語りつくされた話題だが、「出版の未来」をあえて語る。出版社が次々と倒産しており、負の連鎖は止まらない。出版社の数は、「出版年鑑」によれば、08年度で3979社である(http://www.1book.co.jp/003727.html)。
「2000年に入ってから、毎年、約50社ずつ倒産しているので、今はおおよそ3800社前後ではないでしょうか」(出版関係者)

いっぽう、書店は1万5061店舗(2011年5月1日現在 http://www.1book.co.jp/001166.html)で、ここ10年で6000店舗ほどが消えている計算になる。この推移で行くと、向こう10年間で1万店を切るだろう。
「10年後は、書店が仮に9000店舗だとして、うまく新刊をばらまいたとしても3000部がやっとという計算となります。3000部で1500円の書籍を書き下ろしたとして、印税が10%のケースですと、著者は45万円しかもらえない。もはや執筆はボランティアになってしまいますね」(流通関係者)

出版科学研究所が、昨年の出版物の売上データをこのほど公開した。これによれば、2011年の書籍・雑誌の推定販売額が前年比3.8%減の1兆8042億円となっている。「書籍」は、同0.2%減の8198億円、「雑誌」は同6.6%減の9844億円。雑誌は1985年以降では初の1兆円割れとなった。
2011年は、書籍では『体脂肪計タニタの社員食堂』や『謎解きはディナーのあとで』など、年間を通じたロングヒットが数多く出たが雑誌は振るわず、08年の同4.5%減を上回る過去最大の落ち込みとなった。また、最盛期の95年には39億冊だった雑誌の販売部数は20億冊を割り込んだ。

「景気はもはや関係ない。読者そのものが減っているのが問題だ」(出版社営業員)
このところ、出版社が失敗したと言われるのは、「電子書籍」が予想外にシェアが伸び悩んでいることもある。
「なんでもかんでも電子書籍で読めるなら問題はないが、一部の作品しか読めないし、そもそも読むソフトが各社バラバラ。これだけガラパゴスになっていると、じゃあ紙でいいやという話になります」(書店員)
さらに最近のリサーチでは、「ダウンロードして回し読みをしている人が案外多いのがわかった」(リサーチ会社)

先日、流通会社の人と話す機会があったが、「返品率がいっこうに改善しないから、流通上、量を減らしていくしかない」と話をしていた。
要するに「売れそうな本しか流通に乗せたくない」ということである。冗談ではない。本来、出版文化とは、村上春樹の本でも、少数読者しかいないようなノンフィクションでも同等に書店に流通すべきものだ。「売れるものしか流通させない」のであれば、小さな出版社は通販でも始めるしかない。

繰り返すが、こうした状況を、作り手である出版社や書き手、編集者、エージェントなどは極めて深刻に考えなければならないのだが、突き詰めた議論をいっこうに聞かないのはなぜだろう。
「別に、話をしていも解決するわけではないからね」(出版社スタッフ)
もはやあきらめのムードだが、少なくとも書き手にできることは、おもしろいネタを探し続けることである。

(渋谷三七十)