亀田兄弟が日本ボクシング界から“追放”される可能性が出てきた。
発端は昨年12月の亀田大毅のIBF世界タイトルマッチで起きた運営のミスだった。対戦相手のソリスの体重が契約をリミットオーバーしたにもかかわらず試合を強行。大毅が負けた場合、IBF王座は空位になると説明されていたのが、実際に負けると王座を管理するIBFが「王座は移動しない。大毅の防衛だ」と記者会見してしまった。さらに一夜明けると当の亀田陣営までが「実は試合前、王座の移動はないと聞いていた」と言い出した。
これに恥をかいたのが日本で試合を管轄する日本ボクシングコミッション(JBC)と、そのルールを大々的に報じたTBSやスポーツ紙だ。亀田興毅はブログでこの件をマスコミの確認ミスとして批判した。
しかし、亀田兄弟は試合前、マスコミと同じように「大毅が負けたら王座は空位になる」とハッキリ書いており、興毅、大毅の兄弟のほか、オフィシャルサイト「KAMEDA 3BROS.」でも同様だった。試合から数日後、オフィシャルサイトはこんな訂正をしている。
「お詫び」
スタッフブログ担当の亀田プロモーション・スタッフです。
12月2日付の当ブログで
「ソリス選手が勝利した場合はIBF、WBA共に王座が空位という状態になります。」との文を明記いたしましたが、この文は私が、報道されていた記事から引用したもので、この一文には誤りがございましたので、削除させて頂きました。私の認識不足により、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
マスコミは興行サイドから説明を受けて報じたのに、それを引用して発表したとはおかしな話だが、ここでもマスコミが悪いという主張になる。はたから見れば自分たちに都合よく発言を変えたようにも見えるのだが、結局、JBCは「興行の主催者としてルールをきちんと伝えていなかった」ことを問題視し、月末にも何らかの処分を下す見通しだが、ボクシング関係者からは「最悪、業界から出て行ってもらうことになるかもしれない」という話が聞かれる。
「JBCを怒らせたのは、今回の問題で調査した際、亀田側が弁護士を同伴してケンカ腰で出てきたことでした。本来は謝罪してくれば注意で終わるものが、亀田側は俺たちは悪くないという姿勢で、まるで法廷闘争のような形で打ってきたので、こうなるとJBCとしては引くわけにはいかなくなったんです。JBCも強力な弁護士を雇って対応していると聞きます。これまでトラブルメーカーとして知られた彼らがそれでも追放されてこなかったのはJBCの温情もあったんですが、完全に決裂してしまって修復は不可能。そうなると分が悪いのは亀田ですよ」(スポーツジャーナリスト)
何しろJBCはレフェリーやジャッジ、リングアナなど試合運営に欠かせないスタッフを派遣する役目も担っており、JBCが背を向ければ亀田側は国内でボクシング興行を成り立たせなくなってしまうのだ。
それにしても、ここのところボクシング界には不可解なことばかり起こっている。素人が見ても負けていた選手が判定勝ちしてみたり、世界王座はいまやWBA、WBC、WBO、IBFと4つも並び、スーパー王者だの暫定王者だのわけのわからないものが作られ、チャンピオンベルトのバーゲンセールだ。
ジャーナリストの片岡亮氏は「ファンの間でも業界への不満は多く聞かれています。日本ボクシング界は強い選手を育てるだけでなく、抜け道だらけのルールをどうにかするべきで、たとえ和を乱す身勝手な連中がいても揺るがないものにしていかないと、世間に見下されてしまう」と話す。
業界と完全に決裂してしまった亀田兄弟に対して、JBCの采配はどうなるのか。
(鈴木雅久)