NHKは、出演するタレントについて「暴力団に関与しているかどうか」のガイドラインを作っている。「紅白に出た歌手で、暴力団に関与した人はいない」とNHKは発表したが、これは噴飯だ。多くの歌手がかつてディナーショーで、イベントで、暴力団仕切りで興行を打ったことがあるのは、中学生でもわかる。
今開かれている国会で、じつは「暴力団対策法」がまたもや改正されようとしている。改正の柱は①民間企業や企業の役員を狙って襲撃事件を起こした暴力団、②一般市民に危険が及びかねない対立抗争事件を起こした暴力団の2種類、特に危険と認められる暴力団の取り締まりの強化が狙いである。
①は、「特定危険指定暴力団」とされる。
「特定危険指定暴力団とは、要するに企業を守るための措置です。被害者に、なんらかの理由で、暴力団から金銭など要求があった場合に、公安委員会が指定するのです。また裁判所から令状をとって警察が暴力団事務所をすでに捜索していたりといった事実があれば指定できます。警察にとってやりやすくなるのは、組の縄張りを次に、被害にあった企業の周辺や指定された暴力団の縄張りをもとに、取り締まりを強化する『警戒区域』と定めることでき、組員が企業や個人に対して用心棒代や工事の下請けへの参入などを要求した場合、即逮捕できることです」(弁護士)
②は「特定抗争指定暴力団」とされる。
「特定抗争指定暴力団は、住民対策です。抗争がすでに行われている場合、警戒区域を設定します。警戒区域内で指定された暴力団の組員が、対立する側の暴力団員につきまとったり、関係先をうろついたりするといった抗争を誘発するような行為をしただけで逮捕できるようにします」(前出・弁護士)
しかしこれは、表向きの話だ。
「暴力団対策法の改正は、警察が予算をとりたいがため、また天下りで警官が暴力団対策で企業に雇用される機会を広げるためとみなさざるを得ない。たとえば不当な要求に対する罰則を、現在の懲役1年または100万円以下の罰金から懲役3年または500万円以下の罰金に引き上げるとしている。本当に暴力団を締め出すのであれば、あまりにも中途半端。罰金の額をもっと引き上げるか、懲役は5年ほどにすべきだ。改正の中身は『これくらいで手を打ちましょう』と、ヤクザと警官がツーカーで猿芝居を打って、退官後も飯を食えるような枠組みに終始している議論だ」(法曹ジャーナリスト)
以下のような見方も、根強い。
「ほどほどに暴力団が暴れたほうが、警官やOBにとって都合がいいのです。企業防衛という名目で顧問として天下りできますから」(識者)
「暴力団対策法の改正は,本音と建前があります。たとえば、ヤクザ雑誌などは、本当でしたらとっくに排除されてもいいのですが、警察の捜査資料になるので『活かしておこう』という話になっています」(ヤクザ雑誌ライター)
とりわけ記者は、暴力団と警察と同時につきあうのが常識だ。物事には表と裏がある。警察のように簡単に分析するなかれ。
「ヤクザ雑誌の誌面を見ていると、ある程度、警察に誘導されているような気がする」(暴力団関係者)
実際、マル暴の刑事に言わせると「そりゃあやくざ雑誌に載っている連中からパクりたくなるさ」(警察管)というのが人情だろう。
警察関係者が天下りのための「暴力団対策法改正」。警察寄りになり始めたアウトロー雑誌。はたして、本音と建前のせめぎ合いは、決着がつくのだろうか。
(渋谷三七十)