このところ、憲法9条が話題になることが多い。
4月9日には、「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会(事務局・神奈川県相模原市)に、ノルウェー・オスロのノーベル委員会から連絡があり、憲法9条が正式に候補になったと報じられた。
一方、高知では、毎年の憲法記念日に「守ろう9条」というメッセージを車体に掲げた「平和憲法号」と名付けられた路面電車を市民団体が走らせてきたが、「意見広告と取られる」として、土佐電鉄が今年は中止することを決めた。
しかし実際に憲法9条が危機に瀕している南スーダンのことは、不思議なほど語られることが少ない。
陸上自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に派遣されている南スーダンでは、政府軍と反政府勢力との戦闘が拡大している。
22日には、反政府勢力が占領しているユニティ州ベンティウで、200人以上の住民が殺害された。
ジョングレイ州の州都ボルでは17日、デモ隊を装ってPKO基地に近づいた武装集団が発砲し、PKO部隊が応戦し戦闘になっている。
自衛隊が駐屯しているジュバでも、戦闘があった。
自衛隊の宿営地があるPKO施設に、避難民がなだれ込んできたこともある。
そのような状況下、自衛隊員は「正当防衛や緊急避難に該当する場合は命を守るために撃て」と命じられ、武器と銃弾を携行している。
だが自衛隊が、正当防衛や緊急避難で撃った場合、相手も撃ち返してきて交戦になるだろう。
この瞬間に、自衛隊は戦争当事者となり、憲法9条は空文と化す。
あるいは目の前にいる避難民に、銃弾が浴びせられたらどうするのか。
正当防衛や緊急避難ではないから、拱手傍観するしかないのか。
人道的に言って、それは正しいのだろうか。
憲法9条を遵守するなら、自衛隊は撤退すべきだが、それもまた人道的に正しいのかという疑問がわく。
危機に瀕している、憲法9条。土佐電鉄にさえ拒否された、憲法9条。ノーベル賞が届く日は来るのだろうか。
(深笛義也)