2009年に鳥取県で2人の男性が「不審死」した事件で、強盗殺人罪などに問われ、一昨年12月に鳥取地裁の裁判員裁判で死刑判決を受けた元スナック従業員、上田美由紀被告(40)。一貫して無実を訴え、現在は広島高裁松江支部に控訴中だが、今月20日の控訴審判決公判に先立ち、現在発売中の「紙の爆弾」4月号に独占手記を寄稿している。
手記を発表したいと考えた時、獄中で読んで「食事もとれないくらい泣きまくった」というほど感動した本『女性死刑囚』(深笛義也著)の版元・鹿砦社が発行する雑誌で、拘禁者の間でよく読まれている同誌への掲載を希望したという上田被告。手記の内容は、2009年秋に詐欺の容疑で逮捕されてから足かけ5年に及ぶ拘禁生活の話が中心だ。
たとえば印象深いのが、第一審が終わるまで勾留された鳥取刑務所で不安のために頭髪が「落ち武者状態」になるまで抜け落ち、食事もとれなくなった際のエピソード。この時に世話になった女性刑務官が大好きで、「小さい母ちゃん」と呼んでいたという上田被告。「小さい母ちゃん」が退職し、会えなくなった時のことを思い出すと、今も悲しい気持ちになるという。
また、事件の注目度が高かったこともあり、獄中の上田被告のもとには、全国各地の刑務所・拘置所の拘禁者たちから手紙が殺到したという。中には、女性の裸の絵などが描かれた手紙など、「え~って思うような内容の物もあった」そうだが、他の拘禁者から手紙が沢山届いたことは「嬉しかった」。自分と同じように裁判員裁判で裁かれ、1回1回の公判が「怖かった」と綴られた拘禁者の手紙に共感し、「刑務官もびっくりするくらい」泣いたこともあったという。
マスコミに対しては、「本人と会いもせずに真実とは違う報道はやめて欲しい」「裁判員の方々はものすごく先入観を持ってしまってから裁判員になるのだから、もう少し考えて欲しい」と批判を展開。だが、一方で面会に殺到した記者の中には、「本当に疑問をぶつけたり、意見や気持ちを言ってくれる人もいる」という。そして記者との面会で記憶に残った出来事を振り返りつつ、何人かの記者への感謝の思いも綴っている。
この他、何かと比べられることが多かった「首都圏連続不審死事件」の木嶋佳苗被告(39)について、比べられることへの抵抗感を綴りつつ、「本当に心から頑張って欲しいと思う」とエールも送っている上田被告。マスコミでは、巨体の怪人物に見える写真で紹介されることが多かったが、同誌では手記と共に子供たちと一緒に撮影した爽やかなプライベートフォトも公開している。来るべき2度目の判決を前に、マスコミに「西の毒婦」と呼ばれた上田被告の実像を推察する参考になる手記だ。
(片岡健)
★写真は、上田被告が「紙の爆弾」に寄稿した手記。便箋20枚に及んだ。