遠隔操作ウイルス事件で逮捕され、無実を主張して保釈されていた片山祐輔被告が、真犯人を名乗るメールを報道機関などに送ったが、それが自作自演であることが発覚し、5月20日、「自分が犯人でした」と出頭した。
彼の無実だと信じ、ここでもそう書いてきた筆者としては、間違ってました、ごめんなさいと、頭を垂れるしかない。
佐藤博史弁護士は、記者会見で語った。
「これは弁護士をしていれば必ず起きること。それで被疑者を非難するようでは弁護する資格はない」
勇気ある発言だと感じる。片山被告は国選弁護人への切り替えを申し出たが、佐藤弁護人は、「私は見捨てたりはしない」と弁護を続けると語った。
足利事件で無罪判決を勝ち取るなど、冤罪と取り組んできた佐藤弁護士にとって、今回の出来事は、かなり痛恨だったのではないか。
裁判所が検察とべったりだというのは、よく言われてきたことだ。
それがこの間、微妙に流れが変わってきた。
それは、袴田巌さんの再審開始と即時釈放を静岡地裁が認めたことや、片山被告が釈放されたことなどに現れているのだが、その片山被告が真犯人だった。
多くの人々が指摘しているように、検察が抵抗していた保釈が認められたからこそ、彼が真犯人だと分かったという皮肉な結果。
それでも、検察の主張通り、彼が犯人だったのだから、流れが逆行してしまわないか心配だ。
冤罪を訴えていくことは、とても難しい。
被告は、犯行との関連が疑われる事実があるから、起訴されている。
もちろん、事実といっても、かなり曖昧なものもあるのだが。
そして、冤罪が疑われるケースでは、犯行を行ったという確実な証拠も、行っていないという確実な証拠もない。
いったん起訴されてしまえば、無罪を勝ち取るには、行っていないという証拠を見つけるしかない。それが見つかるまでは、ひたすら信じていくしかない。
片山被告に怒りを感じてもいいはずの佐藤弁護士が、非難しない、としていることは注目に値する。佐藤弁護士の姿勢は、正しく評価されるべきだろう。
(深笛義也)