地域の観光資源をどう活かすか、ということで参考になるのが、博物館になった網走監獄だ。明治時代からの網走刑務所の建物が保存公開されている。
受刑者や看守の蝋人形付きで、大浴場や食堂の様子などの実物が見られる。
監房に入ってみることもできる。なぜだが、妙に落ち着く。
農場や耕転庫、味噌醤油蔵などの様子を見ていると、こんなところで暮らしてみたいなあ、とさえ思えてくる。煉瓦造独居房なども、思索にふけるのによさそうだ。

JR網走駅からバスで10分。交通の便はいいとは言えないが、平日にもかかわらず、入場者の数は多い。
映画『網走番外地』シリーズなどで、有名。やはり、監獄の王者のイメージがある。
1日いても飽きないというのは、私くらいかも知れないが、知床観光と組み合わせて、一つの見所として押さえておこうという人は多いだろう。
監獄歴史観では過去の映像や資料を見ることもできる。時期が限られているが、麦飯と焼き魚の監獄食を食べることもできる。

実際の網走刑務所は、1984年に改築され、今も現存している。
博物館の網走監獄は、そこから移築されたものだ。登録有形文化財となっている建物も少なくない。

だが、少し残念なことがある。
網走刑務所にいた有名な受刑者といえば、日本共産党の徳田球一や宮本賢治だ。
看守に抗議する、2人の蝋人形なども置いてほしいところだ。

吉村昭の小説『破獄』でモデルとなった、脱獄の天才、白鳥由栄。それが最も難しいと言われている網走刑務所でも脱獄を成し遂げた。
その脱獄シーンは、蝋人形で再現されている。
白鳥は、手錠と監視口に味噌汁を吹きかけ続け、味噌汁に含まれる塩分で鉄を錆びさせて脱獄した。
錆びた手錠や監視口も、展示してもらいたいところだ。

忌み嫌われる監獄を、観光資源にするアイディア。しかも監獄の中でも忌み嫌われる脱獄もさらけ出すしたたかさは、学ぶところは多い。

(深笛義也)