春。さまざまなものが蠢き出す季節だ。それが、生命の息吹だけだったらいいのだが。
4月11日に政府が閣議決定したエネルギー基本計画で、原発が「重要なベース電源」と位置づけられたことで、原発推進派が蠢きだしている。
麻生太郎副総理・財務・金融相は18日、川内原子力発電所について、「再稼働は決して悪いことではない」と言った。
川内原発の周辺では「歴史の中で津波が起きたことはないのではないか」と言うのだが、何が起こるか分からない、というのが福島原発事故の教訓だったのではないか。
川内原発で心配されるものには、津波だけでなく火山活動もある。
桜島は、1万2800年前に大噴火している。桜島から90キロの熊本県五木村には厚さ35メートルの火砕流の跡があるが、川内原発はその範囲内にある。
火砕流が原発を襲ったらどうなるか? 火砕流で原子炉建屋が壊されると、燃料プール内の核燃料が燃えながらまき散らされる。
人がそこにいることはできなくなり、事故収束の作業はできなくなるのだ。
九州電力は、「原発の運用期間の今後30年間は大噴火の可能性は低い」と説明している。
低いということは、可能性はゼロではない。
福島第一原発が、津波によって原子炉が冷却できなくなる可能性については、06年に、共産党の吉井英勝衆院議員から指摘されていた。
それなのに、安全だとして何の対処も取らなかったのが、麻生太郎も内閣にいた、第1次安倍政権ということを、思い起こす必要があるだろう。
経済産業省は17日、今夏の電力需給が昨年より厳しくなるとの見通しを正式に示している。「予備率」が、電力9社計で4.6%と昨夏を1.6ポイント下回ったというのだが、そのようなデータを今さら信じる者がいるだろうか。
関西電力は、2011年には25%電力が不足すると言っていた。だが動かせる火力発電所を停めたままのデータで計算するなど、まやかしだった。実際に電力は不足していない。
関西経済連合会と九州経済連合会は15日、連名で、原発の一刻も早い再稼働を求める意見書を、首相官邸や経済産業省のほか、原子力規制委員会にも送付している。
純粋に科学的立場から原発の安全利用を図るというのが一応の建前になっている原子力規制委員会に、経済界の利害を推し量ってもらおうというのだから、恐れ入る。
原発推進派の蠢動を許してはならない。
(深笛義也)