らホテルに缶詰にしてもらうことを希望し、そのさい出版社の経費で飲み食いしまくるというセコイことをしていたから、編集者たちは、いちおう本が売れているので我慢してはいたが、内心では不愉快だったとの証言がある。
このセコイ山本を称賛する渡部という人は、人気アニメ『ちびまる子ちゃん』の主題歌で、大人にもカラオケで人気があった大ヒット曲「踊るポンポコリン」の替え歌により、「♪上智大からボワッと、インチキおじさん登場、ナベショウに言わせればヒットラーは偉い人、そんなの非常識、タッタタラリラ」と皮肉られたとおり、インチキ論法を駆使したり、ナチスの功績を称賛したり、トンデモな人であった。
そして、渡部昇一は田中角栄崇拝者であり、ロッキード事件のさいは擁護論を展開し、「暗黒裁判」とまで非難したのだが、そのデタラメぶりを立花隆から徹底的に糾弾された。これについて立花は著書『論駁 ロッキード裁判批判を斬る』にまとめているが、同書は、やはり田中角栄擁護論を展開していた山本七平に対しても、そのインチキぶりを糾弾していた。
これについて検証すると、ロッキード裁判への批判は他にもあり、裁判に問題があることは確かだが、しかし、山本は渡部と同様に、法の基礎的な知識が欠落しているので、裁判批判が変なことになっているのだ。
こんな山本七平の名を冠した賞を受けたのが、憲法学が専門の学者として大学に勤務する竹田恒泰というわけだ。そんな彼の講釈は、ほんとうに学者なのか、よく雇った大学があるものだと呆れられているのが現実であるが、やはり元皇族の家系というのが有効だったのだろうか。
とにかく、インチキ法律論を展開した人の名を冠した賞を受けたインチキ法学者、ニセユダヤ人とニセ皇族、ということなら実に受賞者として相応しい。この竹田と、女系天皇問題で対立したため、「ニセ皇族」と非難というか揶揄をしたのが、漫画家の小林よしのり。
しかし小林よしのりに、竹田恒泰をとやかく言う資格はない。小林よしのりは、昔売れない推理作家の井沢元彦が、出版社のネトウヨ向け商売の企画に乗って、手垢の付いた朝日新聞非難の本を出したさい、これとタッグを組んでいた。そして相変わらず下手糞な昔のポンチ画ふうの漫画を提供しながら、井沢とかけあい漫才をし、その歴史認識から、外国の文化人からも無知とトリックを指摘されたものだ。
この井沢の、ニワカで付け焼刃な受け売りのデタラメとインチキについては、既に指摘がさんざんされているので今さら繰り返すのもバカらしいから省略するが、笑ってしまうのは井沢の「ぼくは山本七平先生の本を読んでいたから朝日新聞に騙されなかった」という発言だ。山本がどれだけデタラメとインチキばかりであるかという問題はもちろんだが、ある人の本を読んで鵜呑みにして、それに基づき他を批判するというのだから、この人の知能とか頭の構造は疑われて当然であり、小説が売れないから仕方なく商売でやっているとしても、お粗末である。
だから、彼は改名してイザヤ元彦と名乗るべきだが、そんな男が得意になって説く話に、ひたすら感心して頷き続ける小林よしのりも、いくら出版社からの企画に乗せられたとはいえ、お粗末過ぎ、見苦しすぎであり、それでいて山本七平賞の竹田恒泰を批判しているのだから、なんとも滑稽である。
そして、小学館ほどの大手出版社が、ここまで情けない商売をしているのだから、実に不可解である。
(井上 靜)