3月15日、立川志ぃさー(たてかわ しぃさー)の公演が、渋谷のリエゾンカフェで行われた。
立川志ぃさーは、立川志の輔の番外弟子の、うちな?噺家(はなしか)だ。
落語の本拠は、江戸(東京)と上方(大阪)。地方出身者はそのどちらかで修行するが、地方の持ち味を芸に現すということはない。
だが、立川志ぃさーは、沖縄の語り口を活かし、笑わせながら、私たちの知らない沖縄を伝えてくれる。
それで、うちな?噺家なのだ。
この日、第1席で語られたのは、昔から沖縄にいるハブと、ヤマトンチューが持ち込んだマングースとの闘い。
第2席で語られたのは、美ら海水族館の近くにある「美ら海水族館」という名の鮨屋のおばぁと観光客とのやりとり。
抱腹絶倒しながら、きれい事ではないウチナーンチュのしたたかさ、その底流にある哀しさまで伝わってくる。
立川志ぃさーは改名する前、藤木勇人の名で活動していた。
沖縄新喜劇の草分け「笑築過激団」や、本土にも沖縄の風を吹き込んだ「りんけんバンド」などで活躍。
2001年には、NHKテレビ小説「ちゅらさん」に、沖縄料理店「ゆがふ」店長役で出演した。
2002年には、「琉球チムドン楽団」をプロデュースしている。
熊本での公演で藤木と繋がりを持って、実際に「ゆがふ」という名の沖縄料理店を開いたのが、東濱弘憲である。
父親が沖縄・与那国出身である東濱は、熊本で「琉球の風」というイベントを立ち上げた立役者だ。
今年、第7回を迎えることになる「琉球の風」には今まで、知名定男、ネーネーズ、大島保克、新良幸人、下地勇、BEGIN、THE BOOM、宇崎竜童などが出演してきた。
東濱弘憲は一昨年、がんで亡くなった。
病と闘いながらイベントを開催。その後は、志を受け継いでイベントは続けられている。
東濱弘憲の生き様とイベントが、『島唄よ、風になれ! 「琉球の風」と東濱弘憲』として1冊の本にまとめられている。
その中で、立川志ぃさーとなった藤木勇人も、沖縄のこと、東濱との関わりを、熱く語っている。
(深笛義也)