浦和レッズのサポーターによる「Japanese only」の横断幕は大々的に報じられ、厳罰に処された。あからさまな差別意識があって横断幕を掲げたのなら処罰されて当然であるし、過剰反応でもなく無観客試合といった処分は妥当なものだ。

私は、この「Japanese only」を何度も見たことがある。一つはネットが普及し始めてしばらく、日本語のみのサイトという意味で「Japanese only」と、個人のWEBサイトに頻繁に書かれていた。それに対してクレームが付けられた、という話はあまり聞かなかったが、表現が悪いと広まったのか、あるいは日本語だけのサイトが珍しくなくなったせいか、こう書かれるWEBサイトは殆ど見なくなった。10年以上公開し続けているサイトでは、当時の名残として今も残っているところもある。

もう一つは、ネットゲーム上でのことだ。プレイヤーが自分一人で、他のキャラクターがコンピューター操作のオフラインゲームと違って、オンラインゲームでは操作している人同士の協力が不可欠となる。ところが日本人が多いゲームでは「JP only」とコメントを書いて、外国人お断りにしている人がいる。

「JP only」と書く理由は様々だが、単純に英語ができないので意思の疎通が取れない、難易度が高いものに挑戦する際、指示が伝えられないといった理由が一つある。またはネットゲームユーザーで多いのは米国人(NA)であり、我が強い個人主義的な米国人と文化の違い、考え方の違いで協力し合えない、といった理由が主なところにある。白人だから、黒人だから、アジアンだからといった人種差別的な意思はそこにはない。大体ネット上では言語以外、肌の色も出身地もわからないのだから。

逆に日本語さえわかるのなら、問題の半分は解決できる。私が遊んでいたゲームでは、米国人の友人とタイ人がいた。完璧な日本語でチャットが打てるわけではないが、伝えようと一生懸命日本語で文章を打ってくれば大体理解できるものだ。私も怪しい英語で返事をしていたが、問題になるようなことも無かった。文法がおかしかろうが、英単語を並べて何とか伝えようとすればどうにかなるものだ。日本語も英語も出来ない台湾人もいたが、日々必死に日本語を理解しようとしたせいか、やがて驚くほどに日本語がうまくなった。

そうやって理解しあえる外国人がいた反面、いくらコミュニケーションを取ろうとしても理解しあえない外国人もいた。日本人は仲間全員で利益を分かち合おうとするが、米国人は自分が一番、と譲らないことも多かった。だから私は「JP only」とは書かなかったが、書く人の気持ちもわかる。差別的な意思がないとすれば、余計なトラブルを起こさないよう、住み分けをしようという意識だ。「JP only」に反応して差別だ、という外国人もいなかった。逆に「jap」と書く米国人もいたが、差別じゃないのか、と聞くと大慌てで否定し、単にJapaneseと打つのが面倒だっただけだ、ということもあった。

そのゲーム内でこんなジョークが流行ったことがある。ある日本人が「JP onry」と表記したところ「Not onry, It’s only!」と外国人に指摘され、それをきっかけに打ち解けるというものだ。これは日本人がLとRの区別をし難いというジョークの変化形だが、いつか差別なんてものは、ジョークにして済ませる世の中になって欲しいものだ。

(戸次義継)