知り合いのプロゴルファーは、体温より冷たいものは摂らないという健康法を実践している。健康法の専門家に、8万円払って教わったという。彼は徹底していて、ヤクルトも温めて飲み、野菜も冷たいものは食べない。温野菜を食べる。飲み会の時は、最初から、焼酎のお湯わりを飲んでいる。
彼ほど徹底はできないが、少し取り入れてみることにした。1杯目のビールははずせないが、その後はお湯わりを飲むことにした。温かいものでもカフェインの強いものはよくないとのことで、コーヒーを飲むのをやめた。それまで、のべつまくなしにコーヒーを飲んでいたので、自分でもよくないと思っていたのだ。
眠りが快適になった。トイレに何度も起きるのは歳のせいと諦めていたが、それが1回程度になった。だがこれは、当たり前といえば当たり前であった。それまでビールばかりをガバガバ飲み、その後は水割りを飲んでいたのだから。
見る夢も変わった。謎を解くような夢。罠から抜け出そうとする夢。それは物書きの性らしく、変わらない。だがそれまでは、いかにも寒々しい夢だったが、暖かい夢に変わった。暖かく、謎を解いたり、罠から抜け出そうとするわけだ。
だがよくよく考えてみると、昔は寒い時には熱いものを飲んでいたではないか。日本酒の熱燗である。
「冬に暖かくした部屋で、冷えたビールを飲むのがいいんですよ」
そんな言葉を聞いたのは、1980年代だった。やはり慶応の学生は言うことが違う、と感心したことを覚えている。
時代もそのように変わってきた。冷やして飲む吟醸酒のほうが出回るようになり、焼酎もロックか水割りで飲むのが普通になった。たまに、お湯わりを頼むと、「寒いの?」と心配される始末だ。
日本の経済が膨れあがっている時にできた習慣だが、バブルが崩壊してからも変わらなかった。それはそうかもしれない。暖かくしようが、冷やそうが、値段は変わらないのだから。
省エネで、部屋の温度をそれほど高くしないようになっても、同じようにしていたのだから、一度根付いた習慣というのは恐ろしいものだ。
その健康法では、夏でも冷たいものは摂らない、ということだ。
どこまで取り入れるかは、夏までに考えたい。
(深笛義也)