日本の最西端、沖縄の与那国島で、19日から、陸上自衛隊沿岸監視部隊配備に向けた施設建設工事が始まった。1972年の返還以降、沖縄県に自衛隊の基地が新設されるのは初めてだ。
日本全国に行っている筆者だが、与那国は、最も魅力的な場所だ。異国に来たと、感じさせる。

沖縄には、交番のない島、信号のない島も珍しくない。
大きな祭りなどがあると、警備のために警官がやってくる。
「いつも島ではノーヘルでバイク走らせてますけど、今日はおまわりさんがいるんで、皆さん、ヘルメット被ってくださいね」
そう言って主催者が笑わせたりする。
交番がなくても問題がないことに、島の人々は誇りを持っている。

与那国には、最西端なので交番はあるが、警官は2人だけだ。ミニパトが走っているのを見たことがある。
平和な島に自衛隊が来るのは嫌だな、と思うのは責任のない旅人の感傷だろうか?
自衛隊は、与那国町から誘致要請したもの。
戦後1万人余りが暮らしていた与那国は、減少の一途をたどり、現在の住人は1500人ほどだ。
経済の活性化を狙って、自衛隊を呼んだのだ。

だが、住民の意識としては、自衛隊誘致への反対と賛成は2分されている。
自然に囲まれた平和な島に、自衛隊は馴染まないと考える人も多いのだ。
19日の起工式の際には、小野寺五典防衛相の乗った車に、抗議する反対派の住民が詰め寄る場面もあった。

東日本大震災でも活躍した自衛隊を、頭から否定するつもりはない。
それでも島の活性化の手段は、自衛隊誘致だけだったかと疑問に思う。
与那国島は、沖縄本島よりも、台湾にずっと近い。
台湾が日本に統治されていた頃は、与那国は物流の中心として栄えた。
現在、与那国から台湾へ、船でも飛行機でも直行便はない。与那国から台湾へ行くには、一旦沖縄本島に行かなければならない。
これは、与那国には入国審査の施設がないからだが、それを設置して直行便を作れば、観光と国際交流の拠点となる。
そのほうが、与那国にとっては幸せではないかと思う。

(深笛義也)

★写真は、与那国にて、三線1人ライブをやってくれた、おばぁ