「ヤイリギター」の社長、矢入一男(やいり・かずお)さんが5日、多臓器不全のため死去した。81歳だった。ポール・マッカートニーも「K・ヤイリ」ブランドを愛用していた。
沖縄・石垣島出身のバンド「BEGIN」と共同して、三線とギターを融合させた、全く新しい4弦楽器「一五一会(いちごいちえ)」を開発したことでもヤイリギターは知られている。
ずっとギターを握っていたBEGIN。2000年に『ビギンの島唄-オモトタケオ-』を出してから、三線を持つようになった。
三線を弾くようになると、指は5本なのに、なぜギターの弦は6本なんだと疑問に思う。
一方、三線を弾いていると、もっと低音がほしい、音の広がりがほしい、と思う。
そこでギターを4弦にしてチューニングを三線のようにしたら、どちらの悩みも解消した。
これはウチナーンチュの発想としては珍しくないと、BEGINの比嘉栄昇は語っている。
戦後、沖縄では三線が焼けてしまい、米軍から支給されたクッキーの缶にパラシュートの紐を張って「カンカラ三線」を作った。なければあるもので作る、という感覚だ。
だが、「一五一会」を製品化するときに、ヤイリギターの力がなくてはできなかった、賞賛されるべきはヤイリギターだ、とBEGINのメンバーは強調する。
手作りで一つ一つ丁寧に作っていくヤイリギターだからこそ、「一五一会」は生まれた。
指1本で弾ける楽器の誕生で、誰でも音楽が楽しめるようになった。
人気の高まりで、ヤイリギターには「一五一会」製作現場見学ツァーまでできた。
「一五一会」は、被災地でも親しまれている。
心を込めて楽器作りをしてきた、矢入一男さんが音楽に残した功績は大きい。
(深笛義也)