北の湖親方の再登板が、1月30日の日本相撲協会の理事長選で決まった。「無気力相撲は八百長ではない」「八百長はないと思う」などと公言してはばからなかった、北の湖親方。08年には弟子の大麻不法所持が発覚して、理事長から理事に、昨年には弟子の八百長への関与が発覚して、理事から役員待遇へと降格していた。
そんな人物が理事長として返り咲き、角界に自浄能力がないことをさらけ出している今、八百長問題告発の原点である、『八百長~相撲協会一刀両断』(鹿砦社)を読むべきだろう。15年前の発刊直前、著者の元・大鳴門親方と、共に八百長を告発していた橋本成一郎氏が、同じ日、同じ病院、同じ病名で亡くなり、いわくつきとなった本だ。
角界で八百長は慣習化し、ゲーム感覚で行われており、八百長を通じて横綱になった力士も多く、しないほうが少数派であったことが、本書では実名入りで告発されている。
国民栄誉賞を受けた千代の富士も、八百長でなった横綱だと、はっきり書かれている。
どのように交渉し、金を受け渡すのかまで実に詳しい。自らも八百長に手を染めてきて、懺悔を込めての元・大鳴門親方の告発であるから、それも当然だ。
週刊誌で八百長問題が騒がれて、当時の理事長から撲滅のいい案はないか、と問われて、大鳴門親方は支度部屋にテレビカメラを設置すればいい、と提言した。すると別の親方から「本当にやるつもりか」と脅しの電話があったという。
本書では、八百長以外でも不思議な慣習が角界にあることが語られている。
幕内以下の若衆一人につき、土俵維持費や養成費として、1場所につき協会から20万円が親方に支払われる。若い者の顔が20万円に見えてきて、たいして強くもない者をスカウトしたり、出世しそうにもない力士も見切らずに置いておくという。
当時の、力士と暴力団との繋がりについても書かれている。主に、口の堅い女を手配してもらうことで、繋がりはできた。
世話になった暴力団の幹部が、刑務所に服役するようなことがあると、力士は慰問に行く。刑務所のほうも、特別扱いして、その幹部と直接面会することができた。
力士の女好きについても書かれている。力が有り余っているから、というだけでなく、部屋が女を教えるのだ。
中学生で入門した元・大鳴門親方も、入門してすぐに洲崎の遊郭に連れて行かれたという。今の力士も、兄弟子などにソープに連れて行かれ、女の味を覚える。
力士たちの乱交パーティや、女の奪い合いなど、力士の素の姿もうかがえて興味深い。
(FY)